耕一はふとしたきっかけで、コカインの大口取引があるらしいという情報をつかんだ。DDのために大金を獲ようと、耕一はかつて自分を捨てた仲間、柿沢に接触、麻薬取引に絡む1億6000万の案件を持ち込んだ。耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出会い、金のためなら何でもする女、精神のバランスを欠きおまけにアタマも悪いと知りながらも、DDに惹かれ、引き回されている。そのDDと一緒に彼女の故郷コロンビアへ帰るための金を手にしたいのだという。リーダーの柿沢は耕一の過去と心の闇に不安を抱きつつも、仲間に入れる事を決めて作戦を決行する。
主人公の耕一、付き合っているコロンビア人DDとのセックスシーンは濃厚というか、ちょっと行き過ぎではないかと思う。しかし彼女たちの出稼ぎルートや日本での生活状況の悲惨さ、こうした日本の現状を冷酷に描写、このあたりは実際、的を射ていて、僕が15年前にロンドンから成田へのフライトで隣に座ったコロンビア人女性を思い出させる。コロンビアのイバゲというところの出身、英語も日本語もだめ、片言の英語で日本は「Golden Country」だといっていた。友達を頼って東京にきた、これから働いてお金を貯めるのだといっていた。パスポートによるとそのとき28歳、DDまではいかなくても、彼女を取り巻く状況は近いものがあるのではないだろうか。
結局、DDとの将来のためと考えて一発逆転をねらった最後ともいえる仕事で、DDが原因となって致命傷を負う。DDが大切にしている故郷の家族のために、自分命と引き替えに得ることになる報酬でDDへの想いを伝え、猛スピードで国会議事堂の正門トに突っ込んでいく耕一。「シェガ・ジ・サウダージ」 というのがラスト、二度と会えぬ人や土地への思慕。DDのキャラクターや耕一のブラジルでの過去、日本への移民のおかれた状況など印象に残る作品。
サウダージ (文春文庫)
ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)
ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)
ヒートアイランド (文春文庫)
ギャングスター・レッスン (徳間文庫)
午前三時のルースター (文春文庫)
ゆりかごで眠れ〈上〉 (中公文庫)
ゆりかごで眠れ〈下〉 (中公文庫)
ラティーノ・ラティーノ!―南米取材放浪記 (幻冬舎文庫)
クレイジーヘヴン (幻冬舎文庫)
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