2008年発刊、2009年度新書大賞の一冊、911以降のアメリカで民営化が進み、国内における自由化が進んで経済格差が拡大、貧困層が増加した結果、現在に至る経済的分断が生まれたことを描いたドキュメント。
2001年に誕生したブッシュ政権はその一期目には対テロ戦争に終始し、第二期目には新自由主義に基づき、経済・財政政策において大規模な減税と国防支出の拡大を実施。これは、1980年代のレーガン政策を踏襲するともいえる政策であった。その結果、中流家庭が貧困層と上流層に分断され、増加した貧困層ではフードスタンプに依存する家庭、肥満児童が増えた。二期目に起きたハリケーン・カトリーナへの対応では人災ともいわれるまずい施策により、災害として過去最大の犠牲者を出し、政府の不十分な災害対応と遅れが非難された。災害時には住民を災害から守るべき州兵が、イラクへ派兵されていることも大いに疑問視された。一因としてブッシュ政権が進めてきていた民営化推進が災害対応に即応できない事態を招いたと非難され、災害地区における貧困地域の暮らす人たちが経済難民として家も職も失う結果となった。
民営化は無保険の人々から医療サービスを遠ざける結果となり、民営化で高額化した医療費が中間層さえ破産に追い込まれるようになる。妊婦は日帰り出産、効率化に追いつめられる医師、公的医療支援は破綻に追い込まれて行った。「落ちこぼれゼロ法」と呼ばれる政策は経済的に困窮する若者を徴兵に代わって戦地に送り込む仕組みを生み出した。高校には経済的に問題を抱える若者をターゲットとする勧誘者が訪れ、経済的インセンティブを示して兵隊になるリクルーティングを繰り返すようになった。学資ローンが民営化され、カード地獄に陥る学生をターゲットにした「経済的徴兵」とも思える状況を生み出す。しかし、帰還後はPTSDに悩み、ホームレスになる若者を生んだ。民営化を進めようとする日本には他人事とは思えない。本書内容は以上。
テロとの戦い、新自由主義政策が生み出した矛盾を徹底的に取材に基づいて描き出したのが本書。その後の続編に続く。