山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『正宗遺訓』(酔いどれ小藤次留書)=佐伯泰英

2012-10-27 06:44:52 | 読書

 佐伯泰英の酔いどれ小藤次留書シリーズの『正宗の遺訓』を、やはり伊香保へ向かう列車の中で読んだ。佐伯作品では、居眠り磐根江戸双紙シリーズや、吉原裏同心シリーズなど連作があって、新刊が出るとどうしても手が出てしまう。佐伯作品は文庫書き下ろしのため図書館に入るケースが少なく、読みたければ古本になるのを待つか新刊で購入するしかないのである。

 『正宗の遺訓』では、小藤次の暮らす長屋が秋の長雨にたたられ、住人は仕事に行くこともできず、くらしがひっ迫する中で、小藤次の発案で炊き出しを企て、長屋の空いているところを使おうとすると、そこの竈から黄金づくりの根付が出てきて、その行方をめぐって元の持ち主の三河蔦屋と、盗み取られた現在の所有者の伊達家の間での問題を小藤次とおりょうの二人が知恵を絞って解決する。

 『酔いどれ』シリーズでは、大酒のみの小藤次が一方、水軍流なる剣法の達人であってめっぽう強く、その顔立ちが「モクズガ二」のようだといいながら絶世の美女である「おりょう」に思われ、大店の主たちや水戸家にまで信頼されるという人柄を発揮するわけだが、フィクションなのであり得ないことなのだが、そこは物語として味わえばよいだろうと思う。読み始めるとやめられない読み物なのである。