弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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退職勧奨を行う上で重要なポイント

2013-01-31 | 日記
Q53 退職勧奨を行う上で重要なポイントは何だと思いますか?


 退職勧奨を行う場合は,担当者の適切な選定,担当者のモチベーションの維持,解雇する場合と同様の下準備がなどが重要となってきます。

 退職勧奨は労使紛争の契機となることが多いですので,相手の気持ちを理解する能力を持っている,コミュニケーション能力の高い社員が退職勧奨を担当することが望ましいところです。
 同じようなケースであっても,退職勧奨の担当者が誰かにより,紛争が全く起きなかったり,紛争が多発したりします。
 適性のある担当者が必要な人数集められない場合は,マニュアルを作成して遵守させるなどして対処せざるを得ませんが,マニュアルだけでは十分な対応ができないかもしれません。
 直属の上司は,日常的に部下とともに業務を遂行すべき立場にありますので,退職勧奨を行わせるのは酷なケースが多く,原則として退職勧奨の担当者にはしない方が無難だと思います。
 退職勧奨を受ける社員と仲の悪い上司が退職勧奨を行うようなケースは非常にトラブルが多いので,できるだけ避けたいところです。


 退職勧奨を担当する社員に対しては,どうして退職勧奨しなければならないのか,その理由についてよく理解してもらう必要があります。
 退職勧奨される側に大きなストレスがかかるのは当然ですが,退職勧奨する側にも相当大きなストレスがかかります。
 退職勧奨を行う必要性について十分に納得してもらわないと,退職勧奨する側が嫌になって会社を辞めてしまうということにすらなりかねません。

 解雇の要件を充たしていなくても退職勧奨を行うことができますが,有効に解雇できる可能性が高い事案であればあるほど,退職勧奨に応じてもらえる可能性が高くなります。
 到底解雇が認められないような事案で退職勧奨したところ,明確に退職を拒絶された場合,手の施しようがなくなってしまうことがあります。
 退職勧奨に応じないようであれば解雇できるよう,退職勧奨に先立ち,問題点を記録に残し,十分な注意,指導,教育を行い,懲戒処分を積み重ねるなどして,解雇する際と同じような準備をしておくべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

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会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合の失業手当

2013-01-31 | 日記
Q52 会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合,自己都合退職と評価されて,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けることはありませんか?


 会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合であっても自己都合退職として扱われ,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けるのではないかと懸念し,退職自体はやむを得ないと考えていても,退職届の提出を拒絶する社員がいます。
 しかし,「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当しますので(雇用保険法23条2項2号),会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることはありません。
 社員が失業手当の受給条件について心配しているようでしたら,社員が一方的に辞職した場合や会社からの働きかけがないのに退職したいと言い出して合意退職した場合とは異なり,会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合は自己都合退職として扱われないのでということを丁寧に説明して懸念を払拭する必要があります。


弁護士 藤田 進太郎

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有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担

2013-01-31 | 日記
Q39 有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担はどのようなものになりますか?


 有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合,訴訟における主張立証の分担としては,
 労働者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価根拠事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価根拠事実
を主張立証し,
 使用者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価障害事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価障害事実
を主張立証していくことになります。
 上記①②の事実は,重なる部分も多いですが,①②は別の論点ですので,①②どちらの論点についての話なのかを意識して主張立証していく必要があります。

 現在では労契法19条の要件を充足するか否かといった観点から検討されることになりますが,基本的な構造は従来の判例法理と変わりません。
 主な違いは,「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」であることが雇止め制限の要件として要求されるようになったことくらいです。

弁護士 藤田 進太郎

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雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?

2013-01-31 | 日記
Q38 雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?


 やはり,家計補助的な有期労働ではなく,正社員と同様,一家の大黒柱的に有期労働に従事していたような場合が挙げられると思います。
 そのような立場で雇止めにあって仕事がなくなったら,生活できなくなってしまいますから,反発が強くなるのはやむを得ないところです。

 その他,契約が何回も更新されて長期間にわたり正社員と同様の基幹的業務に従事しているような場合も,リスクが比較的高くなります。
 有期労働契約の労働者が,たいていの正社員よりも勤続年数が長く,正社員よりもできがいい,役に立つということもありますが,そのような労働者については,正社員類似の配慮が必要になると思います。

弁護士 藤田 進太郎

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有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合

2013-01-31 | 日記
Q37 有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合は,解雇とは違いますから,簡単に辞めてもらうことができますよね?


 有期労働契約の期間が満了した場合は,契約終了となるのが原則です。
 しかし,有期労働契約期間が満了した場合であっても,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合(東芝柳町工場事件最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決)
② 労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合(日立メディコ事件最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決)
には,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用され,当該労働契約の雇止め(更新拒絶)は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されないことになります。
 したがって,有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合であっても,①②のような場合には雇止めが争われることがあり,簡単に辞めてもらうことができるとは限りません。
 もっとも,正社員と比較して,有期労働契約の労働者は,長期雇用に対する期待が低いことが多いので,正社員と比べれば,すんなり辞めてもらえることが多い実情にはあります。

 以上が従来から判例で認められてきた雇止め法理の解説ですが,現在では労契法19条で「有期労働契約の更新等」が定められ,雇止め法理が明文化されたと説明されていますので,この問題は労契法19条の要件を充足するか否かといった観点から検討されることになります。


(有期労働契約の更新等)

19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。


弁護士 藤田 進太郎

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