意思による楽観のための読書日記

月に繭 地には果実 福井晴敏 ***

繰り返された戦乱によって環境が悪化した地球は2000年もの時を経て緩やかに再生しようとしていた。文明の程度から考えると農業化社会から工業化がはじまったあたり。地球環境を調べるために、体内にセンサーを埋め込まれて「献体」として地球におろされたロランという少年が主人公。他の仲間二人と地球に降りたロランは、鉱山主の家庭に拾われ暮らしていた。月面都市で地球再生を待ち続けた人類ムーンレ イス、月の人たちを統率するのが100年に一度冷凍睡眠から覚醒する絶世の美貌を持つお姫様。ムーンレイスは悲願の地球帰還作戦を実行に移す。しかし、かつての記憶を失っている地球人はムーンレィスの存在に激しく動揺、両者はなし崩し的に戦端を開いてしまう。ロランはその戦乱の中で、村の守り神として崇められていた石 像から出現した巨大ロボット「ターンA」と遭遇する。上中下巻からなる大作である。物語の中では核爆弾、毒ガスや細菌兵器まで使い大地を焼き尽くす。人々は他集団への恐怖から家を焼き討ちし始める。人々は、感情の赴くまま、激しく他者を攻撃する。

「(ターンA)」は、数学では「全ての~」を意味するが、この物語では「初めからやり直す」という意味もある。この「(ターンA)」の物語は一度行き付いた文明を持ちながらそれによって滅びた人々が、もう一度初めからやり直す物語である。リングー指輪物語ーを思い描いていもいるのか。なぜ「A」が逆さまの「(ターンA)」となっているのか。それは初めに戻るとしても、かつての「A」とは違う「A」であってほしいという願いが込められている。最後に月か地球へ降り立った少年ロランは過酷な旅の果てに再び同じ地へと辿りつく。ロランはそこで最初の時と同じように河に金魚のメリーを浮かべてみる。同じ場所での同じシチュエーション、はじめと最後が繋がる。

アニメのガンダムを見てないと分からないってことはない。福井ファンはもちろん、SF好き、ガンダムファンで「違うだろこれは」と思う人にだって、福井ノベルだと思えば良い、幅広い層にオススメできると思います。
月に繭 地には果実〈上〉 (幻冬舎文庫)
月に繭 地には果実〈中〉 (幻冬舎文庫)
月に繭 地には果実〈下〉 (幻冬舎文庫)

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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