急流で有名な富士川のほとり。
旅の途中の芭蕉は、
3歳くらいの捨て子が泣いているのに出会い、
食べ物を与えて去る。
詠んだ句は
猿を聞く人 捨て子に秋の 風いかに
「いかにぞや、汝、父に悪(にく)まれたるか、
母にうとまれたるか。
父は汝を悪むにあらじ、母は汝をうとむにあらじ、
唯これ天にして、汝が性のつたなきを泣け。」
野ざらし紀行・富士川
何があったのだ。
おまえは父に憎まれたのか、母に疎まれたのか。
いや、父はおまえを憎んでいるのではない、
母はおまえを疎んでいるのではない。
これは天の定めであり、
自分の生まれつきの悪さを泣くしかない。
(誰にもどうしようもないのだ)