12:43 小田急・向ヶ丘遊園駅から歩いて10分ほど。川崎市立日本民家園へやってきた。テレビ番組(『ビフォーアフター』とか『建もの探訪』とか)で見たり、町を歩いていて見たり、家をいろいろ見る中で、自分が好きなのは和風建築ではないかと思った。和風建築ばかり集まっているここは、きっと面白いはずだ。
まず最初の家、川崎市中原区にあったという明治時代後期の建物。造作といい、色調といい、この落ち着きがいいんだよな。
園内の家には靴を脱いで上がれる家と上がれない家があるが、この家には上がれる。畳の部屋には、靴を脱いで上がれることの喜びがある。素足だったらなお気持ちいいだろうね。床脇、床の間、書院、欄間、そして縁側…いいなあ。
長野県伊那の薬屋だった家。屋根は石置きの板葺き。どの家もそうだが、この園に「保存」されているとは言っても、日々風雨に晒され続けていることに変わりはなく、維持は大変だろうなと思う。
長野県千曲川沿いの名主の家。ゆとりのある前庭がいい。家によっては、縁側にスクリーンを垂らし、庭を客席にして、映画の上映会をしたという。木々や花々があれこれ植え付けられた庭もいいが、多目的に使える「無地」の庭もいい。
屋根の際を下から眺める。機械が生む「直線」ではない、人の手が作り上げる「真っ直ぐ」が美しい。
1階がそば屋になっている飛騨白川郷の合掌造りの家の2階から。見えるのは越中五箇山の合掌造りの家。緑に囲まれたこういう美しい里に暮らしたい…感傷が過ぎるか。
14:32 神奈川県秦野の民家。古民家の室内は総じて暗い。まさに『徒然草』の「家の作りやうは夏をむねとすべし」で、陽が入らずに涼しくはあるが(入ってきた見学者はみな口々に「涼しいねえー」と安堵の嘆声をもらす)、真っ暗なのもいただけない。昔の人は仕事といえば屋外の野良仕事がほとんどだったろうから、人のいない日中の家の中が暗いのは問題ではなかったのかも知れない。かわりに「半分屋内・半分屋外」で、陽射しを避けながらも明るい縁側がある。歩き疲れたので上がって座り込む。家々の中には、虫除けのためか、囲炉裏で薪をくべている家もある。煙の匂いが鼻をくすぐると、「キャンプファイヤーだ」と思う。何か具体的に覚えているキャンプファイヤーの思い出があるわけじゃないんだけど、記憶というより感覚に刻まれている。
色合い、素材…自然に溶け込んでいて美しい家。
川崎市の多摩川の渡し場にあった船頭小屋。船頭が客待ち・休憩・川の見張りに使ったという。この裏側には窓が開いており、外の様子は常に窺えるようになっている。決して「サボり小屋」ではないのだ。四隅の柱には輪っかがついていて、大水の時はその穴に丸太を通して担いで移動させたという。軽快だなあ。
15:42 一通り見終わって、一番気に入ったのは…最初に見たこの家。自分は和風建築が好きなのかも知れないという漠然とした思いで今日ここに来たけど、もっと具体的には「畳の間」と「縁側」が好きなのだとわかった。和風建築と言えども、厚い屋根の下の暗い土間や板の間には重苦しさを覚えた。障子や襖を開け放てばたちまち外と家中の空間が連続し、風が吹き抜ける。その軽やかさがいいのだ。
…というわけで、またこの家に上がり込む。畳に座る。だんだん夕方に近づいて、客もずいぶん減った。静かだ。
畳の間というのは、基本的に「何も置かない」部屋だ。その潔さが好きだ。そして、座ったり寝転んだりすれば、そこがたちまち「居場所」となる。その柔軟さ、包容力の高さも好きだ。椅子とテーブルの高さで暮らす洋間では、なかなかそうはいかない。
歩いた距離はさほどではなかったはずだけど、何かを見学しながら歩くのは、登山や散歩のように「歩くこと自体が目的」の歩きよりくたびれるようだ。美術館でも同じようにくたびれる。
16:11 それでも、帰りの駅へ直行してしまうのは惜しい。同じ生田緑地内にある枡形山へ。標高84m。頂上にはエレベーター付きの展望台がある。
展望台からの眺め。新宿方面。スカイツリーやランドマークタワーも見えた。
木立の中を通じる山稜の道を行き、階段を下る。家の近くにこんな散歩コースがあったらいいね。
17:07 向ヶ丘遊園のダイエーで「まるごとバナナ」とミルクティーを買い、座って食べるなら…と登戸の多摩川河川敷までやってきた。
背後に気配を感じて振り返ったら、猫がいたよ。物を食べてる人を目ざとく見つけて寄ってくるんだな。でも、生クリームいっぱいの「まるごとバナナ」なんて、食べないだろ?
そうこうしているうちにもう1匹近寄ってきた。僕の尻に触れそうなくらいすぐ後ろにいるくせに、振り向けばしらーっとそっぽを向くんだよね。2匹とも。それがいかにも「猫の距離感」。
「まるごとバナナ」を食べたら元気になった。もう少し歩いてみる。津久井道/世田谷通りの多摩水道橋を渡る。並行する小田急の下り電車は渋滞しているようで、川の上で止まりそうなほどゆっくり徐行する。
17:40 狛江の泉龍寺。鐘楼と本堂。
寺の森は狛江駅前まで続いている。柵で近づけなかったが、池もあるようだ。駅前なのによくぞ開発を逃れたなあ。
18:00 さらに喜多見駅まで歩き、帰途の電車に乗る。
和風建築はやっぱり良かった。民家もいいが、今度は武家屋敷も見に行きたい。庭園のある寺院なんかもね。
まず最初の家、川崎市中原区にあったという明治時代後期の建物。造作といい、色調といい、この落ち着きがいいんだよな。
園内の家には靴を脱いで上がれる家と上がれない家があるが、この家には上がれる。畳の部屋には、靴を脱いで上がれることの喜びがある。素足だったらなお気持ちいいだろうね。床脇、床の間、書院、欄間、そして縁側…いいなあ。
長野県伊那の薬屋だった家。屋根は石置きの板葺き。どの家もそうだが、この園に「保存」されているとは言っても、日々風雨に晒され続けていることに変わりはなく、維持は大変だろうなと思う。
長野県千曲川沿いの名主の家。ゆとりのある前庭がいい。家によっては、縁側にスクリーンを垂らし、庭を客席にして、映画の上映会をしたという。木々や花々があれこれ植え付けられた庭もいいが、多目的に使える「無地」の庭もいい。
屋根の際を下から眺める。機械が生む「直線」ではない、人の手が作り上げる「真っ直ぐ」が美しい。
1階がそば屋になっている飛騨白川郷の合掌造りの家の2階から。見えるのは越中五箇山の合掌造りの家。緑に囲まれたこういう美しい里に暮らしたい…感傷が過ぎるか。
14:32 神奈川県秦野の民家。古民家の室内は総じて暗い。まさに『徒然草』の「家の作りやうは夏をむねとすべし」で、陽が入らずに涼しくはあるが(入ってきた見学者はみな口々に「涼しいねえー」と安堵の嘆声をもらす)、真っ暗なのもいただけない。昔の人は仕事といえば屋外の野良仕事がほとんどだったろうから、人のいない日中の家の中が暗いのは問題ではなかったのかも知れない。かわりに「半分屋内・半分屋外」で、陽射しを避けながらも明るい縁側がある。歩き疲れたので上がって座り込む。家々の中には、虫除けのためか、囲炉裏で薪をくべている家もある。煙の匂いが鼻をくすぐると、「キャンプファイヤーだ」と思う。何か具体的に覚えているキャンプファイヤーの思い出があるわけじゃないんだけど、記憶というより感覚に刻まれている。
色合い、素材…自然に溶け込んでいて美しい家。
川崎市の多摩川の渡し場にあった船頭小屋。船頭が客待ち・休憩・川の見張りに使ったという。この裏側には窓が開いており、外の様子は常に窺えるようになっている。決して「サボり小屋」ではないのだ。四隅の柱には輪っかがついていて、大水の時はその穴に丸太を通して担いで移動させたという。軽快だなあ。
15:42 一通り見終わって、一番気に入ったのは…最初に見たこの家。自分は和風建築が好きなのかも知れないという漠然とした思いで今日ここに来たけど、もっと具体的には「畳の間」と「縁側」が好きなのだとわかった。和風建築と言えども、厚い屋根の下の暗い土間や板の間には重苦しさを覚えた。障子や襖を開け放てばたちまち外と家中の空間が連続し、風が吹き抜ける。その軽やかさがいいのだ。
…というわけで、またこの家に上がり込む。畳に座る。だんだん夕方に近づいて、客もずいぶん減った。静かだ。
畳の間というのは、基本的に「何も置かない」部屋だ。その潔さが好きだ。そして、座ったり寝転んだりすれば、そこがたちまち「居場所」となる。その柔軟さ、包容力の高さも好きだ。椅子とテーブルの高さで暮らす洋間では、なかなかそうはいかない。
歩いた距離はさほどではなかったはずだけど、何かを見学しながら歩くのは、登山や散歩のように「歩くこと自体が目的」の歩きよりくたびれるようだ。美術館でも同じようにくたびれる。
16:11 それでも、帰りの駅へ直行してしまうのは惜しい。同じ生田緑地内にある枡形山へ。標高84m。頂上にはエレベーター付きの展望台がある。
展望台からの眺め。新宿方面。スカイツリーやランドマークタワーも見えた。
木立の中を通じる山稜の道を行き、階段を下る。家の近くにこんな散歩コースがあったらいいね。
17:07 向ヶ丘遊園のダイエーで「まるごとバナナ」とミルクティーを買い、座って食べるなら…と登戸の多摩川河川敷までやってきた。
背後に気配を感じて振り返ったら、猫がいたよ。物を食べてる人を目ざとく見つけて寄ってくるんだな。でも、生クリームいっぱいの「まるごとバナナ」なんて、食べないだろ?
そうこうしているうちにもう1匹近寄ってきた。僕の尻に触れそうなくらいすぐ後ろにいるくせに、振り向けばしらーっとそっぽを向くんだよね。2匹とも。それがいかにも「猫の距離感」。
「まるごとバナナ」を食べたら元気になった。もう少し歩いてみる。津久井道/世田谷通りの多摩水道橋を渡る。並行する小田急の下り電車は渋滞しているようで、川の上で止まりそうなほどゆっくり徐行する。
17:40 狛江の泉龍寺。鐘楼と本堂。
寺の森は狛江駅前まで続いている。柵で近づけなかったが、池もあるようだ。駅前なのによくぞ開発を逃れたなあ。
18:00 さらに喜多見駅まで歩き、帰途の電車に乗る。
和風建築はやっぱり良かった。民家もいいが、今度は武家屋敷も見に行きたい。庭園のある寺院なんかもね。