あのおとうさんと会うと、何買った?とかお互い買い物かごの
中を覗いたりして。
そうするとおとうさんはこれはこういう食べ方とか、
これは息子の弁当に、とかいろいろ説明してくれるのよ、
なかなかやるものです、わたしより上手いかも。
おとうさんは再婚なんだそうです。
本当によくやっていると、ただただ感心します、
わたしなんかがそうなったら、寝たきりのことですけど、
きっと見捨てられるのが落ちでしょうから。
いつも買い物に行くスーパーで会うおとうさんは、ほとんど毎日の
ように決まった時間に来ています、
そこはいつも皆大体同じ人が来るんですけどね。
そのおとうさんともたまに話をするんですけど、連れ合いが脳卒中で
11年も寝たきりなのだとか、それでそのおとうさんが家の事を全部
やっているんだそうです。
病院へ通ったり、息子さんの弁当を作ったり、食事の支度をしたり
もう長年やっていると言ってました。
先月病院代が60万掛かったという話に、もうわたしは驚いてしまって
「一か月60万」と、思わず聞き返してしまいましたよ。
おとうさんが言うにはもう家が2件も建つぐらい掛かった
と言ってました、
わたしは、そんな事言っては悪いのですが、寝たきりでこの先
回復も全く望めないので在れば、早く楽になった方がいいと
思ったことはありませんか、と思わず聞いてしまいました。
そしたらおとうさんは、そうは思わない、とキッパリと答えました、
点滴をやって寝てるだけだけど、手を握れば握り返してくるし、
黙って上を向いたきりだけど生きてるから、生きてるだけで有難いと。
昔、懸命に働いてそれを今母さんの為に使っている、と言ってました、
自分は昔、社交ダンスが趣味でかなり上手かったし、いろんな女性と
付き合ったとか、
え~~、人は見かけじゃないね、なんてね。