ピアニストにとって手は、最も大事なもの。
でも、生まれ持って手が小さいとか、細いとかはやはりハンデがあると感じます。ラフマニノフやチャイコフスキーのコンチェルトはやはり余裕の音の響きが欲しい。だから昔からピアノは成人男性の弾くものとずっと思っていました。国際ピアノコンクールの優勝者は圧倒的に男性です。作曲家は男性がほとんどなのでその手のサイズで弾けるものが必然的に多くなるでしょう。だから女子の皆さんにはできるだけ手に負担をかけないよういろいろ考えて奏法をお伝えしてきました。
その考えは昔、作曲家の中田喜直先生が小さい手のためのピアノをつくられたものがありましたが、普及しませんでした。考えたら、コンクールや一般ホールに持込はヴァイオリンと違って大変ですよね。
今回ドイツの放送局で音大でスタインウェイを改造したというニュースがありましたが、女性にはうれしいニュースとして取り上げられました。私は生徒の皆さんには、モーツァルトの細かいパッセージの半音階を弾こうとしたら黒鍵の間に指が挟まった男性ピアニストがいるという笑い話のような話もしています。
細幅鍵盤はありがたいし、諦めていた曲も弾けるのであればうれしいですが……。