私は20年以上美容師として働いてきました。
ある時から理由もなく、かつらを取り扱えるようになりたくなり
講習などに行ったり、講習で作ったかつらをかぶり仕事をしたりと
かつらが大好きになってきました。
7年ぐらい前に常連のお客様のお嬢さんが、がんのため脱毛され
もうすでに長い闘病をされていた彼女は、ご自分で外にでることもできませんでした。
「かつらがほしいらしいから、行ってあげてくれる?」とお客様に頼まれ
彼女のお宅にお伺いしました。たぶん、それまで私は抗がん剤のため脱毛された方を
テレビなどでしか見たことがなかったのだと思います。
ベットから起き上がるのがやっとの彼女は、昔お会いした面影はありませんでした。
彼女のご希望を伺いかつらをカットしてサイズ調整をして、数日後お届けに行きました。
出来上がったかつらを試着された彼女は、さっきまでの病人の彼女ではなく
普通にお元気だった頃の彼女に戻った感じでした。
「かつら」ってすごい!感激でした!
うれしそうな彼女の笑顔に私もうれしい。そんな1日でした。
その後、彼女は1カ月ぐらいで亡くなられてしまい
私は何万円もするかつらをお売りして良かったのか考えてしまいました。
ある日、彼女の母親であるお客様が
「ちゃんと最期に被せたから、メイクもしてあげたしね」
と言われ、元気だった頃の様子でみなさんとお別れできたのだから
やっぱり作って良かったのかな とお客様の笑顔見ながら
彼女の笑顔も蘇ってきました。