ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

CURE キュア

2010年04月15日 | ネタバレ批評篇
黒沢清が撮った最近のホラーはお子様色が強く、くだらなくてまともに見ていられないのだが、本作に関していえばミステリー好きの方も堪能できるサイコ・サスペンスに仕上がっている。なんといっても記憶喪失の男・間宮邦彦を演じた荻原聖人が抜群の存在感を見せている。「あんただれ」「ここはどこ」「あんたの話を聞きたい」こんな相手をおちょくった会話で質問をはぐらかし、ライターやコップの水を使っていつのまにかに話相手を催眠術にかけてしまう様がなんとも憎たらしい。

読心術にも長けているらしい間宮は会話するだけで相手の深層心理を読みとり、催眠術をかけて殺人実行にまで導く凄腕のマインド・コントローラーという設定。と、ここまでと凡百のミステリーとなんら変らないのだが、間宮を追い詰めるタタキあげ系刑事高部(役所広司)が催眠術にかかっているのか否かをあいまいにぼかし、その謎をラストまでぎりぎり引っ張っているため、夜中から見はじめても逆にだんだんと目がさえてくる非催眠的面白さが魅力の1本となっている。

口には出さないものの、「こいつだけはぶッ殺す」と心の中でひそかにツイートしているにっくき人間の一人や二人が誰にでもいるはず?そんな日常生活の中に潜んでいる“魔”を催眠術という小道具であぶりだした黒沢演出が特に冴えている。衝撃のラストがまたいい。はじめ見た時は小さすぎてよくわからなかったのだが、ウェイトレスが手に持っている物体が何か判明した途たん、霧がはれるように謎が解明するオチの持っていき方が絶妙なのだ。

(以下ネタバレ注意!)ウェイトレスと会話したのは高部刑事だけであることからすると、少なくともこの時点で間宮の超催眠術を高部がマスターしていたことになる。ウェイトレスの標的は直前彼女に何か口うるさそうに注意したオバハンであろう。「あんたスゴイよ」高部のことをやたらと間宮がほめたたえたのも、「俺様の超催眠術にかかるどころか逆に盗みやがった」といった意味合いの賛辞かと思われる。牢屋のパイプを椅子で叩いて見張っていた刑事に催眠をかけ開錠させたのは間宮だろうが、悩みの種であった心神喪失症の奥さんを(おそらくピンクの制服を着たナースに催眠をかけて)殺させた真犯人は、(間宮ではなく)高部刑事だったと推測するのが妥当だろう。

役所広司演じる高部刑事は、スペシャルTV番組で世界最強の催眠術にかかっているふりをして「ぺろーん」をかましたくりいむしちゅうの上田のような男だったのである。

CURE
監督 黒沢 清(1997年)
〔オススメ度 


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