最近読んでいる本。
アマゾンの書評が経営学の本として異常によかったので買ってみました。
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経営理論を「思考の軸」として使ってもらえるようにする
というコンセプトで執筆されていて、
体系的にまとめられており読みやすく、ためになります。
今まで読んできたたくさんの本をカテゴライズできるため
(この本は、目次のここのことだなというように体系づけできる)、
頭の整理もできます。
現時点では、800頁中の300頁なので、半分まで行っていないですが、
知的に成長できる要素がたくさんありました。
色々書きたいところですが、今回は、
ダイナミック・ケイパビリティについて。
ダイナミック・ケイパビリティについては、
この本では、確たる定義はない
という記述です。
あえて訳せば、
ダイナミック 動的な
ケイパビリティ 企業が全体として持つ組織的な能力(リソース・強み)
で、
事業環境に合わせて組織的な能力(リソース・強み)を変化させる(組み合わせ直す)
ということになります。
ダイナミック・ケイパビリティで成功した例として、
IBMが、時代に合わせて、
メインフレーム事業→サーバー事業→ソリューション事業
と変化していったケースが紹介されています。
ダイナミック・ケイパビリティを高めるためには、
センシング(事業機会・脅威を感知する力)をつける。
そのために、
幅広い知識・経験が得られるようにする。
また、
サイジング(感知した事業機会を「とらえる」力)をつける。
そのために、
既存の組織とは独立した組織・リーダーシップ・予算と
シンプルルールにとどめ、予想外の事象には、柔軟に対応できる権限を与える。
富士フイルムの例で言えば、
カメラフィルムでは生き残れないぞと脅威を感知するのが、センシング。
カメラフィルムのナノ技術は、
化粧品を肌に浸透させるために使えそうだと事業機会をとらえて、
研究者が、予算をある程度、自由に使って画期的な化粧品の開発に取り組むのが、サイジング。
数頁を数行にまとめているので、正確な知識は本を読むとよいと思います(300頁~)。
富士フイルムの例は、僕が勝手にまとめたもの。
*****
今の日本に必要なのが、このダイナミック・ケイパビリティです。
日本の法体系(民法、刑法、民訴、刑訴)は、
明治時代に作られたものが改正を経ながら、未だに使われています。
民法がようやく2020年4月から債権法の大改正がなされましたが、
基本的な目次(パンデクテン方式)に大きな変更はありません。
憲法も戦後1946年11月3日に成立し、1947年5月3日に施行され、
73年間一度も改正はありません。
新憲法制定(8月革命説)に伴い、地方自治法も制定されました。
ウィキペディアでは、
「1999年7月には地方分権改革を目指した大がかかりな改正(2000年4月1日施行)が行われ、
この改正地方自治法を「新地方自治法」(松下圭一)と呼ぶこともある。
この改正によって機関委任事務は廃止され、
国と地方の関係は「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係へと変わった。」
とありますが、
事実上、予算の縛りによって、「上下・主従」の関係は維持されている
といえます。
中央政府(官僚)の意識も上下・主従関係があることは、
泉佐野市に対する報復措置(裁判では違法が認定)
や
「Go To トラベル」における東京外し
など、
逆らったらどうなるか覚えておけよ
という「お金を人質にした強制」からもみてとれます。
明治時代、あるいは終戦後から、今までの間に、
PC、タブレット、スマホ
メール、ライン
ラジオ、白黒テレビ、カラーテレビ、地デジ、YouTube
クレジットカード、スイカ、ビットコインなど仮想通貨、コンビニ決済(アマゾンポイント)
と技術の変化は激しいのに、
国の法体系や行政の根本的な仕組みや事態は変わっていない。
こういった時代の変化に合わせて、
日本のリソースを作り直していく
ことが求められています。
日本のリソースの作り直しの中には、法体系や行政組織の仕組みのほかに、
中央と地方自治体の役割分担
も含まれます。
ダイナミック・ケイパビリティを活かして、
新型コロナウイルスの対応
について考えてみます。
今回のような感染症は、
保健所の一部門が担当する
ということになっています。
保健所は、通常業務を前提に人員が配置されているため、
いきなり、パンデミックの対応をしろ
と言われても、知識や経験はありません。
まだ、死亡率が低いため、現在は落ち着いていますが、
冬に凶暴化し、重症化率や死亡率が急激に上がってきた際に、
パニックになるおそれがあります。
そのため、パンデミックという異常事態によって、
保健所に求められている仕事が変化している。
この現状に合わせ、
保健所のリソースを組み合わせ直していく必要がある
ということです。
ここで、
ダイナミック・ケイパビリティが生きる
ことになります。
まず、センシング(事業機会・脅威を感知する力)をつける。
そのために、
幅広い知識・経験が得られるようにする。
脅威を感知するためには、
保健所の限られた職員だけでは無理
です。
医師会、大学、民間の検査会社、タクシー業界、ホテル業界
と協力して、
幅広い知恵やリソースを活用できるようにする。
PCR検査、抗原検査などの実施→早期発見→早期治療、隔離
という封じ込め策を立案し、実行するために、
幅広い人材(組織)と協力する。
次に、サイジング(感知した事業機会を「とらえる」)。
そのために、
既存の組織とは独立した組織・リーダーシップ・予算と
シンプルルールにとどめ、予想外の事象には、柔軟に対応できる権限を与える。
的確な措置を講じられるように、
国から県への権限と予算を委譲する。
マニュアル化によるシンプルルール。これによって、雑務の負担が軽減する。
予想外の事象には、柔軟に対応できるように、保健所職員に権限を与える。
いちいち、対応を協議したり、国にお伺いを立てずにすむため、的確かつ迅速な対応ができる。
自宅療養は、感染拡大をもたらすため、原則認めない。
現に、家庭内感染が増えていることや、
陽性者が買い物に行きクラスターが発生した事例あり。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」を
国民に周知徹底し、厳格に適用する。
ホテルは嫌だという人には、
勧告した上、従わないと法律に従い、強制隔離する
と伝える。
自宅での療養者や待機者の管理は、保健所のスタッフがいちいち電話する必要があり、
負担が大きい。
そのため、
軽傷者や無症状者は、ホテルを原則とする
ことで、スタッフの管理の負担を軽減する。
ホテルによる隔離は、
外出を防止できる
とともに、
重症化の早期対応
という面でもメリットが大きい。
入院は、医療機関を圧迫するため、極力避ける。
移動は、
感染対策を施した提携タクシーを利用する
ことで、
陽性者、救急車の負担軽減
と
タクシー業界へのサポートにつながる(Go Toより助かるはず)。
保健所という組織をパンデミックに合わせて、他業種と協力しながら
リソース(人員、施設、設備、スキル、ノウハウ)を組み合わせ
現在の課題に的確に対応できるようにする。
これが、
ダイナミック・ケイパビリティの活用
です。
企業が時代に合わせて、強みを変化させ、生き残っていく理論は、
国や自治体が時代に合わせて、リソースを組み合わせ直して、生き残っていく
ことにも使えるというわけです。
アマゾンの書評が経営学の本として異常によかったので買ってみました。
経営理論を「思考の軸」として使ってもらえるようにする
というコンセプトで執筆されていて、
体系的にまとめられており読みやすく、ためになります。
今まで読んできたたくさんの本をカテゴライズできるため
(この本は、目次のここのことだなというように体系づけできる)、
頭の整理もできます。
現時点では、800頁中の300頁なので、半分まで行っていないですが、
知的に成長できる要素がたくさんありました。
色々書きたいところですが、今回は、
ダイナミック・ケイパビリティについて。
ダイナミック・ケイパビリティについては、
この本では、確たる定義はない
という記述です。
あえて訳せば、
ダイナミック 動的な
ケイパビリティ 企業が全体として持つ組織的な能力(リソース・強み)
で、
事業環境に合わせて組織的な能力(リソース・強み)を変化させる(組み合わせ直す)
ということになります。
ダイナミック・ケイパビリティで成功した例として、
IBMが、時代に合わせて、
メインフレーム事業→サーバー事業→ソリューション事業
と変化していったケースが紹介されています。
ダイナミック・ケイパビリティを高めるためには、
センシング(事業機会・脅威を感知する力)をつける。
そのために、
幅広い知識・経験が得られるようにする。
また、
サイジング(感知した事業機会を「とらえる」力)をつける。
そのために、
既存の組織とは独立した組織・リーダーシップ・予算と
シンプルルールにとどめ、予想外の事象には、柔軟に対応できる権限を与える。
富士フイルムの例で言えば、
カメラフィルムでは生き残れないぞと脅威を感知するのが、センシング。
カメラフィルムのナノ技術は、
化粧品を肌に浸透させるために使えそうだと事業機会をとらえて、
研究者が、予算をある程度、自由に使って画期的な化粧品の開発に取り組むのが、サイジング。
数頁を数行にまとめているので、正確な知識は本を読むとよいと思います(300頁~)。
富士フイルムの例は、僕が勝手にまとめたもの。
*****
今の日本に必要なのが、このダイナミック・ケイパビリティです。
日本の法体系(民法、刑法、民訴、刑訴)は、
明治時代に作られたものが改正を経ながら、未だに使われています。
民法がようやく2020年4月から債権法の大改正がなされましたが、
基本的な目次(パンデクテン方式)に大きな変更はありません。
憲法も戦後1946年11月3日に成立し、1947年5月3日に施行され、
73年間一度も改正はありません。
新憲法制定(8月革命説)に伴い、地方自治法も制定されました。
ウィキペディアでは、
「1999年7月には地方分権改革を目指した大がかかりな改正(2000年4月1日施行)が行われ、
この改正地方自治法を「新地方自治法」(松下圭一)と呼ぶこともある。
この改正によって機関委任事務は廃止され、
国と地方の関係は「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係へと変わった。」
とありますが、
事実上、予算の縛りによって、「上下・主従」の関係は維持されている
といえます。
中央政府(官僚)の意識も上下・主従関係があることは、
泉佐野市に対する報復措置(裁判では違法が認定)
や
「Go To トラベル」における東京外し
など、
逆らったらどうなるか覚えておけよ
という「お金を人質にした強制」からもみてとれます。
明治時代、あるいは終戦後から、今までの間に、
PC、タブレット、スマホ
メール、ライン
ラジオ、白黒テレビ、カラーテレビ、地デジ、YouTube
クレジットカード、スイカ、ビットコインなど仮想通貨、コンビニ決済(アマゾンポイント)
と技術の変化は激しいのに、
国の法体系や行政の根本的な仕組みや事態は変わっていない。
こういった時代の変化に合わせて、
日本のリソースを作り直していく
ことが求められています。
日本のリソースの作り直しの中には、法体系や行政組織の仕組みのほかに、
中央と地方自治体の役割分担
も含まれます。
ダイナミック・ケイパビリティを活かして、
新型コロナウイルスの対応
について考えてみます。
今回のような感染症は、
保健所の一部門が担当する
ということになっています。
保健所は、通常業務を前提に人員が配置されているため、
いきなり、パンデミックの対応をしろ
と言われても、知識や経験はありません。
まだ、死亡率が低いため、現在は落ち着いていますが、
冬に凶暴化し、重症化率や死亡率が急激に上がってきた際に、
パニックになるおそれがあります。
そのため、パンデミックという異常事態によって、
保健所に求められている仕事が変化している。
この現状に合わせ、
保健所のリソースを組み合わせ直していく必要がある
ということです。
ここで、
ダイナミック・ケイパビリティが生きる
ことになります。
まず、センシング(事業機会・脅威を感知する力)をつける。
そのために、
幅広い知識・経験が得られるようにする。
脅威を感知するためには、
保健所の限られた職員だけでは無理
です。
医師会、大学、民間の検査会社、タクシー業界、ホテル業界
と協力して、
幅広い知恵やリソースを活用できるようにする。
PCR検査、抗原検査などの実施→早期発見→早期治療、隔離
という封じ込め策を立案し、実行するために、
幅広い人材(組織)と協力する。
次に、サイジング(感知した事業機会を「とらえる」)。
そのために、
既存の組織とは独立した組織・リーダーシップ・予算と
シンプルルールにとどめ、予想外の事象には、柔軟に対応できる権限を与える。
的確な措置を講じられるように、
国から県への権限と予算を委譲する。
マニュアル化によるシンプルルール。これによって、雑務の負担が軽減する。
予想外の事象には、柔軟に対応できるように、保健所職員に権限を与える。
いちいち、対応を協議したり、国にお伺いを立てずにすむため、的確かつ迅速な対応ができる。
自宅療養は、感染拡大をもたらすため、原則認めない。
現に、家庭内感染が増えていることや、
陽性者が買い物に行きクラスターが発生した事例あり。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」を
国民に周知徹底し、厳格に適用する。
ホテルは嫌だという人には、
勧告した上、従わないと法律に従い、強制隔離する
と伝える。
自宅での療養者や待機者の管理は、保健所のスタッフがいちいち電話する必要があり、
負担が大きい。
そのため、
軽傷者や無症状者は、ホテルを原則とする
ことで、スタッフの管理の負担を軽減する。
ホテルによる隔離は、
外出を防止できる
とともに、
重症化の早期対応
という面でもメリットが大きい。
入院は、医療機関を圧迫するため、極力避ける。
移動は、
感染対策を施した提携タクシーを利用する
ことで、
陽性者、救急車の負担軽減
と
タクシー業界へのサポートにつながる(Go Toより助かるはず)。
保健所という組織をパンデミックに合わせて、他業種と協力しながら
リソース(人員、施設、設備、スキル、ノウハウ)を組み合わせ
現在の課題に的確に対応できるようにする。
これが、
ダイナミック・ケイパビリティの活用
です。
企業が時代に合わせて、強みを変化させ、生き残っていく理論は、
国や自治体が時代に合わせて、リソースを組み合わせ直して、生き残っていく
ことにも使えるというわけです。