意思による楽観のための読書日記

疑う力の習慣術 和田秀樹 **

問題解決力よりも大切なこと、それは何が問題なのか、真実と言われるこのことは本当なのか、などという問題発見能力だ、という主張である。これは「失敗学のすすめ」の畑村洋太郎のおしえだそうだ。榊原英資はルービンと話していて「世の中に確かなものはない」ということを学んだという。確立された理論や学説ほど疑ってみるべきだというのである。

今われわれ日本人が体験しているのは歴史上初めて体験する人口減少である。自然災害や戦争、凶作などで何回かは体験しているが持続的継続的な人口減少傾向というのは初めてなのである。今まで積み重ねてきた学問、研究などはすべて人口増加、経済発展、科学技術進歩、幸福増大など右肩上がりの成長をベースになされてきた。しかし、そのベースが変わってしまったのだ。必要なのは知識、というより知識を疑う力なのである、白か黒かではなくグレーを見つける必要がある、という主張。

南北対立、宗教対立、EUとアメリカの対立、テロとのの戦いなどでは今日の味方は明日の敵、という可能性もある。イスラム世界とアメリカの対立が急進するとヨーロッパや中国がアメリカ抜きでのビジネスをイスラム社会に持ち込む、そうするとアメリカに肩入れしすぎていた国は資源ビジネスがやりにくくなる可能性もある。北朝鮮問題でも、北朝鮮へは経済圧力をかけ続けているが、いつの日にかアメリカが易い労働力に目をつけて北朝鮮と国交回復する可能性だってゼロではない。北朝鮮の金正日は悪いヤツだと思い込んでいる日本人は多いが、拉致指示をしたのはその前の金日成時代である。北朝鮮と今すぐ仲直りはしなくても、情勢は変化するということを頭に入れる必要がある、と指摘する。

メディアの責任、スケープゴートを作りたがる問題の単純化も問題だという。権威にすがってしまう文系人間より仮説を実験で検証してみようという理系人間の時代だと。可能性を試すこと、素人や消費者の立場にたって問題点を見つけること、ニッチ分野を見つけること、時代に逆らった方がいい場合も多いこと、などを指摘する。

常識にとらわれるのは、すでに頭の中に出来上がっている「スキーマ」にとらわれるからだという。「スキーマ」とは人間が持つ認知能力であり、コンピュータには教えにくい物。しかし時にそのスキーマが新しい問題発見を邪魔する。成功体験が多い人ほどスキーマがよく出来上がっていて、そのスキーマと自分への自尊感情が疑う力を曇らせると。集団心理、権威、怒り、自己愛の満足などもジャマになることがあると

自分の頭で独力で考え出した疑問は重要、その解を仮説を考えて検証してみること、これが進歩につながるというおはなし。
<疑う力>の習慣術 (PHP新書)

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