約2年の時を費やしての一大イベントがとりあえず終了しましたので、その足跡(そくせき)を残すため、ここに記すこととします。さらには、これから同じ志を持っている諸兄に対してのエールとなりえると考え、和気入道が手探りでやってきた小ネタを紹介するものであります。
多くの資格と同様に、現在の状況(学歴や職歴等)によってルートが異なります。エントリーするにあたり、まずは確認が必要です。和気の場合は学歴条項で学士を所持しており、「社会福祉士一般養成施設等」(1年以上)の修了が必須でした。
この歳になって勉学に勤しむことに躊躇はありありです。時間・費用・手間、過程を完遂できるか、試験に合格する勝算がたつのか、費用対効果は期待できるのか、などなど前向きにはなりにくい状況での判断となります。さらには実習というイベントも必須となります。1か月間もの長きにわたり、職場を離れる必要があるのです。
通学制は到底不可能なので、通信制のコースを探しました。調べ方があまり上手でなかったためか、なぜか山口県の学校しかヒットできませんでした。「教育訓練給付金(専門)」の対象講座で、愛媛もエリア内とのことで、連絡を取ったところ、愛媛での実習の実績がないため自分で実習先を探してほしいとのこと。それって、素人にできるん? とプランは暗礁に乗り上げてしまいました。
そうこうして頓挫しているうち、職場に来られたお客さんが幸運の女神? として和気の前に舞い降りたのでありました。偶然に和気入道の席で、その方は訊きたことがあるとおっしゃって、おもむろにテキストのようなものを開いて
「◆◆っていう職種の方はここにはいらっしゃるんです?」
「✖✖という方の仕事内容はどうなんですか?」
などと質問を浴びせてきたのであります。
業務外の内容であるため対応しなくてもいいのですが、まあなんかの勉強なのか真摯な態度だし、現場での確認は最も理に適っているし、忙しくないし、お相手さしあげることにしました。一通り質疑応答が繰り広げられ………………
「 で、なんのお勉強ですか?」
「社会福祉士の通信講座を受講しているんです」
「ん! どちらの学校なの?」
「(愛媛県の)☆☆市の▲▼です」
おお~、待ってたぜ! 細かいですが、風が吹くとはこのような現象を指します。
こちらのことはあまり開示したわけではないのですが、なぜか「がんばってください」と言って立ち去っていったのでした。屈託のない笑顔が印象的でしたが、それから二度と会うことはありませんでした。天に昇っていったのでしょうか? まあ、普通に徒歩でしたが。
資料を取り寄せ、検討しました。こちらは1年半で「教育訓練給付金(一般)」の対象講座でした。一般と専門では受講修了後に戻ってくるパーセンテージが20と40の違いがあります(試験の出題内容ですね)。スクーリングはどちらも複数回あり、それに伴う費用を勘案すると選択肢は決まってきました。かくして、女神の後輩となることに。
キャッシュレスが身上(哭)の和気入道としては、金策として教育ローンでも組んで修了と返済が同時に終わるくらいでいこうかなあ、と思案しておりました。ここで家人に相談したところ、家中からかき集め持たせてくれました。月賦やローンが嫌いとはいえ、子どものためではなく、親父のために学費を出すことになるとは………………。
ちなみに某金融機関窓口で学費を振り込んだ際に窓口で
「お子さんのですか?」
「いいえ、私のです」
「(一瞬の間があり)失礼しました」
ま、そう思うわな。
通信制でのお勉強は初めてで、感覚がピンと来ませんでしたね。大量のテキストや要綱が送られてきても、なんのアナウンスもなく、催促や指導もありません。放っておいたらそのまんまになりかねません。恐ろしいですね~。大学でも通信が最も困難であることは認識していましたが。レポートの締め切りとスクーリング、実習の手配なども含めて、時間はあるようで意外と余裕がない。「仕事」という最大の言い訳となる錦の御旗も使えません。
背水の陣とはまさにこのことで、今回のプロジェクトに関しては、
①仕事との(できる限りの)両立
②家のことをしない言い訳に(なるべく)しない
③(いろんな意味で)元を取る
などと独りでこっそり決めようかなあ~、と。西原理恵子画伯風に言いますと
博打 勉学は一本、泣くならやるな!
とにかく最大の敵は32本にもなる直筆!レポートの提出です。だいたい2カ月に4本ペースでの提出となります。これをいかにこなすか、が鍵となります。がむしゃらに取り組むのも大事ですが、細かい段取りが大きくモノを言うのであります。2週間に1本を仕上げるペースでいく必要がありました。振り返ると基本的にそのペースが守れたように思います。テーマによっては簡単に進まないこともありましたが、論文ではないんだ、エッセイ的でもいい、と言い聞かせて頭をひねったものです。指定テキストもあるのですが、まあなんとも…………………。解らないことが判らないまま記述されているところも多く、その完成度にビックリすることもたびたびでした。
大学以来の大量レポートのため、あの頃の悪しき慣習が顔を出そうとします。そう、いかに参考文献を引用して字数を稼ごうか、という悪癖であります。さすがに面白くないし、自分でも気分がすっきりしないので、なるべく自身の考えと表現を重んじることにしました。その方が字数も伸びます。書籍がダメならインターネット上から拾ってくる、ということは誰もが考えること。ネット上には有料でレポートをくれる? ような禁断の果実もありましたが、yahoo!知恵袋等には無数に「教えてください」が飛び交っています。学術論文も参考にしたのは少なくないですが、仰々しすぎてレポートには似つかわしくない大御所のは避けました。それにしても、検索している時間も意外ともったいない。
だいたいですが、2週間のうち、半分くらいかなあ、課題に対する構想を練る時期に当てます。テキストや文献に付箋を打ったり、論文等のPDFをibookに入れて持ち歩きます。仕事の合間や家族サービス中にも閲覧できますし。そして、文章構成をまったく気にせず、センテンスをどんどん打ち溜めていきます。なにも文頭から作ることもありません。センテンスの位置移動が重要で、順番をとっかえひっかえすることで、論点が絞れてきたり、結論がうっすらと湧現することにつながったのではないでしょうか。よく書けたと思ったセンテンスでも、果たす役割がなければ、遠慮なく削除します。
今回、最も威力を発揮したのは、wardとone driveのMicrosoft勢の活用でした。原稿用紙にペン書きするのですが、推敲と訂正などの段階ではデジタルの方が圧倒的に優位です。考えながらの執筆ですから、タイピングの速さはあまり関係ありません。
自宅では基本的にノートパソコンで作成します。和気殿はタッチ式キーボードでないと気が済まないというか、筆が進みません。one driveにあげて保存します。仕事には今回のために購入した秘密兵器、iPad air 2を持って行きます。cellularなので、昼休みなどにもonedriveにアクセスし加筆ができました。判らないことはネットで調べることもでき、大きな力になりました。pc単独では画面・アプリの切り替え、参照しながらの執筆には手間がかかるため、マルチ画面での作業は非常に快適であったと思います。
作成では、まず課題全文を入力します。それを見ながら文章を構築していくのです。解っているようでも、ドンドンと課題からずれていくことがありえます。難しい課題を煮え煮えになって完成させても、的外れになっては意味がありません。課題集の冊子もありますが、本編に載せてしまえば、いつでも確認できます。何十回も課題文を睨み付けながら、なんとか出題に応えられる文章を書くというより、組んでいくといった感じだったかも。そうして取りあえず所定の字数に近づき、レポートの態を為してきたら、課題文を消去します。字数は課題によって違いがありますが、おおむね2000字が基本となるので、細部をいじって揃えます。
和気入道は字は上手と言われるのですが、きれいに書くことができません(笑)。自筆が好きではないので、今回は小道具にこだわって、気分の悪くなる字面を少しでも和らげようと目論みました。これまでは全くこだわらなかったペンを慎重に選ぶことにしたのであります。そのころ、松山市南江戸に「文具生活」が新規オープンしました。ケースにある舶来以外各社のボールペンを試し書きしまくった結果、三菱鉛筆のjet streamシリーズの黒1色ステンレス筐体をチョイスしました。最も軽く書けそうであることが重要でした。適度な重さと滑らかなインクの出が決め手となりました。細さは0.38?の極細としました。ペンを握らず、持ち上げず、手首をこねくり回すことなく、力が要りません。
デジタルデータで完成させたものを見ながら推敲を兼ねて清書していきます。ペンが優秀で本当に力が要らず、ひたすら書き続けるのも疲れが溜まりにくかったように思います。ペン習字の練習よろしく楽しみながらやってたときもありました。書き損じは修正テープ使用が許されてましたので、ビュッと白くしてから書き込みます。この際にも、jetstreamは力が要らないため、それほど汚くならなかったんじゃないでしょうか。結局、原稿用紙は1枚のロスもありませんでした。文豪のように丸めて捨てることもありませんでしたね。
もう一つ、大事だったのは、取り組む時間をいかに捻出するか、ということです。いい意味で家族に邪魔されないようにしなければなりません。しかも和気宅には入道の占有スペースがなく、ダイニングテーブルでの作業となるため、どうしても単独になる時間が必要でした。そうなると夜遅いか、朝早いか、になります。和気入道は朝型であるため、異常に早い時間帯を作業時間に充てることとしました。我が家には専用の目覚ましとなるのがおります。それがこちら………………
和気入道宅の「花」でございます。まさに自走式目覚まし時計としての役割を果たし続けました。頼んでもないのに今も続けています。
和気入道の基本的生活リズムとして、職場から帰宅して夕食飲酒入浴を経て、20時くらいに寝ます。その後に花式目覚ましが起動します。うちの猫は洗面台に上がって蛇口から流れる水を飲む習慣があり、人の手が必要なのです。23時~1時くらいに一度起こされます。水飲み作業の傍ら、気が向いたら作業に取り掛かります。といっても1時間くらいで飲酒の後、再び寝ます。
そしてコアタイムが訪れます。3時~5時に花式目覚ましが再び起動します。水か餌を欲しがりますので、給餌とともに和気入道も活動を開始します。ルーティンとしては紅茶を飲みながら、ネットでメールとニュースをチェックしたりして頭がすっきりして気が向いてきたら、作業に取り掛かります。進捗は日によってまちまちですが、まあ締め切りに間に合えばいいのです。
自家用車通勤をしており、何度となく眠気に襲われることがありました。こんなんで死んだらシャレにならんわ! と大あくびを連発しながらハンドルを握ってました。意識が飛ぶことはありませんでしたが、ホントにきついときは車を停めて一呼吸置いてからの道のりとしました。
仕事が休みの日はそれなりに突っ込んで作業することになりますが、家族サービスや家事手伝いはなるべく避けないようにしたつもりではあります。家族は何も言いませんでしたが、家人の理解があってのことであります。
まあ、順調にいった最大の要因は、締め切りを過ぎるとペナルティとして1本につき、ン千円のお支払い条項が設定されてたことなんですけどね。結果的には何度か仕事を休んだこともありましたが、大きな穴を開けることなく、期限内に全て提出することができました。
提出後、忘れたころに採点されたレポートが郵送で返ってきます。意外と点数が低くて凹んでしまうこともありました。逆に高得点で返ってくると、うれしいものです。得意分野では高得点を狙ってみたりしました。これもモチベーション維持になったと思います。
反省点としては、学習効果がすこぶる低かったということであります。致し方ないのですが、課題提出が第一義になってしまい、試験勉強としてはほとんど機能しなかったですね~。そのため、試験勉強とはほとんど別物になってしまいました。