ハゲタカの間山さんの地熱発電会社のターンアラウンドを描いたマグマ、ハゲタカよりずっと読後感が良い。これは主人公の、外資系ファンドのゴールドバーグ・キャピタルに勤める野上妙子の人間力だと思う。野上はGC東京支店長の待田から、地熱発電を研究運営する日本地熱開発(地開)の再建を任される。野上は地開の安藤社長や研究責任者の御室から地熱発電の潜在力と将来性を説明され、会社再建に努力する。野上は上司の待田、元上司の大北など、GCの先輩社員に尊敬を感じながらも、会社の姿勢や先輩の拝金主義に疑問も持つ。きわめて正常な神経の持ち主なのだが、GCの社員である以上、会社を再建させて転売する、というターンアラウンドビジネスマンであることには変わりはなく、時に非情な台詞も口に出す。日本地熱開発の安藤元社長は政治家である安藤大志郎の孫であり、地熱発電が大きく成長しなかった理由について次のように解説する。「地熱停滞の最大の理由は、電力会社が原発という神の火を手に入れ、後戻りできなくなったことである」そして、政府環境庁が電力会社と組んで地熱発電を阻み、さらに国立公園保護や温泉地保護を切り札にしていることを説明している。「日本の場合、二つの大きな障害が、大型地熱発電所建設を阻んでいる。一つは、有力な地熱エリアが国立公園内にあること、もう一つは温泉街との兼ね合いである」 これは本当なのだろうか。入念たる取材と関係者ヒアリングの後の記述であろうと推察する。環境問題に注目が集まり、ポスト京都議定書が間近に迫る、今後調べてみたいテーマである。 マグマ (朝日文庫) レッドゾーン(上) レッドゾーン(下) 読書日記 ブログランキングへ