パワハラが関係する労災認定の問題の概要を教えて下さい。
パワハラ との関係では,以下のようなものについて,客観的に対象疾病を発病させるおそれのある強い心理的負荷であるとされています。
① 部下に対する上司の言動が,業務指導の範囲を逸脱しており,その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ,かつ,これが執拗に行われた
② 同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた
③ 治療を要する程度の暴行を受けた
④ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が上司との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
⑤ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が多数の同僚との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
⑥ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が多数の部下との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
⑦ 業務に関連し,重大な違法行為(人の生命に関わる違法行為,発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける違法行為)を命じられた
⑧ 業務に関連し,反対したにもかかわらず,違法行為を執拗に命じられ,やむなくそれに従った
⑨ 業務に関連し,重大な違法行為を命じられ,何度もそれに従った
⑩ 業務に関連し,強要された違法行為が発覚し,事後対応に多大な労力を費やした(重いペナルティを課された等を含む)
⑪ 客観的に,相当な努力があっても達成困難なノルマが課され,達成できない場合には重いペナルティがあると予告された
⑫ 退職の意思のないことを表明しているにもかかわらず,執拗に退職を求められた
⑬ 恐怖感を抱かせる方法を用いて退職勧奨された
⑭ 突然解雇 の通告を受け,何ら理由が説明されることなく,説明を求めても応じられず,撤回されることもなかった
⑮ 非正規社員であるとの理由等により仕事上の差別,不利益取扱いを受け,仕事上の差別,不利益取扱いの程度が著しく大きく,人格を否定するようなものであって,かつこれが継続した
①~⑮のような事実が認定された場合,パワハラ単独で労災認定がなされる可能性が高いですが,①~⑮の程度にまで至らない程度の言動であっても,パワハラの前後に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)を行っている場合は,「合わせ技」により,強い心理的負荷があったと評価されて労災認定がなされることがあります。
恒常的な長時間労働の抑制がポイントです。
労災認定の場面において業務起因性が肯定された場合,民事損害賠償請求の場面においても,精神疾患 発症との間の相当因果関係が肯定されやすい傾向にあります。