社殿正面(方角は北東にあたる、火元の方角になる)
社殿
道祖神祭りで焼かれる社殿は、真ん中に1本、囲むように4本の御神木が建てられる。この御神木は、ゲレンデの上の上ノ平において4月のうちに選んでおき、10月に伐採する。このごろは国有林にブナの木が多いので、営林署の許可を得て伐採するという。伐採した木はゲレンデの上のところに2本、道祖神場に3本引っ張ってきて置いておく。1月の13日になると42歳と25歳の厄年の人たちによって、ゲレンデの上まで曳き出しておいた御神木を道祖神場まで曳き出す。これを御神木曳きと言っている。約2キロほどの距離を3時間ほどかけて曳きだすという。翌14日にこの御神木を建て、社殿がある程度完成するまでどんなに夜遅くなろうと造り続ける。そして15日の朝に化粧をして社殿を完成させ、午前中のうちに中に入れるボヤを用意したりする。
御神木は社殿から飛び出ること社殿の高さ以上あるから15メートル以上あるだろうか。社殿そのものの高さは7メートルほど。5層に桁が渡されるが、上に行くほど桁は長くなり、最上桁は8メートルほどもある。その上にボヤが積まれ、社殿上の広さは40畳ほどにもなるという。社殿造営は棟梁の指揮のもとで行われるが、危険を伴うので造営に関わる人々は造営中は酒が禁じられるという。社殿造営については「野沢温泉の道祖神祭り」(長野デザインセンター 2002年)に次のように記されている。
作業は、まず社殿の柱になる御神木を1.8メートル四方の隅と中央に立てる。柱の先は尖らせ、2メートルぐらい上がったところに十文字にテコを結びつけ、胴突き歌にあわせて柱を土の中まで突き立てる。中央の柱の周囲に燃え草、ボヤ(枝木)などが固く縛り付けられる。次に高さ2.7メートルの位置から桁を組み垂木をいれ舟型に5段に組み上げる。一番上に厚くボヤを積み、その上に各戸から出された正月飾りの松を敷きつめる。最後に火祭りの攻防で使用する火付け用のオンガラ(麻稈)も載せておく。舟形に組み上げた周りは、注連縄などで飾られ社殿が完成する。
社殿は釘は使わず荒縄で縛り上げて造られる。今は5段の社殿が造られるが、過去には7段のものも造られた。すべての作業を執り行うのはサンヤンコウ(三夜講)の男たちであるが、3年間続けて担い、3年続けるとそっくり構成員が変わる。その間に15段になれば良いと言われるので、5段×3年というわけなのだが、7段の年があると最後の年は3段でも良いのだという。ところが7段のものを造るには人数が多くないとできない。したがって慣れていない最初の年に7段で造るのは難しいというわけだ。7段の社殿を造るには3倍もの材料が必要だという。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます