三体世界から発された11次元の陽子「智子(シフォン)」の存在で、三体世界から出発した艦隊が地球に到達するまでの400年間の高エネルギー物理学の素粒子実験を封じられ、さらに智子は全人類のコミュニケーションを監視しているという状況から第二部は始まっている。全人類からたった4人選ばれた面壁者のうち、一人目の「蚊群戦闘機」による計画、二人目の「水星における核融合爆発による太陽系破壊による脅し」計画は破壁者により葬り去られ、3人目のハインズが人類の記憶に刻んだ勝利に向けた信念は、行き過ぎた楽観主義として未来社会に受け継がれていく。のこるは羅輯による計画であるが、彼が放った「呪いのメッセージ」は50年後にしかその結果がわからない。物語は登場人物が冬眠に入り、それが明ける200年後、現代よりも遥かに科学技術が発達した世界へと飛ぶことになる。
三体世界から飛び立った艦隊から先んじて放たれていた偵察戦闘機はもう目の前に迫っていたが、地球上ではその時代の最先端技術による恒星間移動も可能な1000隻以上の宇宙船団により、容易に対応できるものとして楽観ムードが高まっていた。太陽系に一機だけ現れた偵察機は水滴の形をした鏡面で覆われた物体で、対応するために向かった地球艦隊の1000隻を壊滅させ、残る5隻も同士討ちで宇宙の藻屑となる。宇宙を支配していたのは「黒暗森林理論」、宇宙の文明はあまりにお互いが違いすぎていて相互理解は不能とお互いに疑心暗鬼になり、通常は距離が離れすぎているため、互いの存在を知り得ないが、もし自分の存在を明かしてしまえば、他の知性文明により滅ぼされてしまう、というもの。文明は、暗い森林で狩人は息をこらして獲物を狙うような存在だということ。地球上の楽観ムードは吹き飛んで、逆に世の中を悲観する終末的な雰囲気が立ち込めてしまう。
羅輯が放った呪いのメッセージとは、黒暗森林理論を実証するものだったため、三体世界が最も恐れた面壁者が羅輯だった。羅輯は智子を通じて三体世界と交渉するための道具立てを考えていたが、それは地球も三体世界もその存在と位置を全宇宙へとメッセージとして発信してしまうこと。それを封じることがたった一機の偵察機の目的だった。水滴型偵察機はラグランジュポイントに停止、太陽に向けて強力な電磁波を送ることで、地球からのメッセージ発信を妨害し始めた。羅輯は、太陽に代わるメッセージ発信の仕組みを考え出す。それが、最終的な三体世界との交渉材料となる。地球を救うことができるのは、やはり羅輯しかいなかった。
2001年宇宙の旅や、地球幼年期の終わりなどのSF小説をオマージュするような内容でもあり、黒暗森林理論という、アシモフやクラークなどという先駆者たちのアイデアを凌ぐような壮大なスケールで描かれたストーリーは圧巻。これで物語は一つの区切りとも思える終末だが、第3部は「死神永生」、まだまだお楽しみはこれから。