村上海賊の娘、この物語は村上海賊の説明から始まる。ここで簡単に系図を紹介すると以下となる。村上水軍の祖は源頼信の次男・頼清が村上天皇の皇子・為平親王の子源憲定の娘 婿として村上姓を名乗ったという説があるが、平安時代に活躍した村上為国の弟・定国が保元の乱後に淡路島を経由して塩飽諸島に居を構え、その後越智大島移って伊予村上氏の祖となったという説が主流のようである。そして信濃村上氏である北畠師清の息子がそれぞれ因島、能島、来島水軍に枝分かれていったという。時代は流れ、この小説に描かれている時代は、村上水軍全盛期、織田信長が大坂本願寺と対峙していた1576年頃である。大坂本願寺というのは親鸞を祖とする一向宗の顕如を座主とした浄土真宗の勢力であり、織田信長が浄土真宗本願寺勢力、つまり一向宗に合戦を仕掛けたのが1570年であるから、それ以来6年も経過して今なお合戦は続いていたのである。これを石山合戦という。この時村上水軍の中でも能島水軍が圧倒的支配権を持っていた。能島村上水軍の当主は村上武吉、当時43歳である。また因島村上水軍の当主は村上吉充、来島村上水軍の当主は村上通康といって娘を能島村上水軍の当主村上武吉に嫁がせていた。年齢では村上通康が最年長であったがなにしろ57歳という高齢であるから息子に当主の座をゆすりたいところであったが息子はまだ19歳。かくして能島村上水軍の当主・村上武吉が村上水軍全体を取り纏めていたのである。さてこの小説での主役・海賊の娘というのは能島村上水軍の当主・村上武吉の娘なのである。名前は景。村上武吉には琴姫という娘がいるが、毛利家に嫁いでいて主人公ではない。しかし村上武吉には他に娘はいないはずである。さてこの娘は誰なのか。
源満仲━頼信┳頼義
┣頼清━仲宗┳惟清
┗頼季 ┣顕清┳宗清
┣仲清┣為国 ┳信国(木曾義仲側)
┗盛清┃(崇徳)┣泰遠
(配流)┃ ┣安信
┃ ┗明国
┃(伊予村上氏)
┣定国┳清長━□□□□━義弘┓
┗業国┗正季 ┃
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┗━━北畠親房 乃美宗勝の妹
┗北畠師清(信濃村上氏) ┣景隆
┣義顕:因島 ┏村上吉充?-? 青影城主
┃ ┗村上亮康?-1608
┣顕忠:能島 村上武吉1533-1604
┃ ┣元吉1553-1600
┃ ┣景
┃ ┣景親1558-1610
┃ ┣琴姫(養子:実父は村上通康)
┃ ┃┣秀元(毛利輝元養子 長府藩祖)
┃ (来島城主)┃毛利元清1551-1597(穂井田家)
┃ 村上通康┃
┃ 1519-1567┣娘
┗顕長:来島 ┣得居通幸1557-1594
┣来島通総1561-1597当主
┃・・村上吉継? 当主補佐 甘崎城本拠
河野通直の娘
武吉の小早