意思による楽観のための読書日記

むかしのはなし 三浦しをん **

ちょっと期待して読みすぎた。日本民話をモチーフにした短編連作。昔話は生き残るだけの価値と重みがあったはずだが、この短編連作にそれがあるかと言われれば。

「ラブレス」は27歳で祖父も父も亡くなったという男性短命家系の27歳のホストの話。モチーフはかぐや姫。この男の5人の客はいずれも金をもってホストの気をなんとか引いてみたいという女。中小企業社長婦人の60歳主婦は盗品の仏像をホストにプレゼント、売ったら足がついて警察に調べられ、貰い物だと証明するのに苦労した。和服姿の倉持はクラブのママ、ベンツのガルウイングをプレゼントするが、男はすぐさま中古車として売り飛ばしてしまう。阿部はサラリーマンの妻、アルマーニのスーツをプレゼントするが、男に目の前で若い子にもらい下げられる。一流のホストは既製服など着ないと。女子大生の伴は会社役員の父の金で遊ぶが父にバレたとかで300万円の現金を渡す。ホストの男はいずれの女にも営業スマイルを欠かさないがバカにしている。そして5人目の女が32歳の神保、美人だが正体が知れない。プレゼントは子供だと、馬鹿言うじゃない、と男は相手にしない。ところが、神保はヤクザの城之崎組の親分、田山の女だった。ホストはヤクザに追われて逃げ回っているさなかに付き合っている女にメールを打っている。もう助からないと。そう、連作短編の最後で、その結末が明かされる。ホストは指を一本ずつおられて海の藻屑に、神保という女は樹海に捨てられたが、その時生まれた赤ん坊は成長して、神保百助という高校生となっている。

「ロケットの思い出」は、買っていたロケットという名前の犬から、モチーフは花咲か爺。ロケットの散歩で家の観察をするようになり、その後空き巣を職業とする。そして捕まっている彼は、尋問に対してロケットとの散歩と高校生の時の友人、空き巣の思い出を語る。そして捕まるに至ったいきさつを語る。

「ディスタンス」は、小学生の時から同居するようになった叔父の鉄八に恋する女子高生の話。モチーフは天女の羽衣。小学生の時から大学院生だった叔父の鉄八と同居し、一緒にお風呂も入り、なんでも教えてくれた鉄八に少女は恋をした。14歳も年は離れているが、小学生から中学校になった時に14歳で初めて鉄八とセックスをした。両親にはバレていなかったが、祖父の葬式の時にバレて鉄八は別居させられた。しかし女子高生は今でも鉄八に会いに行く。しかし鉄八は最近女子高生に関心が薄れた気がする。

「入江は緑」、モチーフは浦島太郎。京都にある舟屋の街、伊根を想像させる田舎の漁村が自分の生まれた町だ。美しい街、その街に小さい時から一緒の育った先輩の修が彼女を連れて帰ってきている。ニュースで3ヶ月後に地球に隕石が衝突するので人類は滅びると言っている。政府は全世界で1000万人だけが木星など地球外に逃げられるので、学者や主要な人物だけが選ばれるとアナウンスしている。修の彼女は生物学者だそうで、その脱出者リストに載っていて、修も連れて行きたいと言っている。自分はこの美しい街で死んでもいいと自分は思う。

最後の短編が「懐かしき川べりの町の物語せよ」、モチーフは桃太郎。ここに冒頭の短編で死んだという神保の息子、百助がモモちゃんとして登場する。命知らずの破天荒な高校生で、喧嘩なら誰にも負けないし、生徒も先生たちも一目置いている。両親はおらず、祖父に育てられたらしいが、今は川べりのマンションで一人で住んでいる。ぼくは、モモちゃんに近づきたいと思うが、近寄りがたい存在だった。モモちゃんは学年一の美少女、宇田さんと付き合いだした。宇田さんとは、冒頭のやくざの親分の田山の実の娘だった。そんな二人が結ばれる。そのことを知っているのはモモちゃん、そして田山は、地球脱出の貴重な切符を僕に委ねる。モモちゃんに渡すか、嫌ならお前にやると。僕は、モモちゃんに渡すチャンスを失ったが、モモちゃんは知っていた。それでも、モモちゃんは宇田さんと一緒に地球にいたいと。

連作短編のはずだが、モチーフとのつながりが分かりにくいし、連作であるつながりもかすかなもの。想定が飛んでいて、読んでいても楽しくない。しをんファンなら、こういう作品もあると思って読んでみるといい。


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コメント一覧

名無し
分からないから面白くないなんて、随分乱暴ですね。漫画になったのもあるので、難しくて理解できないならそちらを見てみては?
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