先月末、とても良い実山椒が手に入った。佃煮にしても良いのだが、ふっと、この季節になると食べたくなる料理がある。
巣鴨KUSHIKOMA井こし・井越氏のスペシャリテとも言える「にしんの山椒漬け」。
昨年、初めていただいたときは感動した。一年に一度しか仕込まないというこの料理は、ご本人も「まだ完成してねぇんだ」と仰るだけはある逸品。あれ食べた~い。
そこで、大胆にもそのレシピを聞くと
「無理!」
・・・・・・・・はい、すいません。それでも、やってみたいのですよ。料理はヒマな私の趣味なのですから。あるじゃないですか、家庭でできるプロの味、とかって。本来は家庭でそんな手間かけられる人なんかいるわけねぇじゃんなレシピがいかにも簡単だよ~んというカンジに書いてあるようなヤツ。
「だいたい、本店にレシピ残ってんじゃねぇの?トシちゃん知らないの?」などとしぶりながら、それでもレシピノートを開いてくださった井越さんの懐の深さに感謝、感謝です。
あとは、実習です。
が。調べていくうちに本来山椒の葉(それも、『木の芽』じゃなくてけっこう大きいヤツ)が市場に出回る時期に漬けないと、実山椒が出回る時期ではもう遅いことが判明。それでもめげずに、とりあえず実山椒で漬けてみて、あとから「木の芽」(←高価い。いいの、趣味だから)をすかさず築地でゲットし、加える。
で、魚屋さんで「身欠きにしん」を入手するとき、固い「本干し」とソフトな生干しがあることを知る(http://www13.plala.or.jp/donzamaru/info_iwanai/osusume/osusume27untiku.htm)。え~、知らん。井こしさんのところのは生っぽかったし、あれは本干しからじゃ再現できないだろう。が、魚屋さんは「えーっ、あれは固いから美味しいんだよ。生干しのじゃ臭くてダメでしょう」なんていうし、にしんの山椒漬けをネットで検索したかぎり本干しを使うものが多いので益々迷う。結局、両方試すことにした。
昨夜、それまで無関心に見えた店長が、突然「ハルさんの漬けたにしん、もう食べられるんじゃない?」と言い出した。たしかに、先に漬けた本干しが昨夜で一週間ほどになっている。
←生干しのほう(漬けた当初)
←本干しのほう(食べる直前)
どうせなら漬けた時点の写真で違いを示せよ←ひとりツッ込み。
さすがは店長、井越さんのを食べたこともないのに、漬け汁の味と、魚の触感で最適な厚さに切ってきれいに盛り付けてくれる。・・・・あれっ?なんか急に興味津々じゃん。
試食。
「うまい!なるほど、これは生干しのほうが断然うまいなー・・・・そうか。これならオレもつくろうかな」
てめぇっ。「食ってみてうまかったら盗んでやろう」なコンタンで遊ばせてたな!?
まだ改良点は多いものの、来年はおでん屋メニューに加わると思われます。彼が忘れていなければ(笑)
Special Thanks to 井越御大!!
本当に、いろいろ勉強になりました。
調べていると、「本干し」は作成に一ヶ月くらいかかる。にしんは北・東日本では「春告魚」。そして、この山椒漬けは会津の郷土料理だ。はっきりいって、広島では「山椒・・・・落葉してたっけ?(←暖地では落葉樹も落葉しないで常緑樹と見違う固い葉のまま冬を越すことがよくある)」というくらい落葉も遅ければ展葉も早い(3月には木の芽がふんだんにとれる)が、会津では「身欠きにしん」の出回る頃、やっと山椒の葉が青々とするのだろう。
と、いうことは「生干し×木の芽」か、「本干し×大きい葉」の組み合わせが本来なのか??などなど。フェノロジー(植物季節)的興味をもそそる料理なのでした。