今回は最近特に注目の集まる福祉関係者の役割について考えてみます。
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日本の現代社会は、医療技術の急速な発達や社会保障制度の発展により高齢化が進み、13年後の2030年には団塊の世代が80歳代に達し、人口の3分の1が高齢者になるといわれています。この超高齢化社会と呼ばれる社会の変化の中で如何に人々が幸せを実現していくかが福祉関係者に与えられた大きな課題です。
人々の「幸せ」を実現するためには何が必要でしょうか。もちろん、人々の幸せを阻害する要因が貧困であれば、その人に健康で文化的な最低限の生活を営むための経済的支援、あるいは施設の提供などが有効でしょう。また、健康が問題であれば医療サービスが必要になります。しかし、人々の幸せを阻害するものは貧困や疾病だけではありません。
人は生きものとしてこの社会に生まれ、老い、そして死んでいきます。また、人は様々環境でいろいろな関係を持ちながら暮らしています。よく「人は関係の中で生きていく」といわれますが、実は人間の現実の存在は、哲学者マルティン・ブーバーが指摘したように「関係」そのものです。しかし、人々は現代社会の中でこの関係を忘れ、自己という個に閉ざされてしまうことがあります。この関係が失われている状態では、人々は孤独感や疎外感を感じ苦しみます。人々が本来の人間性を呼び起こし幸せになるためには、一人ひとりに真剣にかかわり人々の関係を回復することが必要です。
例えば、認知症の高齢者と地域社会や家族との関係を大切にして、高齢者が地域社会の中での役割を認識し、生きがいを感じながら暮すことは、その高齢者や家族だけではなく社会全体の本当の幸せにつながります。福祉関係者はプロとして、人々の関係を回復させるために行政や地域のNPO法人、医療機関や教育機関など様々な組織や専門職と連携し協力して社会全体の幸せを促進していくことが求められます。そして、このことが、現代社会における福祉関係者が果たすべき役割と考えます。