カトパンでさえもニュース番組のメインキャスターという役割は重かったのか。そんなことを感じた番組卒業劇だった。 フリーアナウンサーの頂点的存在の加藤綾子アナウンサー(37)がフジテレビ系報道番組「Live News イット!」(月~金曜・後4時50分)を9月30日の生放送で降板した。番組最終盤の午後6時58分、「ガチャピンといっしょ!」のコーナーを終えると、フジ同期入社の榎並大二郎アナ(37)が「加藤キャスターですが、本日をもって『イット!』を卒業します」と切り出した。加藤アナは「3年半、本当にありがとうございました」と頭を下げると、「3年半の間にコロナ、ロシアのウクライナ侵攻、安倍元総理の事件など衝撃的な出来事もありました。日々、こうしたニュースと向き合っていますと心が辛くなる時もあったんですけど…。『イット!』はこれからも続きますので、引き続きよろしく願いします」と続けた。さらに「ラスト2週間くらいからコロナに感染してしまったら、このスタジオに来られなくなってしまうので大丈夫かなと気が気ではなかったんですけど、今日、無事にこの場に立ててホッとしております。皆さんにニュースをお伝えできて良かったです。本当にありがとうございました」と、もう一度、ペコリ。隣に並んだガチャピンに週末の天気を振ると、「皆様、本当にありがとうございました。最後にせーの!」と言うと、両手をジグザグに下げていくアクションで明るく別れを告げた。別れの涙を予想していたこちらを、いい意味で裏切る陽性のエンディング。その底抜けの笑顔を見届けた瞬間、私の記憶は2019年3月6日、東京・台場のヒルトン東京お台場に約80人の放送担当記者を集めて行われた同局の4月番組改編発表会見の席にフラッシュバックしていた。同局は18年4月に「みなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるッ!」など長年続いた大型バラエティーを軒並み終了させる「史上最大の改編」を断行。「月9ドラマ」の連続ヒットなど業績を上向きにした上で最後の切り札として切ったカードが「ゴールデン帯への入り口となる夕方のニュース番組の刷新」だった。多くの視聴者が集うゴールデンタイム(午後7時~10時)への“呼び水”としての夕方のニュースの強化。番組名も「Live News イット!」に変え、4月からスタートさせた大型報道番組の切り札が2年前に退局、フリーに転身したばかりの加藤アナだった。清楚(せいそ)な白のブラウスに黒のタイトスカートで登場した加藤アナが「番組が4月1日の新元号発表の日にスタート。平成最後、そして、新しい時代の幕開けの時に報道キャスターを任せていただけるのは光栄に思っています」と目を輝かせたのを昨日のことのように覚えている。編成・報道全体の責任者だった石原隆取締役(当時)の「分かりやすく間口が広いニュース番組を目指したい」と、加藤をメインキャスターに迎えた理由を明かしてくれた言葉も、頭にくっきり残っている。あれから3年半経ち、その起用は正直、結果を残せなかった。同番組の世帯視聴率は日本テレビ系「news every.」などの後塵(こうじん)を拝し、4位。個人視聴率ではキー局最下位を免れているものの、カトパン人気で一気にゴールデン帯に視聴者を呼び込むという目論見(もくろみ)は外れた。今年4月、約12年間に渡って出演してきた同局系「ホンマでっか!?TV」(水曜・午後9時)も降板済みのため、08年に入社、16年のフリー転身後も「局の顔」として支え続けてきたフジから去ることになった加藤アナ。昨年6月には一般男性と結婚。今回のキャスター卒業についても結婚1周年にあたる6月6日、自身のインスタグラムを更新。「今年でアナウンサー生活15周年を迎え、これまで仕事第一で走り続けてきましたが、長い目で人生を考えた時、家族との時間もより大切に過ごしてみたいと思いました」と明かしていた。 08年に民放3局の入社試験に同時に合格した「スーパー綾子」としてフジに入社。カトパンの愛称のもと、明るい笑顔と天真らんまんなキャラクターでスポーツ番組やバラエティーで大活躍。抜群の親しみやすさを武器に数多くのバラエティー番組に引っ張りだこのスターアナだったが、ニュースキャスターという役割には、最後までなじめないままだったような気がする。「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズのもと82年から93年まで12年連続で視聴率三冠王を続けた栄華も今は昔。現在、個人視聴率で全日、ゴールデン、プライムともキー局中4位と低迷するフジが切った最後の切り札が加藤アナだったが、あくまでバラエティー、情報番組向きな特性をどこか無視してのニュースキャスター起用には、やはり無理があったと、私は見る。極論かも知れないが、各局のバラエティー、情報番組のエースである日本テレビの水卜麻美アナ(35)やテレビ朝日の弘中綾香アナ(31)をそれぞれの局が看板ニュース番組のキャスターに据えようとするだろうか。気が滅入るような暗いニュースも淡々と報じる―。フジで言うなら、昼のニュースの顔であり、安倍晋三元首相の国葬の司会も任された島田彩夏アナ(48)のような安定感。それこそがニュース報道のキャスターに求められる資質と言ったら言い過ぎか。女性アナにもそれぞれ適性があり、輝く分野があると思うし、そういう意味では、どこまでも華やかで明るい加藤アナのニュースキャスター起用はミスキャストだったのではないか。3日から「イット!」は榎並アナと共に次世代エースと言われる宮司愛海アナ(31)がメインキャスターを務める新体制となる。今年6月に就任した港浩一社長(70)が「フジテレビの顔になってほしい」と期待を寄せる宮司アナが夕方のニュース戦争に新風を吹かすことができるのか。14年間に渡って「お台場の顔」だったカトパンが去った後、社内外で評価が高い「スーパー宮司」がフジを救うのか。その答えは、もうすぐ出る。※引用しました!
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