隠微

当初、担当技師だと言われた若い男性技師が治療にあたったのは、１３回中３回。
あとは入れ替わり立ち代り、女性技師を含めて５名の放射線技師と対面した。
治療を受けていて気づいたことなのだが。

治療台に乗る前に、衣服を脱いでさっさと上がる。
こういうとき、妙に胸元をを隠したり、押さえたりしないほうがいいのじゃないか、ということ。
「隠す」という行為は、それ自体が目を引き、隠されたものの所在が知りたくなるのが人間の心理である。
ぱっぱと脱ぎ捨てて、タッタと行動すれば、そこにいるのは「患者」であって「女性」ではなくなるような気がするのだ。

温泉は、私は苦手なのでほとんど行くことはないのだが、それでもたまに行くことがあるとあることに気づいた。
昔なら、たいていの女性は自分の身体をタオルや、湯桶で隠すようにして入浴していた。
が、最近の若い女性は、ほとんど隠すことなどしないで、堂々と生まれたままの姿で歩いていたりする。
そうなると、見ている方は（見ている？！）なんだか見る意欲をなくしてしまう、というのか意識することがなくなってしまうように思うのだ。
あまりにもあっけらかんと裸でいられると、そこにいるのは単なる「物体」「生物」でしかなくなってしまうからなのだ。
それが、妙に隠されたりすると、たちまちそこに「妖しさ」が増し、なんだか視線を彷徨わせなければいけないような気にさせられる。
わかりやすく言えば、エッチな感じになってしまうということ。

そんなわけで、治療室ではなるだけ粛々と上半身裸になって、妙に隠したりせずに行動するようにしている。
でも、相手の技師さんも、これがとーーーても綺麗な女優さんや、色っぽい人妻だったりしたら、相手のことを患者さん、物体、生物なんていう味気ないものとしては見られないのじゃないかな。
私が技師なら、きっと夜な夜な妄想にとらわれてしまうだろうな。