のり巻き のりのり

飾り巻き寿司や料理、己書、読書など日々のあれこれを書いています



山桜桃

2018年06月03日 | 随想
ウォーキングの途中でユスラウメ(山桜桃)の実がなっているのを見かけました。
残念ながら我が家にはありません。



でも思い出したんです。
私が小学校低学年だったころ、学校の敷地の片隅にユスラウメがあったことを。

私の家は小学校のすぐ近くで歩いても3分くらいのところでした。
だから遊び場はいつも学校。だれもいなくなった時間にこっそり真っ赤な実を取って食べました。

甘酸っぱい味でした。
学校のものだから一人で食べてはいけないと思いながら、だれも見ていないことを幸いにしばしば盗み食いをしていました。

ある日、口の周りに赤い色をつけて帰った私に、母は「何を食べてきたの?」と尋ねました。
「がっこうの中にある赤い実・・・」「え、あれは毒がある実なのよ」

「!!」「ユスラウメっていうんだけど、黙って食べると毒になるの」

幼かった私は、その後、先生にも友だちにも、母に言われたことをそのまま吹聴していました。
それからは実が取られることはなくなりました。(少なくとも私とその友だちからは)

あんなおいしい実で、しかも小学校の中にあるんだもの。毒があるはずはないのに。
今もたわわに実るユスラウメの実が思い浮かびます。もっと食べたかったのに。

ユスラウメの花言葉は「郷愁」「輝き」です。
幼い頃の自分を懐かしみ、若かりし頃の母を懐かしんでいると、甘酸っぱいユスラウメの味までも口の中に広がっていくようでした。


山桜桃(水森かおり)