よそいき財布

前々から、気になっていた財布である。
使い勝手がどうとか、そんなことはどうでもよくて、革の質感と刻印がとても好みの感じだった。
でも、主婦の私の買い物としては、ちょっとお値段が張りすぎる。
ちまちまとフェリージ貯金でもしようかなぁ、と思っていた矢先。
会社の近くのバッグショップでバーゲンが始まった。
閉店セールとなっているので、何かお買い得があるかもしれない、とふらりと立ち寄った。
まぁ、特に心惹かれるものはないなぁ、と店の奥へ進んでいくと、え！！
まさかの財布がバーゲンになっている。
初日ではなかったので、もう３つほどしか残ってはいないが、私好みのヌバックタイプがあるではないか。
３０％くらいオフになっている。
こんなチャンスは滅多にないぞ、という悪魔のささやきが耳元で聞こえる。
片や、それだけあればバーゲンで靴とパンツが買えるじゃないか、という良心（？）のささやきも聞こえる。
だが、先日雑貨屋で一目惚れしたかごバッグを、お得意様優待セールまで待てばいいか、と見送って売り切れてしまったという苦い経験がある。
夫の
「買わんかったことを後悔するくらいやったら、さっさと買っとけ！」という言葉も頭に響く。
そして、気づけばレジに出していた。

だが、帰ってからチェックすると、お札は折りたたんでしか入れられない。
小銭入れの部分のチャックも、心持ち堅めである。
これは・・・
主婦の財布としては失敗かもしれない、という思いがちらっとかすめる。
そうだ、これはよそいき財布にすればいいのだ。
デパートやブティックで、手垢で汚れて、角の擦り切れた財布を出すことがためらわれることがある。
そんな気取った時用の財布ってことで。
はぁ～っ、なんか貧乏くさいなぁ。
でも、やっぱりスーパーでネギや、泥付きの小松菜に触れた手で触るのは、ちょっとかわいそうな気がする。
何より、後ろで並んでいる人を気にしながら、おつりを仕舞うのに手間取りそうなことが絶対、普段使いには向いていない。
そうしよう、よそいき財布。