昨年も記したが、今年も今日ホンヤリだった。公民館分館役員を仰せつかった昨年から、久方ぶりにホンヤリに参加している。かつては小学校のPTAの方たちで準備をしていたが、子どもたちが少なくなって分館役員も手伝っている。とはいえコロナ禍もあるのだろうが、松飾りもだいぶ少なくなった。あるだけの飾りでホンヤリの櫓を組んでも、小さなもの。適当に円錐状に積み上げただけのものだ。やはり目立つのはダルマである。依り代的存在ともいえよう。
来月の民俗の会例会では高遠のダルマ市を訪れる。明治時代に始まったものだからそれほど古いものではないし、あまり記述されたものもないため、あっさりと紹介するくらいしかできないが、そんなこともあってダルマを見るたびに情報を集めている。昨日の南宮神社でもダルマを販売していたが、販売されていたのは松本市里山辺の布野恵だるま店だった。製造もするがこうして露店を出して販売もしている。高遠だるま市にも販売に来ると言っていた。いほゆる名前入りのダルマが予約で置かれていたが、毎年注文をもらってこの日持ってくるのだという。生地は高崎から仕入れていて、仕上げを自分の所でやっているという。ちなみに松本にはもう1社ダルマ製造販売をしている会社があるという。
さて、ホンヤリに掲げられたダルマを見ていて、目が入れてないダルマがあった。もらったけれどそもそもダルマをどのように扱ってよいか分からなかったのか、あるいは不要だったので押し入れにでも入れてあったのか…。このあたりのダルマは、ほとんど「福ダルマ」というやつで、おそらく高崎系のものがほとんどだろう。そもそもこのあたりの人がダルマを手に入れる方法は、かつては農協の「初貯金」だった。わたしも子どものころ、ダルマ欲しさに貯金に行ったものだ。当時いくら貯金したらそれがもらえたのか記憶にはないが、ホンヤリに来ていた同じ分館の役員さんに元農協職員の方がいて聞いてみた。すると今は10万円の定期預金をするとダルマがもらえるのだという。そして「初貯金」とは言わず、「ダルマ貯金」と言うらしい。ということで県内の同じような貯金について検索してみると、やはり農協の貯金が該当する。しかし、どこでもやっているのかどうかははっきりしなかった。ちなみに今年はJAながのでは「福だるま貯金」と称し12月1日から1月13日の間実施されていて、ダルマがもらえるには30万円しなくてはならない。またJA松本ハイランドでは同じく「福だるま貯金」と称し1月4日にやっていることはわかったが、期間がきっとあるのだろう。金額は20万円だという。今春の情報は加えてJAみなみ信州くらいだったが、過去の情報は県内の各所のものが検索された。JAみなみ信州は「だるま定期預金」と称し12月15日から1月7日まで実施されていて、金額は10万円だという。金額の違いが大きいがもらえるダルマの大きさが違うのかもしれない。役員さんが言うにはJA上伊那でも「ダルマ貯金」と称して実施していて、金額はやはり10万円だという。役員さんはJA上伊那の職員だった方。上伊那とみなみ信州の両方に貯金をしていて、両方からダルマをもらったという。同じ10万円だが、上伊那の方がダルマの大きさは大きかったとも。役員さんが飯島支所長をされていた際の記憶では、500個くらいダルマを用意したという。飯島というと世帯数にして3700戸ほど。14パーセントほどとなる。おそらく昔はもっとたくさん用意されただろう。こうしてみてくると、金額が少額でももらえる伊那谷には、農協の初貯金で「ダルマをもらう」という意識が昔から強かったのではないかとうかがえる。さらにもっと言うと、そもそも「ダルマ貯金」なるもの、長野県内くらいしかヒットしない。ようは農協の貯金でダルマをプレゼントしするという習俗は長野県独自のものなのかもしれない。さらにもうひとつ。そもそもかつて「初貯金」と称したが、この「初貯金」という単語も、全国区ではないよう。長野県が色濃いという印象は、ネット上で検索してみて気がつく。せいぜい郵便局が全国展開しているくらいかもしれないが、それもあまりメジャーではない。
ということで、ほんやりに持ち込まれたダルマの多くは農協貯金のものと推察されるが、ダルマ本体を見ていて入手先が判明するものもある。ふたつほど背中に紙が貼られていて、「寶積山光前寺」という文字が見えた。販売する際にこうして背中に貼り紙のされている例がいくつか見え、大晦日に神社廻りをした際にも「五十鈴神社」のものをたくさん見かけた。駒ヶ根あたりではこうした貼り紙をする傾向があるようだ。
さて、雲ひとつない好天の下、今年も厄年の方によってホンヤリが点火された。厄落としだから厄年の方はミカンも配られた。そして、周囲のあちこちで煙が上る姿が望めた。
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