その4初稿につき、「形の相手は正面に一人」という点について「それは違う」というご意見がございました。
まず、空手修行をされる皆様の形に対する所信はそれぞれであり、ワタクシの主張が万人に当てはまる完全に正しいものでないことについては重々承知しております。
また既に空手のトレーニング、あるいは形の練習の一環として多人数掛け・複数掛けの練習に取り組み、それで十分な成果が出せており、かつ、万人が納得する口伝や指導方法を確立されていると方もおられるでしょう。そして「空手の型は多方向・多人数を相手にできるものだ」と確信している方もいらっしゃるでしょう。
そうした方におかれましてはワタクシの主張など「笑止なこと」「片腹痛い」で片づけていい話ですし、そういった方々に対し、「考え方を変えてくれ」などというつもりは一切ありません。
しかし、世の中には間違いなく、複数の名人が「形の相手は正面に一人」を主張していますし、ワタクシはそう主張する名人の教えや口伝によって、ようやく形の使い方、形の何たるかを理解したのです。
ですから、弊ブログでは「その4」で主張した通り、「形は正面に一人」の説を枉げることはありません!!!!
ただ、「その4」では言葉足らずな部分や、サバキの形に関して若干事実誤認がありましたので、今回は「その4の補稿」というかたちで、その点を補足したいと思います。
まず補足その1として、「その4」で掲載しなかった、「相手は正面に一人」を補填する参考資料を列挙します。
昭和13年に刊行された「攻防拳法 空手道入門」(摩文仁賢和・仲宗根源和著。いずれも戦前・戦中の超ビッグネーム)にはこうあります。
「型の動作が八つの方向をとるから八人の敵と戦ふ型だと、とんでもない間違った解釈さへ生じているのであります」
これは首里手系列の空手を背骨とした両師範のみならず、那覇手系統の本である「沖縄空手剛柔流」(玉野十四雄著)にも「仮想の敵は一人」とあるのが大変興味深いところです。
さらに言えば、首里手系列の現代の有識者・新垣清師範の著書「沖縄空手道の真髄 秘伝の奥義『平安の形』の検証」(原書房)に、「現代空手家への口伝」として、その1「演武線は一直線」その3「相手は単独で同一人物」とあります。
新垣師範は「その3」解説において、このように述べております。
「形においては、相手は最初から最後まで一人の人間です。さらに明確にしますが、その一人も最初から最後まで同じ人間で同一人物です。」
上掲著は専門的説明が多く、「なぜそうなるのか」ということを要約して説明することが難しく、その点については「同著を読んでください」としか言えないのが悲しいのですが(-_-;)「四方八方の敵を相手にする」については、下記の通り明確に否定されています。ちょっと長くなりますが引用します。
「『型は受け技から始まる』という言葉を間違って解釈したために、相手の攻撃をかわして自分の攻撃をするという武道本来の『後の先』ではなく、相手の攻撃を自分が受けて、その後に反撃する形式で形が構成されているとしてしまったのです。(中略)素手のチャンバラ、素手の殺陣をやることが、形の本来の目的であると完全に間違った考えをしてしまったのです。」
「現代空手では自分に向かって攻撃する一人だけではなく左右から、そして後ろから続々と敵が襲ってくることに対処することが、形の習得目的だと理解して修行しています。(中略)このようなビデオゲーム、または映画やお芝居の殺陣のような、武術的には荒唐無稽な場面を首里手の形は想定しているのではありません。」
実を言うとワタクシも永年、伝統形はもちろん、サバキの形も「相手の攻撃を受けて、その後に反撃する形式」以外の用途がわからないままでした。
7年前にとある沖縄の大先生と出会って伝統形の用法を教えていただき、本当に目からウロコがボロボロ落ちる思いでいっぱいでしたが、大先生の主張も(あとで文献を漁った結果で知りましたが)新垣師範とおおむね同じでした。
それに気づいたワタクシはあるとき「そういえばサバキの形って、現役時代は『右を向いて2人、後ろを向いて3人、左を向いて2人、後ろを向いて1人を倒すもの』とだけ教えられたけど、正面に1人ということで考えたらどうなんかのー?」とイタズラ心を起こしてやってみたところ…道場で練習していた現役のときには全くわからなかった「サバキのバリエーション」が見えるようになってきたのです。ほんとうに不思議な経験でした。
そのナゾを説いた口伝こそが「演武線は一直線」「相手は正面に一人」だったのです(ほかにも「!」となった口伝はたくさんありますが、特に印象的だった2つを挙げました)。
同じことを重ねて申しますが、弊ブログは既に形を用いた多人数掛けに成功している方や、形は四方八方の敵を倒し得るものと信じておられる方におかれましては、ワタクシの主張など「笑止なこと」「片腹痛い」で片づけていい話ですし、そういった方々に対し、「考え方を変えてくれ」などというつもりは一切ありません。
しかし、ワタクシには「形とは敵を四方八方に向かって倒すもの。オレはそれを実戦で立証した」という主張に負けないくらいの調査と検証を以て、「形がそういうものではなく、『相手は正面に一人』だ!」と確信したいうことを主張したかったわけでございます。
これはディベートをしても平行線をたどるだけなので、「アナタはそう言っている、ワタクシはこう信じている」ということを落としどころとして完結させたいと思います。
所信はすべて申し述べましたので、以後、本稿についてコメントの記載は自由ですが、「形は『相手は正面に一人』なのか、四方八方の敵を倒すものなのか」という議論は一切しません。
あと、事実誤認による訂正事項をひとつ。
サバキの形のうち「組手の型5」は、8の挙動が背後からの敵を倒すようにできていました。この点はワタクシの調査不足でしたので、謹んで訂正いたします。おわり。
本補足を読んで「じゃあ次も読んでやってもいいかな」と思われる方は、「その5」もお楽しみくださいませ。
まず、空手修行をされる皆様の形に対する所信はそれぞれであり、ワタクシの主張が万人に当てはまる完全に正しいものでないことについては重々承知しております。
また既に空手のトレーニング、あるいは形の練習の一環として多人数掛け・複数掛けの練習に取り組み、それで十分な成果が出せており、かつ、万人が納得する口伝や指導方法を確立されていると方もおられるでしょう。そして「空手の型は多方向・多人数を相手にできるものだ」と確信している方もいらっしゃるでしょう。
そうした方におかれましてはワタクシの主張など「笑止なこと」「片腹痛い」で片づけていい話ですし、そういった方々に対し、「考え方を変えてくれ」などというつもりは一切ありません。
しかし、世の中には間違いなく、複数の名人が「形の相手は正面に一人」を主張していますし、ワタクシはそう主張する名人の教えや口伝によって、ようやく形の使い方、形の何たるかを理解したのです。
ですから、弊ブログでは「その4」で主張した通り、「形は正面に一人」の説を枉げることはありません!!!!
ただ、「その4」では言葉足らずな部分や、サバキの形に関して若干事実誤認がありましたので、今回は「その4の補稿」というかたちで、その点を補足したいと思います。
まず補足その1として、「その4」で掲載しなかった、「相手は正面に一人」を補填する参考資料を列挙します。
昭和13年に刊行された「攻防拳法 空手道入門」(摩文仁賢和・仲宗根源和著。いずれも戦前・戦中の超ビッグネーム)にはこうあります。
「型の動作が八つの方向をとるから八人の敵と戦ふ型だと、とんでもない間違った解釈さへ生じているのであります」
これは首里手系列の空手を背骨とした両師範のみならず、那覇手系統の本である「沖縄空手剛柔流」(玉野十四雄著)にも「仮想の敵は一人」とあるのが大変興味深いところです。
さらに言えば、首里手系列の現代の有識者・新垣清師範の著書「沖縄空手道の真髄 秘伝の奥義『平安の形』の検証」(原書房)に、「現代空手家への口伝」として、その1「演武線は一直線」その3「相手は単独で同一人物」とあります。
新垣師範は「その3」解説において、このように述べております。
「形においては、相手は最初から最後まで一人の人間です。さらに明確にしますが、その一人も最初から最後まで同じ人間で同一人物です。」
上掲著は専門的説明が多く、「なぜそうなるのか」ということを要約して説明することが難しく、その点については「同著を読んでください」としか言えないのが悲しいのですが(-_-;)「四方八方の敵を相手にする」については、下記の通り明確に否定されています。ちょっと長くなりますが引用します。
「『型は受け技から始まる』という言葉を間違って解釈したために、相手の攻撃をかわして自分の攻撃をするという武道本来の『後の先』ではなく、相手の攻撃を自分が受けて、その後に反撃する形式で形が構成されているとしてしまったのです。(中略)素手のチャンバラ、素手の殺陣をやることが、形の本来の目的であると完全に間違った考えをしてしまったのです。」
「現代空手では自分に向かって攻撃する一人だけではなく左右から、そして後ろから続々と敵が襲ってくることに対処することが、形の習得目的だと理解して修行しています。(中略)このようなビデオゲーム、または映画やお芝居の殺陣のような、武術的には荒唐無稽な場面を首里手の形は想定しているのではありません。」
実を言うとワタクシも永年、伝統形はもちろん、サバキの形も「相手の攻撃を受けて、その後に反撃する形式」以外の用途がわからないままでした。
7年前にとある沖縄の大先生と出会って伝統形の用法を教えていただき、本当に目からウロコがボロボロ落ちる思いでいっぱいでしたが、大先生の主張も(あとで文献を漁った結果で知りましたが)新垣師範とおおむね同じでした。
それに気づいたワタクシはあるとき「そういえばサバキの形って、現役時代は『右を向いて2人、後ろを向いて3人、左を向いて2人、後ろを向いて1人を倒すもの』とだけ教えられたけど、正面に1人ということで考えたらどうなんかのー?」とイタズラ心を起こしてやってみたところ…道場で練習していた現役のときには全くわからなかった「サバキのバリエーション」が見えるようになってきたのです。ほんとうに不思議な経験でした。
そのナゾを説いた口伝こそが「演武線は一直線」「相手は正面に一人」だったのです(ほかにも「!」となった口伝はたくさんありますが、特に印象的だった2つを挙げました)。
同じことを重ねて申しますが、弊ブログは既に形を用いた多人数掛けに成功している方や、形は四方八方の敵を倒し得るものと信じておられる方におかれましては、ワタクシの主張など「笑止なこと」「片腹痛い」で片づけていい話ですし、そういった方々に対し、「考え方を変えてくれ」などというつもりは一切ありません。
しかし、ワタクシには「形とは敵を四方八方に向かって倒すもの。オレはそれを実戦で立証した」という主張に負けないくらいの調査と検証を以て、「形がそういうものではなく、『相手は正面に一人』だ!」と確信したいうことを主張したかったわけでございます。
これはディベートをしても平行線をたどるだけなので、「アナタはそう言っている、ワタクシはこう信じている」ということを落としどころとして完結させたいと思います。
所信はすべて申し述べましたので、以後、本稿についてコメントの記載は自由ですが、「形は『相手は正面に一人』なのか、四方八方の敵を倒すものなのか」という議論は一切しません。
あと、事実誤認による訂正事項をひとつ。
サバキの形のうち「組手の型5」は、8の挙動が背後からの敵を倒すようにできていました。この点はワタクシの調査不足でしたので、謹んで訂正いたします。おわり。
本補足を読んで「じゃあ次も読んでやってもいいかな」と思われる方は、「その5」もお楽しみくださいませ。
また1週間程度お待たせしてしまいますが、「その5」もお目汚しにお読みいただければと思います。
またよろしくお願いいたします。
普段特にコメントすることなく、ただただ楽しみに読ませていただいておるのですが、
今回はコメントさせていただきます。
私、某最大手フルコン団体の末席を15年ほど汚し続けております、ひ弱な者ですが、今回のシリーズはあまりにも、私が常々考えておりましたことと一致するところが多く、実に興味深く読ませていただいております。
「隠されていた空手」には無理な解釈も多々あるように感じておりますが、口伝については大いに参考にしておるところです。
何をコメントしたかったのか、支離滅裂な文章でコメント欄を汚してしまいましたが、今後も楽しみに待っております。
初めてのお越しにもかかわらず、コメントを長く放置してしまい大変申し訳ございませんでしたm(__)m。衷心よりお詫び申し上げます。
弊ブログをお読みいただいているとのこと大変恐縮でございます。
また、フルコンの修行歴にも敬意を表するところでございます。
「隠されていた空手」は、今から10年以上も前に伝統形の分解に大きな一石を投じたパイオニアということで、常に座右に蔵していますが、細かい分解のところではまさ様ご指摘のとおり「?」というものも多々あります。
(「?」箇所の補填は、弊稿における「沖縄の大先生」こと、山城美智師範の著作やDVDで行いました(;^_^A))
そうした点も含め、今回は「人様に無駄話を聞いて頂く」という要素より「自分で勉強しなおす」という色合いが濃い投稿となってしまいました。
コメントは随時受け付けております(ただ、勤務形態の関係上、今回のようにかなり間が開く可能性があります)ので、またご意見を賜りますよう、お願いいたします。