宮島氏の論文には定評がある。
2013年12月26日の安倍首相の靖国神社参拝に中共の批判が激しいが、
中共の持つ論理には、疑問が付きまとう。
中共が、国際秩序の擁護者だなんて、誰が信じるものか。
日本人は、中共が人権の侵害国であり、安重根の顕彰碑で、韓国とともに
テロリストの賞賛をする国と理解している。
日本の多大なODAで、経済の進展を見て、世界第二位になったと喜ぶが、
横暴な国家が強大になるにつけて、周辺には悲劇が拡散してゆく。
フリーライター宮島理のプチ論壇 since1997
中国は本当の戦後秩序を知 らない
2012/10/4
http://miyajima.ne.jp/index.php?UID=1349279927
「戦後秩序への重大な挑戦」と日本を非難する中国は、「戦後秩序」の断片しか理解していない。第二次世界大戦後の秩序は、敗戦国へのペナルティよりも、世 界大戦を繰り返さないという国際的な反省と合意の上に築かれてきた。共産国で途上国だった中国は、秩序形成に参加していないため、100年以上前で頭が止 まっている。
先月末の国連総会で、中国は「戦後の国際秩序や国連憲章への重大な挑戦だ」 と日本を非難した。もし、「戦後の国際秩序」なるものが、敗戦国へのペナルティだけで構成されているなら、中国の言い分は正しいだろう。しかし、そのような野蛮な国際秩序は19世紀の遺物だ。
共産国で途上国(しかも戦後すぐは建国前)だった中国は知らないだろうが、第二次世界大戦後の秩序というものは、「なぜ世界大戦が二度も起きてしまったの か」という国際的な反省から始まっている。ナチス・ドイツや大日本帝国という特定の国が突然勝手に戦争を行ったという幼稚な分析ではなく、国際的な自由と 協調が損なわれた時、世界は分断されるという現実を(西側陣営を中心とする)諸国は直視したのだ。
戦前に国際的な自由と協調が損なわれたのは、 世界恐慌が原因である。世界恐慌に際して、没落するイギリスは責任を果たせず、台頭するアメリカは責任を自覚せず、フランスなどの諸国も自己中心的な行動 を続けた結果、金融危機は深刻さを増した。さらに世界は保護貿易に走り、第二次世界大戦への道を歩んでいった。
だからこそ、戦後の世界では、敗 戦国であるドイツや日本に対するペナルティにこだわるのではなく、むしろ「いかなる国においても、第二のナチス・ドイツ、第二の大日本帝国を作らない」と いう発想が重視された(大日本帝国については統制経済に走る前と後とで性格が違うが、ここではそうした違いは置いておく)。その結果、1947年に GATT(関税および貿易に関する一般協定)が発足し、自由貿易体制が戦後秩序の根幹とされた。1955年には日本も加盟し、その後、GATTは WTO(世界貿易機関)へと発展していった。また、1946年にはIMF(国際通貨基金)が設立され、日本も1952年に加盟を果たしている。冷戦崩壊後 はさらに世界の統合が進んでいる。
こうした「本当の戦後秩序」の形成に加わってこなかった中国は、完全に100年以上前で思考が止まっている。自由貿易体制を乱して恥じない中国の姿勢は、日本以外の国々からも見透かされている。
「2年ほど前、ドイツの研究者らは、ダライラマの公式訪問後の2年間で中国による先進国の高付加価値製品の輸入量が最大12.5%減ったことを発見した。また欧米諸国が台湾に武器を販売した後、中国は大型の注文をキャンセルした。
最近ではこの狭量さがノルウェーという遠方でも発揮された。非政府組織のノーベル委員会が2010年のノーベル平和賞を人権活動家の劉暁波氏へ捧げて以 来、ノルウェー産のサーモンに対して検査項目が増えた。このため昨年のサーモンの輸入は60%減った。また今年、スカボロー礁の領有権を巡りフィリピンと 海上でのにらみ合いが続いた後、フィリピンバナナも同様の扱いを受けた。(略)
これまでのところ、これらの暗に示された経済制裁は大部分が象徴 的で短期間に終わっている。しかし中国のやり方は不信感を生んだ。中国は国際的な通商ルールを守る必要があるとは思っていないことを示唆するようなもの だったからだ。また、中国は通関作業を政治的理由で止めたとは認めないため、世界貿易機関(WTO)を通じて解決を図ることも困難であり、これはWTOの システムを損なっていることになる」
(10月2日付WSJ社説「中国が暗に行う貿易制裁の代償」 より)
さらに同社説では、「中国は、WTOに加盟したことでルールによる縛りを受けているのではなく、恩恵にただ乗りしている」と厳しい主張が続く。まったく同感だ。中国が今のまま変わらないなら、私は2001年の中国のWTO加盟は失敗だったと思う。
中国は戦後秩序を乱す存在として日本を非難するが、中国が考えている戦後秩序とは、単に敗戦国へのペナルティを継続しようとする、前時代的な報復行為に過 ぎない。むしろ、自由貿易体制にただ乗りする中国こそが、本当の戦後秩序を乱している。また、9日から東京で開催されるIMF総会について、中国国有大手 銀行の参加を取りやめさせようとしているのも、中国が本当の戦後秩序を軽視している証拠だ。
敗戦国を叩いて「戦勝国の思い出」にひたれば戦後秩序が守られるという中国の発想には、本当の秩序維持に責任を果たしてこなかった国の浅はかさがよくあらわれている。中国が問われているのは、本当の戦後秩序に対して責任をどう負うかという姿勢である。