1、事態の分析
マスコミに報道されている情報を見ているとロシアの一方的な侵略とされているが、ではゼレンスキー大統領のウクライナ政府は「何を守ろうとして抵抗しているのか」、今一つ見えてこない。ロシアの要求は、① ウクライナの中立非武装と NATO 非拡大の確約、② ウクライナ政府からの極右グループの排除、③ クリミアのロシア帰属の国際的な承認、以上3点である。ウクライナ・ゼレンスキー大統領は、ロシアの悪辣な侵攻で市民が多数死傷していて大変な事態になっているから助けてくれと言っているわけだが、話し合いによる解決の糸口は見つかっていない。そもそも喧嘩の原因が「ロシア側の一方的な領土拡張」であるならば、ウクライナの戦いは降伏か死か、のどちらかである。しかし、ロシアが要求している3点のうち、① 中立と非武装及び NATO 非拡大、② 極右グループの排除、に関しては合意できる筈ではないか。ウクライナにとってみても、今までのロシアとの密接な関係から考えて「ロシアを敵国と考え」て NATO の一員になることは、国民感情から考えても「無理がある」のではないかと思う。
何よりウクライナはロシアと同じコーカシアン民族であり、1991年にソビエトが崩壊した時に NATO に入らないという条件で独立を認めた経緯があるのだ。元々はレーニンが、旧ロシアの皇帝支配に対抗する勢力として、ウクライナを民族独立させた。ところが2014年に「マイダン」のクーデターで「新米政権」が出来上がり、それ以来両者は対立し続けている(この新米政権が曲者である)。つまりウクライナは元々ロシアの「身内」なのに、裏切って敵方の英米側に寝返った「獅子身中の虫」というわけだ。だからロシアはどんなに英米から制裁を受けても、「絶対にウクライナを手放さない覚悟」を持って今回侵攻したとも考えられる。「ウクライナよ目を覚ませ!、お前は一体どっちの味方なんだ?」というわけである。マスコミは意外とウクライナが各地で強硬に抵抗し、善戦しているためにロシアが責めあぐねているように報道している。だが、ロシアとウクライナの戦力の違いを考えれば、ロシアは余り全面的な攻撃を行わず、慎重に事を進めていて、むしろ「兵糧攻め」に徹しているものと思われる。プーチンがトルコのエルドアンに戦闘は計画通り順調に進んでいると言ったそうだが、焦ってるようには見えなかった。
これに対して世界はどういう反応をしているかと言えば、英米とEUは、軍事的には及び腰だが、金融制裁としてロシア資産凍結と SWIFT からの排除を発動した。石油・天然ガスの禁輸も検討していると言う。つまり、ロシアを自由貿易世界から「完全に締め出す」作戦である。しかしロシアが「不退転の決意」を持ってウクライナに侵攻しているとすれば、結果としてロシアが「自由社会に戻ってくる」道は、完全に断たれたものと思わざるを得ない。つまり英米ヨーロッパ文化圏からの「退出」を意味する。ではその他の国はどういう態度でこの問題を見ているかというと、中国やインドの BRICS 諸国は「ロシア制裁に不参加」を表明しているらしいのだ。これはどうしたことだろう?
今やロシアの石油・ガスやウクライナの小麦など、世界のコモディティの大きな割合を占めている輸出国を無視して取引を除外することは、「自国の経済」を考えると簡単には決められないのだろう。それは日本も同じである。特に「原油の産出国」はロシア・イランの影響下の「中東に密集して」いるから、自由主義世界の今後の「資源確保」には重大な影響が出ると考えられるのだ。この状況は当然アメリカは分かっていた筈であり、それは24日に侵攻が始まる前から「ロシアと協議をしていれば」、問題は戦闘行為などせずとも解決できた可能性が大である。つまり、ルガンスク・ドネツク両州での「内戦」の解決と、クリミア(ロシア人が多数住んでいる)地域の独立を認める方向での協議である。これはウクライナ側としても、火種を国内に残すより「よっぽどスマートな解決」で、国家としても損が無い取引では無いだろうか(損が無いかどうかは、その地域の民衆が決めるべきだと私は考えている)。
とにかく両者の意見は「それほど隔たっている」とは思えない。ただ、ウクライナが「 NATO に参加する」ということを除けば、である。NATO はロシアを敵とする「防衛組織」だ。防衛と書いたが実際はどんどん「東側に伸びて拡大している」。マスコミは報道していないが、実際は「欧米側がロシアを追い詰めている」のである。第二次大戦時の日本包囲網のように、だ。それに対抗できなくなった日本はとうとう、我慢できなくなって戦争に踏み切り、結局は敗戦・全面降伏したのは記憶に新しい。その後、日本経済は目覚ましい回復を見せて、一時は「世界第二の経済大国」になって我が世の春を謳歌した。ところが85年のプラザ合意によって失速し、それ以降30年間にわたって「デフレ圧力」が払拭できずに低迷して今に至っている。「出過ぎた杭は打たれる」といういい例だ。一方のドイツはEUの中心としてしっかり英米文化圏の中に組み込まれている。この両者の差は「民族の差」だろう。
その同じことがロシアにも言える。ソ連が崩壊した時に「ペレストロイカ」ブームに乗ってレーガンと仲直りしたゴルバチョフの目論見は、結局、いつまで経っても欧米から「仲間」と認めてもらえず、相変わらず「敵国」にされたまま政治利用される憂き目に陥ってしまった。ロシアや中国やイランを許さずに、いつまで経っても「悪の元凶」と名指しして世界を分断しているのは、実はアメリカ(裏でイギリス)である。なぜアメリカはそうまでしてロシア・中国・イランを敵視するのか?
その理由は私にはよく分からない。しかしアメリカやその同盟国の立場から一歩離れて「冷静に世界を眺めれば」、我々が理想と仰いでいる自由貿易社会の実態が、意外と範囲の狭い「一部の地域」の文化であることが徐々に見えてくる。
では、ウクライナは西側に行くつもりなのか?
そこが問題である。ウクライナが西側に移ったとして、果たして西側諸国(米国・英国・フランス・ドイツ・イタリア・スペインなど)が快く受け入れて、仲間として一緒に未来を築いて行こう!となるのかどうか。今回のEUの曖昧などっちつかずの態度を見ていると、自分達の仲間を「守る」という決意は全く感じられない。アメリカなどは激しくロシアを非難して世界に金融制裁や禁輸などを呼びかけているようだが、ロシアが核戦争をちらつかせているために「実戦部隊を送り込む」ことはしていない。というか、アメリカはウクライナ問題には直接介入しない、というのが政府の方針である。
私はゼレンスキー大統領が自国の市民に死傷者が出ているのにも関わらず、なぜ「ロシアと問題解決」に向けて協議しないのか、今でも不思議である。ロシアはウクライナを「占領する」と言っているわけではなく、ただ「 NATO に入るのをやめろ」と言っているだけなのに(ロシアの言い分だが)、ゼレンスキーは「それは呑めない」と突っぱねているのが現状だ(私の推測)。何故それほどまでに「 NATO に入りたがる」のか、それが分からないのである。その「なんだか分からない理由」のために、多数の人命が失われている。
市民の被害は甚大なようだが、世界ではウクライナに限らず紛争の起きている国々がいっぱい有るのは事実である。国家対国家の争いの中では、一般民衆は我慢するしか無いのだろう。事態を感情的な見方で判断しては、物事の「裏の事実」を見誤ることになるだろう。結果は1ヶ月程で出るだろうと私は思っている。そしてウクライナ問題を無事解決したロシアは、結果的に「自由貿易社会から離れる」ことになるだろう。果たしてその時に日本は「どうする」のか?
ロシアは中国や BRICS などと組んで、「新しい貿易圏」を作るだろうと思う。ロシアがそうしたいのでは無くて、英米が「ロシアを強制して追い込んでいる」のが実態なのだ。世界はマスコミが報道しているよりも「もっと大きな問題」で動いている。世界の平和を望んでいるのは民衆だけで、「統治者」は別の論理で戦っているのである。そこに「いい悪い」とか「人権」という感情の入り込む隙間は「無い」ものと考えた方が良さそうだ。では、巨大な文化圏が「二つ、または三つ」に分かれた時、日本はどちらにつくのだろう?
私はヨーロッパ文化から離れて、中国文化圏に入るのも悪く無いかな、と思っている(というか、英米から追いやられるだろうと思っている)。「人権」を大事にしない国は嫌だ、という人もいるが、アメリカだって「それほど差が無い」のじゃ無いか?。やっぱり日本が一番いいのだが、2番目にいいのは?と聞かれれば、「民族的にはアジア圏の方が良さそう」って感じかな。とにかく、ゼレンスキーが早いところ決断して、ロシア人の住んでいる地域をロシアに返すようにすれば、紛争は「即座に」解決する。勿論、NATO には入らないで、スイスみたいに永世中立国になるっていうのが一番だと思うけど、彼は譲らないのかもね。
・・・・・・・・・・・・・・・・
これは「田中宇の国際ニュース解説」から私が勝手にパクった情報をもとに、私が独断で考えて書いたものです。勿論、内容の責任は私にあります。もし、もっと正しくて精密な解説をお読みになりたい方は、是非ネットで検索して「本物」をお読みください。まま、私の意見が間違っている場合もよくありますので、その点ご承知くださいますようお願い申し上げます。なんせ素人ですから・・・。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます