すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

県外調査1日目(熊本・水保全条例調査②熊本大学大学院)

2012年11月05日 | 日記

 次に訪れたのは熊本大学大学院です。自然科学研究科教授で日本地下水学会理事でもある嶋田純先生からお話を伺いました。以下は嶋田先生のお話です。

 

 地下水を管理する仕組みでは熊本が一番進んでいると思う。今日は、どういう仕組みで地下水を管理しようしているか説明したい。世界的な視野で考えると、自然に地下水が涵養できるモンスーンアジアは限られた地域で、日本が発信していくことで先行事例になって欲しいと思っている。

 熊本は市民の地下水への関心が高い。江津湖の水が枯れないようにしたいとみんな思っている。日本全体では地下水は需要の13%でしかないが、持続的利用を求めて公水的管理の動きが出始めた。熊本の地下水は阿蘇から白川が流れ出て有明海に入る。熊本市が最大ユーザだが、涵養域は別の町だ。よその町を取り込んで協力体制を行政管理域を超えて組んだところに熊本の特徴がある。それをオーソライズするのが県の取り組みであり、今回改正された条例となる。

 熊本では4つの火山性の地層がある。一番古いものは25万年前のもので、一番新しいのは阿蘇のカルデラを形成した9万年前のものだ。火山性の堆積物はきつい勾配で分布している。だいたい1/100の勾配だ。普通は1/1000。雨量が大きく、勾配が強いので時間的に早く影響ができることから、研究対象としてはおもしろい。地層を上から見ると第一帯水層、難透水層、第二帯水層と三層構造になっている。ところが、菊池台地(白川中流域)は、はなぶさ層、ふた層の間に広がっているが、ここは難透水層がない地層が形成されて、地表からそのまま地下へ浸透するので、地下水涵養域になっている。この地域では100本くらい観測井戸があるが10~20メートルの水位変化をしている。安定同位体の分布を見ると、地下水プールから江津湖に向かって流れていることがわかる。農政局、市水道局が調査をして流動の仕組みがわかってきた。20年くらい経年変化を調べている。

 水位は上流域では5メートルくらい低下してきた。下流もさがってきている。江津湖の湧水量は日量40万トンを下回った。1950年代には89万トンあった。水の汲み上げ量は、水道はじわっと増えているが、農業用水、工業用水は減ってきた。その結果、全体としては減っている。だから、水位の低下は汲み上げすぎが原因ではない。都市化の進展で、涵養域が減ったことと、涵養域で水田の生産調整したことが原因だ。農地は1930年代に比べると2002年には半分になった。白川中流域の減水深は100MM~200MM。全国平均は10MM~15MM。じゃじゃ漏れの状態といえる。ここで水を涵養してきたが、それができなくなったから、水位が低下したと考えている。

 それで、水田を復活できないかと考え、水張り事業が始まった。熊本市や企業等でお金を集めて、白川中流域の営農者にばらまく。行政境界を越えた地下水管理が必要になった。しかし、スーダンで涵養してエジプトで消費するように、国境を越えた管理もある世界にはある。

 水張り事業は転作された水田に水を張ると、1ヶ月で11000円/10aの補助金を出すというものだ。白川中流域低地の1500ヘクタールでの涵養量は、第二帯水層の40%をしめている。そこで、シナリオを4つ作ってシュミレーションしてみた。シナリオ1(清正時代以前)は206万トン、シナリオ2(水田が多かった時代)は279万トン、シナリオ3(涵養事業着手前)は264万トン、シナリオ4(現在)275万トンと涵養量は変化した。2004年に比べ2011年に右上がりになった。

  条例改正し、取水許可制を導入し、涵養をその条件にした。熊本地域では19平方センチ(直径5センチ)以上は許可制だ。量水器の設置、涵養対策の実施も義務で、希望揚水量の10%相当量の涵養対策を義務づけた。事業者が自分の土地で涵養できない場合は、地下水財団に揚水量に比例した負担金を支払ってもらう。企業や市民に規制をかけようとしたが、反対論はなかった。

 

  嶋田先生は質問にも、素人でもわかるように丁寧に答えていただきました。以下は嶋田先生との質疑の概略です

Q 降雪は涵養に役立つのか

A 融雪水はゆっくり溶けるので、川に出るよりも涵養効果はある。

Q どこの水田でも事業は有効か

A 減水漏が大きいところでやらないといけない。加えて地下水の流動を押さえないと意味がない。

Q 川の流量と地下水量の関係で言えることは

A 白川の流量が増えたが、その理由は水田で水を使わなくなったからと考える

Q 地下水の涵養量と取水量、地下水流がわかないと管理できない。大山山麓500平方キロメートルではどれくらいの期間と費用をかければ把握することができるか

A 難しい問題。調査のレベルの問題でもある。ボーリングが高額ならそれに替わる電磁探査、電気探査といった方法もある。しかし、地下水の器がどうなっていなかわからないと管理は難しいので、地下水管理のためには実施しなければならない。

Q 下流のわき水の調査が有効では

A ひとつの方法ではある。ただし、わき水は雨の量でも変化するので、経年調査をする必要がある。

Q 大山山麓では12月から3月まで雪がある。540ヘクタールの自然林があるので涵養効果があるのでは

A あります。それは地下水にとってはいい環境だ。観測井の示す水位変化をモデルとして、試行錯誤をすることも地下水を考える上では一案だ。

Q 雪の件だが、地下水量や涵養量を弾き出す計算式はあるか

A 非常に難しい。それぞれの地域に合わせたモデルで計算しないといけない。川の流量でもあれば計算できる一助にはなる。

Q 鳥取では大山町が条例を作ったが、先生の話では行政区域を越えて大山町以外にも影響があることになる。そういった場合、条例が競合することになるが、どう考えればいいのか。

A より厳しい方の条例で縛っていくことになる。

Q 条例を見て頂けましたでしょうか。ご意見は

A 基本的には届け出制をして、基礎データを増やしていく、この条例のやり方はいいのではないか。どこがどれくらい地下水を使っているか掌握していることもできる。地下水の状況が把握できていないのであれば、いますぐ許可制は無理だと思う。

Q 涵養で大事なことは

A 土地利用をどうするかだ。山をどう利用するかが地下水には意味が大きい。

Q 地下水の流動などがわかっていないので、地下水を採取している事業所の周辺でのモニタリングを条例で事業者に義務づけてみてはどうか

A 揚水量を正確に計ることの方が客観的な情報としては重要。どこでボーリングするかは難しい問題だ。

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