すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

県外調査1日目(熊本・水保全条例調査①熊本市役所水保全課・くまもと地下水財団)

2012年11月05日 | 日記

 福祉生活病院常任委員会では地下水条例について審議しています。そこで、先日の参考人招致に続き、先進県である熊本を訪れて調査することにしました。まず始めに訪れたのは熊本市役所。熊本市環境局とくまもと地下水財団からお話を聞きました。

 

 熊本市の原木靖久局長が挨拶に立たれました。以下は概略です。

  熊本市で73万人、周囲を含め100万人が地下水で暮らしている。これだけの規模は世界にもない。それだけに水環境は大事だ。加藤清正が街を作って400年。水田開発に力を入れたので、そこで水が涵養されている。また、阿蘇の噴火が、地下水が貯まりやすい地層を形成した。水道局は自噴している井戸で採集している。阿蘇で降った水が、カタツムリが動くくらいの早さで、20年かけて阿蘇山から流れてきている。水田に水を張った期間に応じて熊本市は農家に補助金を出しているが、熊本の水田はザル田と言われ、普通の5倍から10倍の浸透力があるから、有効は涵養の方法だと思っている。

熊本市が進んで条例を作ったが、県も今回、厳しい条例を作った。大口揚水者は涵養も計画を作り、実施することを義務化した。県と市で4月に地下水財団も作った。市も採取量に合わせてお金を払って事業者、市民と共にこの財団に参加している。熊本市では「蛇口からミネラルウォーター」と言っている。それくらい良い水だ。今晩、宿泊されると聞いた。ホテルで風呂に入られると思うが、そうなると3万円の価値のあるお風呂に入ったことになるので、そう思って入浴を楽しんで下さい。

 

 市条例について水保全課の甲斐勇課長補佐から説明を受けました。写真は右から藤本雄一課長補佐、甲斐勇課長補佐、くまもと地下水財団の今坂智恵子事務局長です。今坂事務局長は前任の水保全課長だそうです。

 県条例は公共水という定義をしたが、これは判例から得られたもの。3回の調査で水循環のシステムを把握したところ、熊本市の水は熊本で得られたものではないことがわかった。

  市条例では3万トン以上の採取者に涵養と節水の報告を出してもらっている。対象事業所は100社ある。一番大きい取水者は上下水道局で8000万トン、果実連が100万トンだ。事業所の節水などの努力は発表している。また、建築業者には新築時の雨水浸透升の設置を義務づけた。井戸は直径19センチ以上のものは採取量を報告することにしている。

  県条例との関係で言うと、県条例に被さったものは市条例から取り去っている。今回、同じ内容が県条例に入り、罰則も重くなったので、自噴井戸を条例から取り去るように条例改正を検討している。熊本の地下は2層の地層構造になっているが、上下水道は30メートルを境に深い井戸、浅い井戸と分けている。地下工事では10メートル以上の深さは届け出ることとし、特に水源地の500メートル以内での掘削は水保全課に相談してもらうことにしている。工事で薬剤を使うときには危険性があるからだ。硝酸性窒素対策も入れている。

  熊本市民は、水はタダだと思っている。だから蛇口は開けっ放しだ。平成14年度には市民1人254リットルも使っていた。それで節水にも取り組んでいる。市は小回りが効くので建築確認時に、節水に配慮した建物にしてくださいなどとチェックしている。その結果、23年度は230リットルまで減ったが、それでも多いと思っている。いっそ地下水を有料化してはとの議論もあったが、協議会に協力金を負担してもらっている。

  江津湖は40万トンの水が毎日沸いているが、20年前には80万トンだった。地下水量は湧水量で見ている。共通の地下水盆を使っているのは熊本市など11市町で人口100万人。この地域には20億トンの雨が降るが、蒸発、河川、地下浸透で各1/3づつと見ている。現在は6平方センチ以上の井戸は届け出制で、その集計によると採取量は1億8000万トン使っていることになる。白川中流のザル田などで9000万トン涵養しているが、ちょうど熊本市の採取量と同じ。家屋を新築するときは雨水浸透升の設置を義務付け、上限20万円の補助金を河川公園課が都市型集中豪雨対策として出している。

  地下水位は5月が低くて、10月が高い。これは水田の影響。経年変化できると水位は安定している。地下水採取量は水のリサイクル、農家の減少、節水器具の復旧で減っている。

  硝酸性窒素は北東部の井戸で基準を超えている。水道用でも1本が超えた。酪農家が飼料作物の栽培で使った農薬が原因のひとつ。みかんは化学肥料が主。ミミズが増えるとイノシシ被害が増えるとして、有機肥料を嫌う傾向がある。500本近い井戸の調べる概況調査をしている。

  阿蘇の原野で植林している。いい木は伐採しない。現在、年間20ヘクタールに6万本の広葉樹を植えている。昭和23年の白川の大水害があった。山が荒れたのが原因として同28年から植林を始めた。植林にはお金がかかる。幼木が大きくなるまでの6年間は下草刈りが必要。年間8000万円かかるが、半分は国と県の補助をもらってやっている。今年の集中豪雨の被害は、まだ確認されていないので、その確認作業をいまやっている。

 大菊地区では転作が進んだが、土壌害虫の駆除、営農の一環として畑に水を張っている。ニンジンを植えたら、その前後の田を使わない期間に水を張ってもらっているようなイメージ。水利権は5月から10月まで慣行水利権があるので、それを使ってもらっている。5500万円くらいの補助金があるが、上下水道局から45%はもらっている。ビニールハウスの雨水浸透升の設置の補助率は90%。家庭で使う雨水貯留タンクは2/3、上限3万円で助成している。200リットルあるので、東北大震災後は急に増えた。小中学校では雨水貯留タンクを全校に設置した。

 

  説明は同課の藤本雄一課長補佐に代わり、話題は節水の市民運動に移りました。

  平成17年度から熊本節水市民運動を始めた。平成14年度の254リットル。福岡市は230リットルで九州の平均も同様。10%削減の230リットルを目指し、23年度には230.8リットルまで減った。

  「くまもとの水ブランド」の創出を目指して、小中学校の10校程度に水資源課の職員が訪問し、節水などの環境教育をしている。ご当地検定である「くまもと水検定」をしており、昨年度までに2万人が3級を取った。水について勉強して、水を大切にする意識を醸成してもらうことが目的。受験料は無料。また、水を守ってくれる人を登録する「くまもと水守」を制度化、人材の育成に取り組んでいる。

  湧水など水の風土、歴史を後世に伝えようと登録する「熊本水遺産」という制度も設けた。昨年までに83件が登録されている。現在、5次登録の審査中で、100件を超えそう。駅前などに5つの親水施設を作り、1カ所を改修した。民間がすれば1/2、100万円まで補助しており、3カ所整備された。昭和・平成の名水百選には8カ所が選ばれ、富山に次いで全国2位だった

 

 くまもと地下水財団の今坂智恵子事務局長から、同財団についての話も聞きました。

 財団は今年4月に発足した。地下水は市単独でなく、11市町村で地下水盆を共有しているので、地域全体での取り組みが必要と発足した。もともと、11市町で構成する(財)熊本地下水基金、事業者と市で構成、熊本地域地下水保全活用協議会、知事を議長として11市町が会議をしてきた熊本地域地下水保全対策会議の3つを統合、基金を母体として広域公益財団法人として設立した。

 理事会、評議員会、監事に加え、賛助会「くまもと育水会」と諮問機関「くまもと地下水会議」を設けた。賛助会は事業者、民間も入ってもらい、会費や寄付金も集めている。財源は採取量に応じた負担金や会費など3800万円、行政からの負担金2000万円など計6500万円。賛助会員は230団体・人。

 10月に事業メニューを提示して動き始めた。ウォーターオフセット事業は、白川中流域のザル田では5㌔の米を生産すると100トンの地下水を育むことになるので、消費者にお米を購入してもらう制度。財団に窓口を設けて、JAなどと協力してやっている。

 

  質問にも丁寧に答えていただきました。以下はその概要です。

  Q 昭和48年度から2年間県と市で合同調査しておられて、市が条例を作られた。市の条例は上乗せ条例なのか。工業用水の取水はどう確保されたのか。

A 52年度の条例を作ったが、合同調査で、取水量が涵養量を上回っていることが分かった。合わせて、市民運動が起こり、市議会を動かした。市の条例と県の条例は性質が違う。工業用水会計はなく、工場が地下水を汲み上げていた。

Q 熊本市は政令指定都市になるので、県と同等の権限が出てくるが

A 二重行政がかぶりの部分が出ている。自噴井戸の部分が県条例改正でかぶった。ここの罰則は県条例が重いので、市のかぶり部分を取りたい。県が施行するとき、市町村との絡みで苦慮しているところが多いとは聞いている。

Q ミネラルウォーター、ICなどの企業は規制に抵抗感はないのか。

A 活用協議会のメンバーになっている。県の方から説明していたし、大きい事業者さんの方が意識が高く、涵養計画も節水計画も素晴らしい。むしろ、中小企業の方が難しい。大きな事業所の方はイメージ戦略としてやっている。果実連は100万トンの取水量のうち、62万トンを戻している。

Q 市町が常時監視をすることになっているが。

A 24時間監視ではなく、毎月調べるというイメージ。1ヶ月に1回している。観測井戸のモニタリングは24時間監視している。朝9時の段階でデータが送ってくる。

Q 採取量のチェックは

A 業者さんの報告で見ている。高台の観測井戸は下がっているが、市街地は落ち着き、海岸は上がっている。

Q 吐出口が19という根拠は

A メーカーさんの規格に合わせた。この大きさで約90%は網羅できる。3万トン以上の業者で90%を網羅している。

Q 3回の大きな調査をされたそうだが、どれぐらいのレベルだったか。

A それぞれ2年間ぐらい。1000万円ずつくらいを県と市が出した。地質データは行政が集めた。3000本くらいのデータがある。好きな方がいる。市を超えた補助金を出す。科学的な裏付けがいる。阿蘇からの水の流れも解明されている。浸透しやすいことは汚染も広がりやすい。

Q 市内の井戸の数は

A 4000本、うち水道局は100本です。

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