Kindle版を読んだ。タブレットはKindleHD8.9インチなので、普通の本なら十分読めるが、このような大型本になると字が小さくなって拡大しながらでないと読みにくい。それでも大きな絵がマイページ必ずあって、最初は「こんな絵はいらない」と思いながら読み進めていると、妙に記憶に残る絵があることに気づいた。
それは例えば古事記の世界観というマンガの見開きページ。地上に「常世の国」があって天上に「黄泉の国」、国生みを行う伊邪那岐、伊邪那美は天上と地上、地下を行ったり来たりする。地下には「根の堅州国」「夜の食国」がある。日向の国の向こうに「綿津見の宮」があり、「高天原」と「葦原中国」があり海原が出雲の国との間に横たわる。伊邪那岐、伊邪那美が地上で禊を行うと天照大御神が生まれ高天原の統治を行い、素盞嗚命は海原の統治を行う。素盞嗚命は大暴れしたため葦原中国へ追放され出雲に至る。そこで八岐の大蛇を退治し宮殿を築いて子孫を残していく。素盞嗚命の子孫の一人が大国主命、八十神から迫害を受けて根の堅州国に逃亡するとそこには先祖の素盞嗚命がいる。素盞嗚命から試練を与えられてそれらを乗り越えると葦原中国へ戻り国は繁栄するが、天照大御神の要請で国譲りを行う。この結果、天照大御神の子孫である瓊々杵命が葦原中国へ天下り、その子孫が神武天皇になる。ここまでの内容が見開き1ページにマンガで描かれていて、一度中身を読むと記憶は絵で残る。
古事記と日本書紀には様々な解釈があるが、これらの国と神様の関係を漫画で見ると、約7000年前とされる鬼界カルデラ崩壊による九州地方の縄文文化絶滅や3800年前とされる出雲三瓶山大噴火が、神話に取り込まれたのではないかとする推察も頷ける。日本列島には多くの山、火山があって火砕流があれば八岐の大蛇になるし、噴煙で太陽が遮られ、太陽が戻ってきてほしいと祈祷師が祈ったことは想像できる。また、その後の弥生時代に至る間に朝鮮半島から人々が稲作と製鉄技術、鉄製農具とともに渡来してきたことを思い浮かべる事ができる。古事記、日本書紀は天武、持統時代の律令制確立時に当時の大和政権の正当性を記録するために書かれたことはあったにしても、古代の逸話に幾つかの言い伝えや教訓的ストーリーが含まれていたはず。こうしたストーリーの全体観を理解するためにビジュアル本は良い読本だと感じる。Kindle版はなんと99円、これは「買い」である。