中国の第3列島線への進出(海上自衛隊コラム@2019/08/19)
・中国の海洋進出に対する近隣諸国の対応(「第3列島線」という用語や太平洋島嶼国への関与)
・2018-4 ニュージーランドのアーダーン首相1980-労働党(社会主義)
・太平洋島嶼国のバヌアツにおける中国による軍事化の可能性がある港湾開発に対し、軍事化反対の旨のコメントを表明
・バヌアツ、中国側は否定
・2018-6 フランスがインド洋・南太平洋地域への関与を続ける旨の主張をアジア安全保障会議で行った
・フランスは太平洋にニューカレドニアや仏領ポリネシアなど海外領土を抱え仏軍も常駐させている
・中国の海洋進出や、太平洋島嶼国への影響力を拡大する動きに警戒を強めている
・2018年には独自のインド太平洋戦略を策定
・欧州連合(EU)議長国として、EU諸国やインド太平洋地域の各国を招いた閣僚級会合をパリで開催する計画
・2018-11 オーストラリアのモリソン首相が太平洋島嶼国のソロモン諸島を訪問し、今後10年間で188億円もの経済支援を行うと発表
・オーストラリアは太平洋諸国における関与を強化し、新しい次元へと高める
・オーストラリアには、太平洋の隣国と協力してきた長い歴史がある
・安心、安定、政治的主権が保証された太平洋地域を築くために、太平洋諸島のパートナー国との協力を願っている
・2017年外交政策白書:太平洋諸島地域の安定と発展は重要で、いかなる国家も独力で課題に立ち向かうことはできない
・オーストラリア国防軍は、安全保障上の課題に共に対処するため、相互運用性を構築すべくパートナー国と協力を行う
・治安・平和維持訓練や配属前の準備を行う地域の拠点へと再開発する点で、フィジーと合意している
・太平洋諸国と協議の上、太平洋治安部隊代表合同会議を毎年開催する
・政府は、太平洋諸島地域のためにオーストラリア・インフラ融資ファシリティを設立する--20億豪ドル規模
これら諸国の動きは、中国の太平洋島嶼国への影響力拡大に対する警戒心の表れ
中国の太平洋島嶼国への影響力拡大を象徴する政治、経済と軍事を絡めた活動状況
・2000迄 中国と太平洋島嶼国との公的な関係は活発ではなかった
・2006 中国は太平洋島嶼国との間で「中国・太平洋諸国経済発展フォーラム」を初めて開催
・2007 05月 :QUAD設立(日米豪印四か国戦略対話) :安倍晋三首相が提唱
・2013 第2回同フォーラム開催以降、政治的な動きと軌を一にして急速に太平洋島嶼国との交流を拡大
・2014 11月 :習近平国家主席がフィジーを訪問し、国交のある太平洋島嶼国8か国との首脳会談を実施
・2017 03月 :「一帯一路国際協力サミット」にフィジーのバイニマラマ首相を招待
・太平洋島嶼国への経済援助も急増
中国援助 :約18億ドル 2006年から2016年まで
オーストラリア援助:約77億ドル
日本援助 :約12億ドル
アメリカ援助 :約19億ドル
・中国による南太平洋海域での海軍所属艦艇の活動
満載排水量25,000トンの衛星追跡兼弾道弾観測艦「遠望6号」などを南太平洋海域で行動
2013年までにフィジーのスバ港に8回ほど寄港
2014年と2018年には、満載排水量23,000トンの「アンウェイ」級病院船を南太平洋海域で行動
フィジーのスバ港、パプア・ニューギニアのポート・モレスビー港等において医療活動を実施
これらの艦艇は、純粋な戦闘艦ではない補助艦
病院船の行動自体は平和的活動として受け取れるが、中国の軍事的進出と見ることもできる
・中国による太平洋島嶼国への政治と経済を複合した活動
パラオに対する中国人旅行客の渡航数は2015年だけで8万人余り
中国人旅行客による観光収入がパラオの政財界に大きな影響を与える状況
・2016年の台湾蔡英文政権誕生以降の中国
パラオ等、台湾との外交関係を維持する太平洋島嶼国への外交攻勢を強める
2017年 パラオ政府は中国人旅行客の渡航制限を実施 ----観光収入に依存していたパラオ経済は大きな打撃
中国が2国間の経済的関係を深化させた後に、政治、軍事活動を活発化させることは常套手段
・現在の太平洋島嶼国に対する日本の経済的影響力が低下
海上自衛隊が現在実施している遠洋航海やアメリカ・オーストラリア等と連携した行動(パシフィック・パートナーシップ等)継続必要
太平洋島嶼国に対するプレゼンスを示し続けられるという観点から意義がある
現在実施している能力構築支援の枠組みでの巡視船艇の供与等を一歩進め
OPV(Offshore Patrol Vessels)等の哨戒艦艇の供与や訓練支援など、支援対象の拡大も考慮する必要がある
(以上は幹部学校運用研究部ロジスティクス研究室 石原明徳の見解)