ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

アメリカン・スナイパー

2018年05月03日 | ネタバレなし批評篇


本作を鑑賞した村上春樹が「反戦なのか好戦なのかよくわからない」と語ったそうだが、このイーストウッド実はそういう映画をずっと撮り続けている監督なのだ。

本作も、イラク戦争のヒーローが実は戦争中毒だったという視点にたって描かれており、それが本国アメリカで保守vsリベラルに分かれての大論争に発展した理由といえるだろう。

戦争に4度召集され、合計160人の敵を射殺した 伝説の狙撃手クリス・カイルを(本人に似せて)ムキムキのマッチョに大変身したブラッドリー・クーパーが熱演している。

劇中、あの『スターリングラード』を思わせるスナイパー同士の行き詰まる攻防シーンなども盛り込まれ、戦争アクションとして見ても観客を飽きさせない演出はさすがイーストウッド。

しかしイラク戦争終結後、仲間を守るという大義名分を失ったカイルを襲うのがPTSDという心の病。「できればまた戦場に戻りたい」と悩むカイルに、カウンセリングを受けた医師が「ここにも守るべき兵士がいますよ」といって同じ病に悩む退役軍人との交流を促すシーンが印象的だ。

第一次大戦中、あのチャーチルやヒトラーもこの主人公と同じ戦争中毒だったという説があり、彼らの症状が露見しなかったのは、歴史の流れでたまたま一国のトップという十分すぎる報酬を得たからにすぎないのではないか。

ワーカホリック・ジャパンも今や遠い昔の話、働き方改革で余暇がたっぷりできて他にやるべきことも見つからないリーマン諸君たちも気をつけた方がいい。ダブルワークで小銭を稼ぐのもよろしいが、禁断症状を自覚してからじゃ遅すぎますよ、念のため。

アメリカン・スナイパー
監督 クリント・イーストウッド(2014年)
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