「外食」ってことを憶えて数年。つまり、母ではなく、親族ではなく、もちろん自分で作ったのじゃない「お金をとる」料理やお酒をいただくというのはなかなか新鮮な驚きや発見がある。料理する人の個性が強く、はっきり出るんだということもそのひとつ。
そして「料理で感動する」というのは、本当にあるんだと知った。
実は最初に「びっくり」を超えて「感動」させてくれたのは店長でした(笑
何年もするうちに舌が肥えて(身体も肥えて、は言うな!)しまったのですが、それでも、トクベツな日には預貯金をくずしてお財布はたいても行きたいお店がある。
四ツ谷「ラノー・ドール」。
http://r.gnavi.co.jp/a324200/
この谷川シェフの経歴のものすごさはいうまでもないですが、偶々店長がキタオカ時代にちょっとだけ助っ人として来ていただいたことからご縁ができたらしく、丁度おでん屋開店の少しあとに現在のお店を構えられたこともあり、食べにおいでよ!と言って頂いていたところへ、私が便乗。二回ほどうかがいました。
フレンチには店長と縁ができたことで、何度か(つっても6~7回)足を運んだことがありますが、いまいち、フランス料理って身体に合わない。
まず、量が多い。
どういっても、油脂がつらい。
マナーがめんどくさい、ワインがわかりにくい、などなどいまいち楽しめないことが多くて実際あとで何食べたか、どんな味だったか思い出せないことが多々あります。
それに、私の性格の問題ですが食材や味の成り立ちがわからないと、面白くないのです。でも、それもシチュエーションやサービスの問題なのかー、と思わされたのがこのお店。
ラノー・ドールの内装は、椅子も壁も、ほぼすべて、白。テーブルにはひとりひとり姿勢も表情も違う可愛い天使の焼き物(輸入もの)があり、頭の金の輪(ラノー・ドール)が控えめに光る。壁には高名な先生の書がかかっており、BGMもないけれど暖かくしずかな安心感があります。
お料理は、繊細・精緻のきわみで、なんとなく店長と傾向が似ている(ような気がする)。
谷川シェフは、店長相手なので、前菜の作り方や、居酒屋でもいろいろと使える「コツ」を伝授してくださる、穏やかで静かで、大変気さくな方です。愛読書はナント「風姿花伝」。私服はけっこう作務衣とか多いらしい。
初めてお会いした日に、私と同じ「急性椎間板ヘルニア」の苦しみ話でいきなり盛り上がる(笑。
他にも歌舞伎、能、小説、哲学、絵画、なんでもござれ。自分に厳しく誠実で、哲学的で、ユーモアのある人です。人生の熟成をも語れる素直な方でもあります。
店長が持っている「ポール・ボキューズ自伝」にあるように、本当に、お客さんとワインをかたむけて話すというシェフです。店長が「サービスは、親しい友人を自宅にお招きしたような満足感をお客様にもたらすことを目指すんだ」と教えてくれましたが、あるいは「自分もワインを飲んで終電まで親しく喋る」ことが、キタオカで出会った店長に合わせたサービスだったのかもしれません。最後はもう、デセールふっとばして秘蔵のカルヴァドスとか出しちゃってモトとれてますか?なヨッパライ状態、が・・・・・・・?
どの道でも、「ああ、こんな凄い人がいるんだ」って尊敬する先輩がいますよね。
私はフランス料理では、この方のお料理とサービスが(少ない経験上では)最高と感じました。何かの記念日にはまた、きっとここに行くだろう、そんな、桁はずれの「ラグジュアリー」ということを感じさせてくれるお店です!