男1人、犬一匹、猿一匹。どこかを目指し、そのどこかに向かって歩いている。
猿は離れてついている。
見失わない程度に後ろから、男と犬を、というよりはその関係を見ていた。
もう既に陽は落ち、あたりは真っ暗である。
男は大きな木を見つけた。とても気になったのだろう、ずっと見上げている。
猿にもその木は、とても気になる木であった。黒々と光り、風にざわめいているだけであった。
男は猿に、ここに野営することを告げた。猿は別に反対する理由もないので快く承諾した。
木の元で男と犬と猿は、焚き火をし、明日の備えも終えた。犬は既に寝ている。
男「さて、明日も早い、寝るか。」
猿(そういえば…お前は何処を目指しているのだ。まだ、それを聞いていなかった。)
男「ついて来れば分かる。気になるか?」
猿(気になる。が、ここで言わないのも何かの理由があっての事だろう。)
男「物分かりがいい猿だな。まぁ、それどころか喋る猿も、もっと驚くのだが。」
猿(ふふ…)
男「何がおかしい?」
猿(…人間の愚かさだよ。猿は喋らないものだと当たり前のように決め付けている。滑稽だ。)
男「…」
猿(しかしお前はまだマシな方だな。自分にとって受け入れがたいであろう私を受け入れている。
大抵の人間どもは、そんな我々を恐れ、害と見做し、迫害する。迫害されるのは猿だけじゃない。
この犬も、鳥も、猫も、木や花など植物でさえも。人間は、膨張しすぎたのではないか。
もはや手遅れだ…今日、お前と、この犬をずっと見てきたが、やはりといったところだ。)
男「やはり…」
猿(相変わらずの一方的な愛なのだよ。いや、愛というのも間違いだ。お前は勘違いしている。
人間の中でも、お前は違って進歩的だが、しかし結局はお前も同じ人間なのだよ。
動物を飼い、その動物がなつく。いかにも理想的な関係で、家族の一員とさえ思う。しかし…
何度も言うが、それはあくまで人間の理想に過ぎず、犬は以外と、そうでもない…らしい…)
猿は、答えを言わない。人間に自ずと気づかせるという、いかにも教育的であった。
猿が、人間に教育するなど人間にとっては異様で、理解不能、彼等は受け入れない。そんな時…
人間は必死にもがく。「愚かな猿などに…」と危害を加えたりさえする。それが愚かなのだ。
が、人間はこの男のように、説教じみた猿を許容、否、歓迎すべき段階に来ているのでは。
そのまま、男と猿は眠りに就いた。深い眠りであった。
石を落としてみる。
何をしても気づかない。
男は犬を見つめ、その男と犬を猿が見つめる。
その3者を私が見つめている。いや、見下ろす。
そう、私は雉である。この不思議な3者を、空から、木の上から見届けることにする。
猿は離れてついている。
見失わない程度に後ろから、男と犬を、というよりはその関係を見ていた。
もう既に陽は落ち、あたりは真っ暗である。
男は大きな木を見つけた。とても気になったのだろう、ずっと見上げている。
猿にもその木は、とても気になる木であった。黒々と光り、風にざわめいているだけであった。
男は猿に、ここに野営することを告げた。猿は別に反対する理由もないので快く承諾した。
木の元で男と犬と猿は、焚き火をし、明日の備えも終えた。犬は既に寝ている。
男「さて、明日も早い、寝るか。」
猿(そういえば…お前は何処を目指しているのだ。まだ、それを聞いていなかった。)
男「ついて来れば分かる。気になるか?」
猿(気になる。が、ここで言わないのも何かの理由があっての事だろう。)
男「物分かりがいい猿だな。まぁ、それどころか喋る猿も、もっと驚くのだが。」
猿(ふふ…)
男「何がおかしい?」
猿(…人間の愚かさだよ。猿は喋らないものだと当たり前のように決め付けている。滑稽だ。)
男「…」
猿(しかしお前はまだマシな方だな。自分にとって受け入れがたいであろう私を受け入れている。
大抵の人間どもは、そんな我々を恐れ、害と見做し、迫害する。迫害されるのは猿だけじゃない。
この犬も、鳥も、猫も、木や花など植物でさえも。人間は、膨張しすぎたのではないか。
もはや手遅れだ…今日、お前と、この犬をずっと見てきたが、やはりといったところだ。)
男「やはり…」
猿(相変わらずの一方的な愛なのだよ。いや、愛というのも間違いだ。お前は勘違いしている。
人間の中でも、お前は違って進歩的だが、しかし結局はお前も同じ人間なのだよ。
動物を飼い、その動物がなつく。いかにも理想的な関係で、家族の一員とさえ思う。しかし…
何度も言うが、それはあくまで人間の理想に過ぎず、犬は以外と、そうでもない…らしい…)
猿は、答えを言わない。人間に自ずと気づかせるという、いかにも教育的であった。
猿が、人間に教育するなど人間にとっては異様で、理解不能、彼等は受け入れない。そんな時…
人間は必死にもがく。「愚かな猿などに…」と危害を加えたりさえする。それが愚かなのだ。
が、人間はこの男のように、説教じみた猿を許容、否、歓迎すべき段階に来ているのでは。
そのまま、男と猿は眠りに就いた。深い眠りであった。
石を落としてみる。
何をしても気づかない。
男は犬を見つめ、その男と犬を猿が見つめる。
その3者を私が見つめている。いや、見下ろす。
そう、私は雉である。この不思議な3者を、空から、木の上から見届けることにする。