高校以来の友人の話です。Mちゃんには当時からつきあっている彼氏牛蒡君がいました。
牛蒡君は、目立たない地味な子だけど真面目でMちゃんをとても大切にしていて2人は
お似合いにみえました。8年以上つきあって婚約もしていましたが、Mちゃんは仕事先で出会った
魅力的な艶玉君にぞっこんになり、牛蒡君との婚約を破棄して艶玉君と結婚しました。
VS
牛蒡君は「俺たちの8年は何だったの?」「もう誰も信じられない」と精神を病みました。
結婚式にも行ったし、新居の中古建売住宅にも呼ばれましたがとても幸せそうでした。
玄関や寝室に、写真や、「出会えたことに、ありがとう」と書かれた紙を縁取った♡型のフレームが飾ってありました。
Mちゃんのデレデレったらすごかったです。「ねぇ、艶玉君って、すごく色っぽいと思わない?」と幸せ満点の笑みで
訊かれ、私は「うん、そうだね」って言いました。たしかに彼は、魅力を発揮していましたから。
でも私は「艶玉君より牛蒡君の方がずっと素敵なのに」と思いました。物静かなはにかみやの少年牛蒡君と違って
艶玉君は私に「自分を先生と呼んで助言を仰ぐ人達がいる」とか言って、自分が人より優れたただならぬ人物であると
懸命に知らせようとしました。内容の希薄な話を、神妙な感じでもったいつけて語る癖もありました。
その感想は彼にぞっこんで幸せ絶頂のMちゃんには言えませんでした。彼女の長い地獄の結婚生活が始まりました。外面が最高の、DVでした。
「別れて欲しいと友人として思う」と伝えましたが、彼女は彼を庇い「彼は自分がいないとだめ、私が見放したら彼は終わり」
と言って別れずに何年も耐え続けました。私はいつも同じこと(別れろ)しか言わないのに、彼女は私に
ちょくちょく会いにきました。不思議でした。別れないけど、私に言って欲しいみたいと思いました。
私はとうとうある時、「艶玉君に執着するのは、もしかして牛蒡君との婚約を解消してひどい人生になった
と認めたくないから?」という内容のことを訊きました。彼女はくすっと笑って「違うよ」と言いました。
牛蒡君のことなんか全く意識になく忘れていたそうで、彼女の生活とは無関係でした。
「ローンもあるし」と言ってました。あの中古建売は、たしかに夢のような新居だったのですが…。
玄関は吹き抜けで高い所の窓から光が降りてきて、ダイニングルームの裏にはウッドバルコニーがあって。
キッチンも日当たりよくて素敵でした。
♪君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた 引き止めた僕を君は振り払った遠い夜
随分経ってから彼女は離婚しました。「本当によかった。」と2人言いました。
♪ここにいるよ 愛はまだ ここにいるよ いつまでも♪
牛蒡君は他の女性と結婚して子供と暮らしています。
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魅力には2通りあって、ニスで艶つけたような魅力と、内面から出てくる魅力です。
毒りんごの異様に艶々した魅力と、なんかどこか魅かれるというのと。
見せる為のものか、生き方からさりげなく出てきたものかの違いだと思います。
Don't be misled by gloss.
後者との出会いには、ふわっとした風が漂います。そういうのが、いいですね…
(余計なことを書いてすみませんでした)
中島みゆきさんっていいですよね、大好きです…
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錯覚の蜜②に続く。