明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

小泉進次郎の瀬戸際

2019-09-21 20:44:12 | ニュース
環境省大臣に初入閣!と、ここまでは国民の期待を一身に集めて颯爽たる内閣デヴューであった。だが不思議とここに来て、マスコミの手のひら返し攻撃にあって、一転して「雲行きが怪しく」なってきたのである。今までは政府のやることに正論をかざし敢然と批判したりして、常に民衆の立場に立って物事を考える「若きヒーロー」の役回りを演じ続けてきた進次郎。環境大臣として初めて臨んだ福島訪問で、記者の質問に答えるに「橋下徹氏がポエム」と揶揄するような発言に終止して、「あれれ?」と言う物議を醸している。見方によっては「不用意な言質を取られない」発言をしたということで、それなりに政治家としては「うまい誤魔化し方」だ、と一部には評価されているようだが、大方の受け取り方は「もっとはっきりとした、具体的な方針」を示してもらいたかった、というのが世間の評判であろう。ちょっと政治家としての資質に問題がありそうである。

というのも、政治家は自身のやりたいことや主張を明確に示すことで、敵も作るが「味方を増やす」のが普通のやり方である。対立構造を演出することで、より「問題の争点を鮮明にする」手法だ。勿論、皆んなが納得するような解決策を示せれば最高である。だが、原発事故からの復興に苦しんでいる県民を前にして、そんなウルトラCが出せるはずもない。記者から「福島をどうするのか?」と質問されて私が考えるベストな解答は、「日本国民全体の考え方」を伝えることであろう。つまり、福島県民は原発事故による災害を(起きてしまった結果なので)受け入れるしかない、というシンプルな論理だ。最善を尽くして放射能を取り除く作業をした結果、汚染水の貯蔵タンクが満杯になるのであれば、タンクを増やすか汚染水を海に捨てるしか無い。前大臣の発言は、個人的にではあるが、その苦渋の決断の方向性を示したわけである。それに対して「30年後の私」などと言う感想は、小泉進次郎個人の日記なら兎も角、環境大臣という閣僚の発言としては「全く意味不明」と言わざるを得ないのである。原発事故による汚染水・汚染土の問題は、福島県民が引き受けなくて何処の県が引き受けるというのだろうか。

これを原発事故は日本全体の悲劇だとして、福島県民だけが被るのはおかしいと言う人がいる。だが、こう言うこともありうると想定して、それでも原発を圏内に設置することを認めたのは他ならぬ「福島県民」では無いのか。だとしたら当然、汚染土・汚染水は福島で処理するしかない、と言わざるを得ないのである。それが原発を受け入れた「県の政策」の当然の結果であり、利益を得た代わりに損害もまた引き受ける、と言うのが資本主義の大原則である。福島の郷土の美しさや海の豊かさなどは、原発を受け入れたときに「万一の事故が起きたときには、すべてを失う」と予見できた筈なのだ。悪い言い方をすれば、「自業自得」となる。その大前提をご破産にして「県民との約束」というメチャクチャな夢物語を続け、汚染水を「他県へ捨てる」という無理無体な選択を平然と言ってのける小泉進次郎は、環境大臣としては「日本全国民を敵に回す」決断をした、と見られてもしょうがないだろう。自業自得と突き放すのは、福島県民を悲しみのどん底に放置することである。しかしだからこそ「原発をすべて廃止する決断」が出てくるのではないだろうか。郷土を失う悲しみから県民を救うことが「出来ない」と言う厳然たる事実。その「どうにもならない事実」があるから、原発は作ってはいけないのだ。小泉環境大臣は、そういう主張のはずだったのである。それを、何とかして福島県民の希望を叶えてあげて、「原発事故前の豊かな生活」を取り戻すことが出来る、というようなハッピーエンドを彼が心に描いているとすれば、「原発は廃止する必要はない」という意見が出てきても、それを否定する理由はなくなってしまう。そこが原発議論の原点なのだ。

小泉環境大臣は政治生命を掛けて「自身の主張を明確な言葉で言うべき」だった。時期尚早だとか言質を取られないだとかと言うような政治家のテクニックは、もっと「老練な政治家」にこそ相応しいのでは無いだろうか。彼の魅力は、ケレン味のない理想論を「社会のドロドロした柵に負けず、まっすぐに主張する姿」にある。私は小泉進次郎を少々買い被っていたかもしれない、と思い始めている。彼がどこまで「ネットの評判」を気にしているかわからないが、政治家としての小泉進次郎、ちょっと前途不安な閣僚デビューだった気がする。で、これからの彼の言動が世間の注目を浴びるわけだが、私が彼に期待するのは「周りの意見に気配り目配り」などせずに、己の理想に向かって突き進む姿である。そう言う姿を国民は期待している、と言っても過言では無い。それを、色んな利権に気を使い、調整手腕を発揮して「政府に都合のいい話に一本化する能力」を発揮しようと思っているのなら、彼の政治家としての未来は残念ながら「無い」と言えよう。これからの数週間は、小泉進次郎にとって「瀬戸際の日々」である。

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