愛はねたまざるなり。愛は自己をもって足るものなれば、人の成功をうらやみ、その優秀をねたむの要なし。
富者に競争あり、学者と宗教家に嫉妬ありといえども、愛の満足におるものは猜忌、羨望の邪念におかされず。愛は生ける泉なり。与うるを知って受くるを知らず、おのれに充ち満つるがゆえに、人の充溢を聞いて憤ることなし。
愛にありては貧者は富者を憤らず、愚者は学者をうらやまず、愛は人生終局の善かつ美なり。愛に達して、人はすべての欲望を断つに至る。
金をもつものは、銅、鉄、または鉛をもつものをうらやまず、そのごとく、愛にあるものは、金銀、宝貨、学識、天才を有するものをねたまず。愛に嫉妬なし。しかり、神の愛に達してのみ、吾人は初めて嫉妬以上の人たるを得るなり。 (内村鑑三)
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