うば捨て山(孝行息子と母の話)(1)
むかしは六十になっと、
うば捨て山さ置いでこなかなんねがったど。
あっとこに、親孝行な息子があってない、
どうしても親を山さなんか置いでこらんねがらって、
座敷の下さめど掘って、かぐしておいたんだと。
あっどき、殿さまがら、
「あぐで縄もじったがな持ってきたもんに、褒美をやる。」
って言わっちゃんで、なじょしたらでぎんのかなぁど思って、
床下にかくしてだおっかぁに聞いだと。
「てえらな石の上で縄燃せば、あぐで縄もじったがなできる。」
って言わっち、そのとおりにして持ってっで見せだと。
「なじょして、こういうふうにできたんだ。」
「実は床下さかぐしてだおっかぁに教しえらっちゃんだ。」
って言うと、殿さまは、
年寄りはいろんな経験してっがらなんでも分がってる。
大切にしなきゃなんねってごとになって、
ほれがらうば捨て山をなぐしたんだと。
小綱木 佐藤 トミ
うば捨て山(1)(孝行息子と母の話)(現代語版)
むかしは六十になると、
うば捨て山に置いてこなければなりませんでした。
あるところに、親孝行な息子がいて、
どうしても親を山になど置いてこれないので、
座敷の下に穴を掘って、かくしておきました。
あるとき、殿さまから、
「灰で縄を編んだものを持ってきたものに、褒美をやる。」
と言われたので、どうしたらできるのかなぁと思って、
床下にかくしていたおっかぁに聞きました。
「平らな石の上で縄を燃やせば、灰で縄を編んだものができる。」
と言われて、そのとおりにして持っていって(殿さまに)見せました。
「どのようにして、こういうふうにできたのだ。」
「実は床下にかくしていたおっかぁに教えられました。」
と言うと、殿さまは、
年寄りはいろいろな経験をしているからなんでも分かっている。
大切にしなければならないということになり、
それからうば捨て山をなくしたそうです。