広島県の地球温暖化防止の計画について、県民の意見が募集されています!
「気候非常事態」や「ゼロカーボンシティ」を宣言する自治体が増える中(尾道市さんも!)、広島県も「ネットゼロ(実質排出ゼロ)」を盛り込む予定と聞き、野心的とまではいかないまでも意欲のある計画になるのかな!と期待していたら、がっかりな内容で、目を通しながら何度もため息をついてしまいました。
国の動向を窺いながら・・・産業界の顔色を窺いながら・・・という事情もあるでしょうが、既存の枠組みに留まる「ロックインシナリオ」としか言いようがありません。広島県民として、このまま策定されることは避けたいです。
広島県のパブリックコメント(県民意見募集)制度のページ
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/19/1177324369710.html
次世代の暮らしも、まちも、自然環境も守れるよう、広島県にたくさんの声を届けましょう!
締切は2月18日です!
* * *
いちばんの問題は、2030年の目標が22%と低すぎること
IPCC「1.5℃特別報告書」では、【2030年までに2010年比約45%削減、2050年前後に正味ゼロ】とすることが求められています!
▼参照
環境省「IPCC1.5℃特別報告書概要」49ページ http://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/ar6_sr1.5_overview_presentation.pdf
気候変動の影響はすでに深刻になっています。上記「報告書概要」68ページに、2030年の排出が少ないほど将来の課題が少なくなることが書かれています。かつてないスピードでのシステム変革が求められています。
(画像は広島県素案の38ページ)
※目標とする削減率の基準年が、広島県とIPCCで異なるので、比較表を添付します。
同じく大きな問題は、石炭火力発電への言及がなく、エネルギー構成の転換が目指されていないこと
電気事業者は自家消費分のみが産業部門の排出量としてカウントされます。
(画像は広島県素案の71ページ)
家庭部門の排出量は、使用するエネルギーの原単位の影響を受けます。各家庭で省エネを進めることも、もちろん必要です。しかし、たとえ高効率の石炭火力発電(IGCC、IGFCなど)でも0.6kg-CO2/kWhと高い原単位の石炭火力発電から、原単位の低い再生可能エネルギーや、熱→熱利用に変えることにより、家庭部門の排出量を下げることが必要です。2℃シナリオで求められる電力原単位は0.1kg-CO2/kWhです。
(画像は広島県素案の39ページ)
▼参考情報
「2020年改訂版 石炭火力2030フェーズアウトの道筋」発表(2020年11月17日)
https://www.kikonet.org/press-release/2020-11-17/coal-phase-out-2030
「30年後に目指す姿」から、CO2削減への強い意思が感じられないこと
まず、素案33ページの目指す姿を読んでみてください。
(画像は広島県素案の33ページ)
どんな印象を持たれたでしょうか?
1.「積極的な温暖化対策が成長につながる」
2.「従来の省エネ、再エネの促進」
3.「二酸化炭素を資源として捉えカーボンサイクルする」
ことが書かれています。
これは正しい。
正しいのだけれども、深読みすると、2030年までこれまで通りの「自主的な」省エネを続け、2030年以降に期待される新たなカーボンリサイクル技術で排出量を相殺する意図が読み取れます。
「これまで通りの自主的な省エネ」は、素案前段で書かれている「これまでの取り組み」や、後段の「施策の展開」から読み取れます。「これまでの取り組み」では、「○○をやりました」というアウトプットばかりで、「○○をやった結果●●になった」というアウトカムが書かれていないのも残念です。
1.「積極的な温暖化対策が成長につながる」は、背景をきちんと理解する必要があります。
令和2年9月の中央環境審議会小委員会の配布資料で、グローバルリスク報告書が引用されていました。
画像は中央環境審議会の配布資料(https://www.env.go.jp/press/108307.html)より、【参考資料1環境省における気候変動対策の取組】(https://www.env.go.jp/press/ref01-1.pdf)の5ページになります。詳細を確認したい方は、リンク先からご覧ください。
今まさに、私たちの暮らしや経済を支えるSDGsのいちばん下の地球環境が危うい状況にあるのです。グレタや世界中で気候正義を求める若い人達の言葉を借りるなら、足元から火が燃え広がりつつあるというところでしょうか。
足元から燃え広がる火に、やっと気が付いた投資家たちが「座礁資産」と言われる炭素排出事業から投資を引きあげ始め、それに対応を始めた企業によるサプライチェーンの選別も始まりつつある。こういう背景を察知して対応していくことこそが「企業の成長」につながることを理解しておかなくては、正しい政策選択ができないでしょう。
広島県の企業が、世界から選ばれる企業になれるよう、広島県として意欲的な策を進めていただきたいものです!!!
*
2.「従来の省エネ、再エネの促進」は、強化するとか、促進するとか、書かれているものの、前述したように「○○をやりました」、「△△ができていないのが課題です」という羅列ばかりで、取り組んだことと取り組んだ結果との因果関係が明示されておらず、「強化」「促進」という都合のいい言葉が並ぶばかりで、本当にできるのか懐疑的に見ています。
*
3.「二酸化炭素を資源として捉えカーボンリサイクルする」は、必要だと思うし開発競争に入っているけれども、まだ確定的に見込むことは難しく、これをアテにして削減策をおろそかにするわけにはいきません。
* * *
今、オススメの本
* * *
流れにうまく入れられなかったんですが、他の自治体さんで取り組んでおられるエネルギーを活用した地域経済循環を進めていただきたい!!!最新データが2015年と古いですが、広島県のGRP(地域総生産)の8.3%を占める9,800億円のエネルギーコストが県外・海外へ流出しています。
「気候非常事態」や「ゼロカーボンシティ」を宣言する自治体が増える中(尾道市さんも!)、広島県も「ネットゼロ(実質排出ゼロ)」を盛り込む予定と聞き、野心的とまではいかないまでも意欲のある計画になるのかな!と期待していたら、がっかりな内容で、目を通しながら何度もため息をついてしまいました。
国の動向を窺いながら・・・産業界の顔色を窺いながら・・・という事情もあるでしょうが、既存の枠組みに留まる「ロックインシナリオ」としか言いようがありません。広島県民として、このまま策定されることは避けたいです。
広島県のパブリックコメント(県民意見募集)制度のページ
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/19/1177324369710.html
次世代の暮らしも、まちも、自然環境も守れるよう、広島県にたくさんの声を届けましょう!
締切は2月18日です!
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いちばんの問題は、2030年の目標が22%と低すぎること
IPCC「1.5℃特別報告書」では、【2030年までに2010年比約45%削減、2050年前後に正味ゼロ】とすることが求められています!
▼参照
環境省「IPCC1.5℃特別報告書概要」49ページ http://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/ar6_sr1.5_overview_presentation.pdf
気候変動の影響はすでに深刻になっています。上記「報告書概要」68ページに、2030年の排出が少ないほど将来の課題が少なくなることが書かれています。かつてないスピードでのシステム変革が求められています。
(画像は広島県素案の38ページ)
※目標とする削減率の基準年が、広島県とIPCCで異なるので、比較表を添付します。
同じく大きな問題は、石炭火力発電への言及がなく、エネルギー構成の転換が目指されていないこと
電気事業者は自家消費分のみが産業部門の排出量としてカウントされます。
(画像は広島県素案の71ページ)
家庭部門の排出量は、使用するエネルギーの原単位の影響を受けます。各家庭で省エネを進めることも、もちろん必要です。しかし、たとえ高効率の石炭火力発電(IGCC、IGFCなど)でも0.6kg-CO2/kWhと高い原単位の石炭火力発電から、原単位の低い再生可能エネルギーや、熱→熱利用に変えることにより、家庭部門の排出量を下げることが必要です。2℃シナリオで求められる電力原単位は0.1kg-CO2/kWhです。
(画像は広島県素案の39ページ)
▼参考情報
「2020年改訂版 石炭火力2030フェーズアウトの道筋」発表(2020年11月17日)
https://www.kikonet.org/press-release/2020-11-17/coal-phase-out-2030
「30年後に目指す姿」から、CO2削減への強い意思が感じられないこと
まず、素案33ページの目指す姿を読んでみてください。
(画像は広島県素案の33ページ)
どんな印象を持たれたでしょうか?
1.「積極的な温暖化対策が成長につながる」
2.「従来の省エネ、再エネの促進」
3.「二酸化炭素を資源として捉えカーボンサイクルする」
ことが書かれています。
これは正しい。
正しいのだけれども、深読みすると、2030年までこれまで通りの「自主的な」省エネを続け、2030年以降に期待される新たなカーボンリサイクル技術で排出量を相殺する意図が読み取れます。
「これまで通りの自主的な省エネ」は、素案前段で書かれている「これまでの取り組み」や、後段の「施策の展開」から読み取れます。「これまでの取り組み」では、「○○をやりました」というアウトプットばかりで、「○○をやった結果●●になった」というアウトカムが書かれていないのも残念です。
1.「積極的な温暖化対策が成長につながる」は、背景をきちんと理解する必要があります。
令和2年9月の中央環境審議会小委員会の配布資料で、グローバルリスク報告書が引用されていました。
画像は中央環境審議会の配布資料(https://www.env.go.jp/press/108307.html)より、【参考資料1環境省における気候変動対策の取組】(https://www.env.go.jp/press/ref01-1.pdf)の5ページになります。詳細を確認したい方は、リンク先からご覧ください。
今まさに、私たちの暮らしや経済を支えるSDGsのいちばん下の地球環境が危うい状況にあるのです。グレタや世界中で気候正義を求める若い人達の言葉を借りるなら、足元から火が燃え広がりつつあるというところでしょうか。
足元から燃え広がる火に、やっと気が付いた投資家たちが「座礁資産」と言われる炭素排出事業から投資を引きあげ始め、それに対応を始めた企業によるサプライチェーンの選別も始まりつつある。こういう背景を察知して対応していくことこそが「企業の成長」につながることを理解しておかなくては、正しい政策選択ができないでしょう。
広島県の企業が、世界から選ばれる企業になれるよう、広島県として意欲的な策を進めていただきたいものです!!!
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2.「従来の省エネ、再エネの促進」は、強化するとか、促進するとか、書かれているものの、前述したように「○○をやりました」、「△△ができていないのが課題です」という羅列ばかりで、取り組んだことと取り組んだ結果との因果関係が明示されておらず、「強化」「促進」という都合のいい言葉が並ぶばかりで、本当にできるのか懐疑的に見ています。
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3.「二酸化炭素を資源として捉えカーボンリサイクルする」は、必要だと思うし開発競争に入っているけれども、まだ確定的に見込むことは難しく、これをアテにして削減策をおろそかにするわけにはいきません。
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今、オススメの本
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流れにうまく入れられなかったんですが、他の自治体さんで取り組んでおられるエネルギーを活用した地域経済循環を進めていただきたい!!!最新データが2015年と古いですが、広島県のGRP(地域総生産)の8.3%を占める9,800億円のエネルギーコストが県外・海外へ流出しています。
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