意思による楽観のための読書日記

顔に降りかかる雨 桐野夏生 ***

主人公はヤクザ相手の探偵だった村野善蔵の娘ミロ、結婚歴がある32歳である。夫はインドネシアで自殺、夫の関係ではミロに心の傷がある。広告代理店に勤めてはいたが今は貯金を食いつぶして暮らしている。唯一の親友とも言える耀子が愛人成瀬の前から消えてなくなった、と成瀬からの突然の電話がある。その前の夜中に電話があり、放っておいたのだが、それは耀子からだったかもしれないとミロは思う。成瀬は外車ディーラーで妻子があると聞いていたが、今は耀子と付き合っている話は知っていた。成瀬はミロの住む新宿二丁目のマンションにまで訪ねてきた、それもチンピラヤクザの君島を連れて。

成瀬が言うには、企業舎弟の上杉から融通してもらった1億円を持って姿をくらました、ミロのところで匿っているのではないか、いやひょっとしたらミロも共犯なのではないか、などと疑っている様子なのである。ミロは耀子がそんなことをするはずがないと思う。耀子はミロとは正反対の性格ではあるが、人のお金に手を出すような人間ではないと信じていた。

成瀬と君島に上杉の前に連れていかれたミロは1週間で耀子と1億円を探すことを約束させられる。当然、上杉は組織を上げて成田や羽田、JRなどを調べるが、それ以外の筋を探せ、というのである。上杉はミロ、成瀬、耀子とすべてを疑っている。

ミロは殆ど無い手がかりから耀子の母親、耀子の付き合っていた占い師、死体マニアの川添、ダンサーの龍太、耀子の事務所で電話番を勤めていたゆかり、プロデューサーの藤村などをたどっていく。そして、事務員のゆかりと藤村が結託して1億円を手に入れていたことを突き止める。藤村はチンピラ君島に追い詰められて川に落ちて死んでしまう。その手腕は上杉も知っていたミロの父親である探偵村善を思いこさせる。ミロの父親は娘が窮地に陥っていることを知り上京、ミロにアドバイスを与える。「これで解決したと思うな」。

そしてミロは真実を突き止める。耀子を殺したのは成瀬だった。カナダへの出国を企んでいた成瀬は成田で警察に拘束される。

ドイツのネオナチの問題、両性具有、死体愛好者、などが登場する女性作者による女性が主人公の推理小説である。作者は村野ミロのシリーズをこの後書いている。「天使に見捨てられた夜」村善が主人公の「水の眠り 灰の夢」。
顔に降りかかる雨 (講談社文庫)
天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)
水の眠り 灰の夢 (文春文庫)
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↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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