印象的なフレーズ。「理念先行型が成功する」。経営者やリーダーには2つのタイプが有り、一つは「着手可能な最善手をスピード感をもって実践していく」、もうひとつは「まず理念を定めそれに向かって努力していく」。世の中では理念先行型は嫌われやすく、軋轢も生まれるが成功者の話を聞けば理念先行型の方が多いという。これは、目的達成のためには手段が重要か目標達成の早さか、と言い換えることも可能なのではないか。中坊は道理と透明性が重要だと言う。やり方に道理があり透明性があれば社員や国民は納得するという。逆に目標は達成されても、その手段に道理が無かったり不透明だったりすれば支持されない。通すべき筋は通さなければならないという中坊公平の信念であろう。今の企業経営者や政治家に当てはめるとどうだろうか。
「現場を知らないリーダーが組織を危うくする」というのもあった。稟議書だけ見てハンコを押している経営者ではダメだということ。こんな判断をすれば会社の存続が危ない、という判断があるが、本当に会社の存続を考えたのか、自己の保身を考えたのかが不明確なケースも有る。組織のリーダーが何らかの判断をする際に、組織の中で「上げ底」されている立場で考えるか、人間として判断するかの違いがある、というのも中坊の言葉である。どのような立場の人間でも正しい判断というのは人間としての判断であり、上げ底の判断は立場を守るものであったり、立場を支える構造や組織を守る判断となりがちだと言う。
裁判官の幹部に何が重要だと思いますか、と聞いた時の答えが真実を追求することだという回答が多かった。中坊は「納得してもらえるかどうかだ」と断言する。裁判所の判断は絶対だとして真実を告げることが判決だとすれば、それは国民の皆さんに支持されるだろうかと。住専の問題でも税金を使って損失補てんをする、という政治判断は果たして正しかったのか、その判断基準は国民の皆さんが納得してくれたかどうか、8割以上が不納得であったはず。
日本国憲法でもっとも重要な考え方はなにか、という問に佐高信は99条の「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」という条項だと指摘、つまりここに挙げられている人たちが最も憲法を破りやすい権力やチャンスが有るからであり、憲法とは権力や権限が過剰に行使されないようにするための取り決めだという考え方。国民は国民主権の使い方を、この憲法からもっと学ぶ必要があるという。
15年以上も前の対談だが、今にも通じるキーワードをたくさん発見できる。
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