県外調査の最後は、大菊土地改良区を訪れました。刈取りの終わった田んぼの中に改良区の事務所はあり、遠くに阿蘇山も見えました。
改良区は水田を使った地下水涵養について取り組んでおられるとのことで、その現場の声を聴くのが目的です。改良区の理事長は菊陽町の町長さんだそうで、今日は公務があるため、代わって紫藤和幸事務局長が説明していただきました。以下は紫藤さんのお話です。
阿蘇山を源として白川は流れている。その水で、ここで農業をしている。私たちは「農を守って水を守る」のが基本と思っている。平成13年度から21世紀土地改良区創造運動を全国で展開しているが、その中で、水循環クリエーターという賞をもらった。改良区は大津町と菊陽町にまたがっている。受益面積は1670ヘクタールあり、そのうち1242ヘクタールが水田だ。組合員は2043人。取水施設としてダム1カ所、白川から水を取り入れる堰である頭首工が4つ、揚水施設を31か所に持つ。上井手用水は清正公がつくり、現在も使っている。
水循環型営農推進運動を展開している。この地域の特異な地質を使ったもので、受益地の下に地下水プールがあり、そこから熊本市街地へ流れていくことが分かった。受益地域は阿蘇山の4回の噴火で形成されたことから、水が浸透しやすい地層になっており、下流域の水瓶となっている。その地下水の流れが噴出するのが江津湖だ。昭和35年には日量100万トン湧水があったが、今は40万トン。都市化と水稲の生産調整で涵養域が減少したことが原因だ。減反率は50%を超えている。水田に水を張らなければ地下水の涵養はできないが、稲を植えなければ水を張る必要はない。
平成15年に水循環型営農推進協議会を立ち上げた。連作被害防止、線虫駆除、土壌機能の維持回復を目的に水を張るようにした。「転作作物の植え付け前後に水を張って下さい」と組合員にお願いしている。6月に麦を刈り取った後、1ヶ月水を張り、水を抜き、7月に大豆を植えるようなイメージだ。熊本市、ソニー、果実連 化地研、山内本店が協力金を協議会に払ってくれており、これを水張りの手間賃として農家に配分している。東海大学生産工学部、九州沖縄農業研究センターとも減水量などの調査をして、科学的な知見も集めている。その結果、水張り事業を始めた平成16年は873万トンだった涵養水量は、平成23年には1888万トンまで増えた。これは熊本市民が使う70日分の水にあたる。
この他、田んぼの学校もしており、農業体験に合わせ、地下水の学習もしている。また、阿蘇山の黒川・白川の上流域、白川の中流域、下流域にあった3つの流域協議会をつなぐ黒川・白川河川流域水土里ネットワークも立ち上げた。ネットワークは毎年2000本の広葉樹を植えている。6年間で1万2000本植えた。地下水を育んだ田で、減農薬で栽培した米を商標登録して「水の恵み」というブランド米として売っているが、なかなか進んでいない。ウォーターオフセットは、お茶碗1杯で1500リットルの水を涵養したことになる計算なので、地下水の消費者に農産物を購入してもらうことで、地下水涵養に参加してもらう試みだ。
ここでも質疑をしました。以下はその概略です。
Q 白川で取水する間は下流域の流水量が減少しないか。 内水面漁協との関係は
A 農業用水として400年前から取水しているので慣行水利権として取水している。内水面漁協は白川にもある。渇水時は下流域では足りなくなるので、下流の協議会や内水面漁協から要請があれば水を流す。過去3回あった。
Q 水の管理は国の補助事業か
A 原資は熊本市と企業。国も県もお金は出さない。地下水財団は、水田を使った涵養を、ここをモデルとしてやりたいという考えをお持ちのようだ。ここのようなザル田ではなければ涵養効果は少ない。
Q 組合員に支払われる協力金は
A 1000平方メートル(1反)で、水張り1ヶ月で11000円、2ヶ月で16500円、3ヶ月22000円。
Q 平均農地面積は
A 平均0.8ヘクタール
Q 1日100㎜の減水だと水が大量にいるのではないか。
A 上井出用水で370ヘクタールに給水しており、毎秒10トンの水を取水している。田植え時は代掻きを念入りにするようお願いしているし、水張りでも1回は代掻きくださいとしている。代掻きをすると減水が少なくなる。それでも、水がすくない渇水のときは、田植えを優先し、水張りを後回しにしている
Q 水張りの効果は
A 1カ月張れば線虫はほとんど駆除できる。白川の水はミネラル分をたくさん含んでいるので、農薬も少なくて済む。
Q 農業用水の維持経費は
A 約5100万円
Q 用水路の整備は
A 用水路は護岸だけブロック積みしているが、底板はそのままに。水が浸透させていくようにしている。
Q ボランティアは
A 植林は孫の代に地下水を育んでもらえればというくらいの気持ちでやっている。参加は5、600人
Q 植林はどんな土地
A 酪農家の採草地だった。底地は阿蘇市で、入会権が成立してきたが使わなくなったので、阿蘇市から20年間借りることにした。傾斜地で使いにくい。その前は原野だった。
Q 水の恵みの価格は
A 水のキロ360円
Q 企業が協力するメリット。
A ソニーが最初に参入した。CSR。今は地元の農家と直接契約して、1500ヘクタールで田植え、稲刈りしてマスコミに乗る。PRするノウハウがない。
これで福祉生活病院委員会の今回の調査は終わりです。来週は県西部に出かけ、大口揚水事業者や地下水条例を制定した町村と意見交換をする予定です。熊本駅は新幹線の開通に合わせて昨年、新築されました。
街に活気がありました。新幹線開通の影響だそうです。1月に訪問した鹿児島もそうですが、新幹線の建設が駅新築や駅周辺での再開発などを生み、公共工事が景気の牽引車になっている感じがしました。
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