明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

ゴルフの解説者と会話能力

2017-06-25 21:15:00 | スポーツ・ゴルフ
ゴルフ解説者の出来不出来は、視聴者のストレスになることがある。説明を分かりやすくと本人は思っているのだろうが、話が長くてまだるっこしい場合が往々にしてあるのだ。それは一度にたくさんのことを言おうとして長くなる場合もあれば、複雑な事を丁寧に説明しようとするあまり長くなる場合もある。要は、言わんとする事が「よく整理されていない」のである。解説者は自分の言わんとすることをただ「次々と思うつくままに喋る」ことよりも、順序建てて正確に話そうとする場合のほうが「余計に分かりにくくなる」場合があると言いたい。これは今回のテレビ解説者とオンコースアナライザーの二人についての印象であるが、人に何か自分の考えなり状況の説明なりを行う人全般に言える事なので、ちょっと踏み込んで私の考えを述べてみたい(この段階で既に自分で自分の言っている過ちを犯しているかも知れないが、話が進まないのでその点はお許しを頂きたい。)

まず、説明するのは「聞いている人」のためであるということをよく考えなければいけない。よって、聞いている人が「気持ち良く理解する」ことが第一となる。ここで気持ち良くとはどういう事かと言うと、「結論ー疑問ー説明ー理解」という解説の流れである。これを説明から入ったのでは、結論に至るまでの間中視聴者は「ずっと疑問の闇のなか」に取り残されたままである。気持ち良くとは、視聴者の気持ちに寄り添った展開を心掛ける事に他ならない。では分かり易く例をあげて説明しよう。

グリーンの起伏形状がパッティングのラインに大きく影響するのはゴルフを見ている殆どの人が知っている事である。解説者は選手のボールがグリーンのどこに落ちたかで「パットが易しかったり難しかったりする」ことを視聴者に伝えようとする。これは視聴者がラインの難易度を知っていれば、さらにゲームを面白く見られ、選手の心理を伺い知ることで一層スリリングな試合を楽しめるのだ。ところが質の悪い解説者に当たると「パットの難易度がどの位のレベルなのか」という肝心の事をなかなか言わずに「ここにコブがあり、ここは尾根になっていて、云々」と散々グリーンの形状を講釈して時間が過ぎてしまい、選手がサッサとパッティングしてしまうという本末転倒の事態がよく起こるのだ。

私が思う理想的な解説というのは、次のような構成で話が展開するのがベストである。

1 「誰々さんとしては、ここは〇〇に打ちたいですね」と、選手の目線を推測して「選手が何を考えているか」を臨場感たっぷりに伝えること。試合が煮詰まって来て優勝するかしないかの当落線上にいる選手達は、当然いろんなことを考える。だから選手でなければ分からないこともあれば、傍目に見ると「何やってるんだろう」というように逆に選手が分かってない事も起こり得る。そのような選手心理の機微を自分の体験を含めて解説してくれると、視聴者は「なるほど」となるのである。それを「トップと一打差だからバーディ取りたいですね」などと、テレビを見ていれば馬鹿でもチョンでもわかるようなことを平気で言ってお茶を濁す解説者がいるからゴルフファンのおじさんは困るのだ。例えば「このホールはパーで切り抜けて、次のパー4で勝負です」とかいうような、此処ぞという「勝負のアヤ」を出来れば聞きたいものである。

2 「あと一転がりでしたね」などと言って、惜しいパッティングを褒めたりしてお茶を濁すのは誰でも出来る。解説者であるなら試合状況・スコアの差などを総合的に判断して、選手が打ったパットの「重み」を解説しなくては何のための解説者なのかわからない。右に外れたとかオーバーしただのカップに蹴られただの、そんなことは見てれば「わかる」っちゅーの! また或いは「スピンがかかり過ぎましたね」と分かった風な事を言う解説者が多いが、どうやってスピンをかけるのかとか、また「スピンをかけないで打つか」という技術論を説明してくれる解説者には、お目にかかったことが無い。大体選手はスピンがかかることはある程度予想して打っている。それが「予想外にかかったり、かからなかったり」するから難しいのである。もちろん「打ち方によってコントロールしている」のである。米ツアーでの松山英樹の打球なんか見てると、スピンコントロールがきちんとされているのがわかる。日本女子ツアーもプロであるから出来る出来ないは差があるとしても、上位の選手ならやってくれなくてはウソなのだ。だから「かからなかった」のなら「何故かからなかったのか」を解説して欲しいのである。テレビを見ていてはわからない技術的な事、それを説明するために解説者がいるのではないのだろうか。

3 選手のスイングをスローで解説する場面があって、とてもアマチュアの役に立っているのだが、「頭が全く動きませんね」などと脳天気な解説をするから、私などの研究熱心な視聴者はほとほと嫌になってしまう。プロだから頭が動かない、では参考にならないのだ。実はインパクト姿勢のイメージをそれぞれ選手は持っている筈なのだが、それは個人差があって十人十色である。その中でも、改善する箇所は個人個人必ずあるはずで、どこをどういう風に改善しようとしているのか、それが聞きたいのである。ポイントは身体と手の動きに尽きる。もちろん選手にも分からない事があって、だからコーチがいるのだが、解説者も今まで以上にもっと勉強して「この選手の右手の角度は、インパクトでもう少し曲げたままで打てるともっと飛びますね」とか言えるようになると、聞いている視聴者も「なるほど」となる。そこで「なぜ曲がったままだと飛ぶのか」という風に技術説明が理論的に深まり、この解説者は素晴らしいとなるのである。解説者はもっと勉強しなくてはならない。

以上、いくつか書き出して見たが、まだまだ言いたいことは山ほどある。要は「結論を言って」視聴者の興味を引き、疑問が湧いてきたところで「ズバッと」解説してくれる人が気持ち良い解説者なのである。視聴者は疑問を持った段階ですぐ解説して貰うので、ストレスなく「なるほど」となる。そのテンポが試合を盛り上げることに繋がるのである。私の考えでは、テンポよく的確な情報を試合の流れを邪魔せずに、しかもジョークを適度に織り混ぜて面白く楽しくて参考になる解説者は、今のところ岡本綾子だけである。今、選手にとって何が大事かという分析力、何故そうなのかという論理力、そしてピタッと来る単語を淀みなく言える表現力、さらには試合の状況に合わせたドラマチックなストーリーの構成力。たかがゴルフの解説者ではあるが、その説明する技術は「すべての人に共通の会話力」と言ったものに通じるものがあると私は思っている。

大事なことは「とにかく結論」である。結論をまず真っ先に言わなければ、会話は何も起こらない。これは全ての会話の「基本である」。

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