前回紹介した「世界標準の経営理論」。
590頁まで読み終えました。
内容は高度なのに、非常に読みやすく、面白い。
アマゾンの評価が高い理由がよく分かりました。
著者は、特に、ビジネスパーソンに読んでもらいたいということです。
その意図は、
この本のテーマでもある「日本企業の再生」
にあると思われます。
経営理論を思考の軸として身につけたビジネスパーソンが増えることで、
日本企業が再生する
というわけです。
ここまで読んでみて一番感動したのは、
多くのビジネス書で書かれている
人材の多様化と風通しがよい組織
が、
企業の成長に不可欠である
ということが、
エコロジーベース(生態系)の進化理論
から説明されていて、腑に落ちたことです。
詳細なテーマは、いずれ触れるとして、
この本の最大の魅力である「読みやすさ」
について、
前回の内容である入口・経路・出口から説明します。
大学の授業は、とてもつまらない
と思っている人が多いはず。
教授が自分の本を読んでいるだけ
とか、
難しすぎて意味が分からない
とか。
なぜ、こういうことが起きるかというと、
学者は、出身大学・師弟関係(研究室)・論文数・他の教授の評価によって、その評価が決まる
からです。
教えるのがうまい
という要素は、あまり学者の評価につながっていない。
学生による授業評価アンケートが生まれてはいるものの、
教授を縛るものではない。
表現は、
入口 知覚
経路 記憶
表現
出口 叙述
という課程を経ています。
経路の中に、記憶・表現という二つが含まれています。
三分類に収まらない場合は、このように、内容に応じてまとめるとよいです。
入口 何かを見て、気がつく(知覚)。
経路 その内容を記憶する(記憶)。
どのように表現するかを考える(表現)。
出口 伝達する(叙述)。
刑事裁判では、
証人の証言において、この過程に誤りがないか
をチェックします。
このチェックの機会(反対尋問の機会)が与えられない証拠は、
伝聞証拠
といって、
原則として証拠能力が認められない
ことになります。
知覚 見間違いでは? あなたの視力は? 当時の状況は明るかったですか?
記憶 記憶力は? かなり時間が経っているのでは?
表現 見たことと異なる表現(嘘)では? お金をもらっていますね?
叙述 言い間違いでは?
入口 経路(思考) 出口
知覚 記憶 表現 叙述
A A A A ・・・Aを見て、Aと記憶し、Aと表現しようと思い、Aと証言(正しい証言)
A B B B ・・・Aを見て、間違ってBと記憶し、Bと表現しようと思い、Bと証言(記憶間違い)
A A B B ・・・Aを見て、Aと記憶したが、Bと表現しようと思い、Bと証言(嘘の証言)
A A A B ・・・Aを見て、Aと記憶し、Aと表現しようと思ったが、言い間違えてBと証言(単なる言い間違い)
この表現過程に従い、表現のスキルをまとめることができます。
入口 インプット 知覚 観察力・洞察力・読解力
経路 思考 記憶 記憶力
表現 思考力・構成力
出口 アウトプット 叙述 文章力・表現力
これを学者の例に当てはめて考察してみます。
学者として、論文が評価される場合、
観察力、洞察力、思考力(まとめる力)などで、優れている
ことが多い。
論文の文章力は、そこそこでも、
内容が斬新であったり
うまくまとめられていたり
すれば、
評価される
ことになります。
学生に教えるスキルは、
わかりやすく伝える
興味を持ってもらえるように工夫する
というように、
表現力が問われる
ことになります。
そのため、
地位と名誉のある学者でも、表現力がいまいちだと
授業はつまらない
ということになります。
地位と名誉がすでにあれば、
学生のために、教え方を工夫しよう
というモチベーションは生まれない。
そもそも、
学者は研究が重要である
という思考であったりすると、そんな発想すらない。
学生が、資格試験予備校に流れたのは、
合格に直結することが学べる
ということだけでなく、
授業がわかりやすい
ということも大きな理由です。
「世界標準の経営理論」は、
世界の経営理論をビジネスパーソンの「思考の軸」になる
ように、
まとめていく
というものなので、
著者の知覚
は、さほど多く記載されていません。
優れているのは、
どのように表現しようかという構成力(表現)
と
読みやすい文章(叙述)
です。
このような読みやすい本があるのと反対に、
本を読んでいて、頭に入ってこないことがあります。
その場合には、
入口・経路・出口
で、原因を探るとよいと思います。
著者の能力の不足。
著者の出口(文章力)が足りないため、読みにくい。
自分の能力の不足。
自分の入口(読解力)が足りないため、理解が難しい。
これら両方ということもあります。
大学の授業がつまらないのも、
実は、両方ということが多い
と思います。
大学は、中学・高校と異なり、高度な内容を教えるため、
予習は不可欠ですが、該当箇所のテキストを読まずに出席する学生も多い。
そのため、
自分の入口(読解力)が足りない。
加えて、
教える方も、親切丁寧な表現ではない。
両方の理由から、
講義がつまらないもの
となり、
大学の存在価値が減っている。
ビジネススクールの場合、
発言することを余儀なくされるため、予習していく
ことになるわけですが、
大学は大人数なので、予習しないと恥をかくという危機感はない。
これを防ぐには、
サンデル教授の授業のようにあてまくる
という講義スタイルがよいわけですが、
ソクラテスメソッドの授業は、高度な構成力・表現力が求められる
ので、
教授の負担(スキルの問題)が大きくなる。
そのため、
日本ではあまり行われてはいない
というわけです。
この入口・経路・出口によるそれぞれのスキルのまとめは、
上司から、話が分かりにくいと言われた場合
に、役に立つと思います。
入口 インプット 知覚 観察力・洞察力・読解力
経路 思考 記憶 記憶力
表現 思考力・構成力
出口 アウトプット 叙述 文章力・表現力
なぜ、自分の話が分かりにくいのかを、
入口・経路・出口で分析する
わけです。
その上で、その能力について書かれた本を買って、よく読んで理解します。
理解したら、本で学んだことを、繰り返し練習します。練習あるのみ。
上司に、話が分かりにくいと言われて、
「わかりやすく話す方法」という本を買ったとしても、
話の構成に問題があるのであれば、改善は期待できません。
三段論法や結論からまとめるなど、
「文章の書き方」などの構成力についての本
が必要だからです。
滑舌が悪いのであれば、表現力を高めるために、
「話し方」の本
が必要となります。
発声練習や「ういろう売り」でトレーニングしたりする。
自分の苦手なところを見つけ(入口)、
本を買って読んで、理解し(経路)、
繰り返し練習する(出口)。
弱点克服にも、
入口・経路・出口の型
は役立ちます。
今回のブログの記事も、
入口 導入
経路 入口・経路・出口と表現過程の説明
出口 まとめ
で構成しています。
このように、入口・経路・出口の型は色々なところで、使えるのでおすすめです。
590頁まで読み終えました。
内容は高度なのに、非常に読みやすく、面白い。
アマゾンの評価が高い理由がよく分かりました。
著者は、特に、ビジネスパーソンに読んでもらいたいということです。
その意図は、
この本のテーマでもある「日本企業の再生」
にあると思われます。
経営理論を思考の軸として身につけたビジネスパーソンが増えることで、
日本企業が再生する
というわけです。
ここまで読んでみて一番感動したのは、
多くのビジネス書で書かれている
人材の多様化と風通しがよい組織
が、
企業の成長に不可欠である
ということが、
エコロジーベース(生態系)の進化理論
から説明されていて、腑に落ちたことです。
詳細なテーマは、いずれ触れるとして、
この本の最大の魅力である「読みやすさ」
について、
前回の内容である入口・経路・出口から説明します。
大学の授業は、とてもつまらない
と思っている人が多いはず。
教授が自分の本を読んでいるだけ
とか、
難しすぎて意味が分からない
とか。
なぜ、こういうことが起きるかというと、
学者は、出身大学・師弟関係(研究室)・論文数・他の教授の評価によって、その評価が決まる
からです。
教えるのがうまい
という要素は、あまり学者の評価につながっていない。
学生による授業評価アンケートが生まれてはいるものの、
教授を縛るものではない。
表現は、
入口 知覚
経路 記憶
表現
出口 叙述
という課程を経ています。
経路の中に、記憶・表現という二つが含まれています。
三分類に収まらない場合は、このように、内容に応じてまとめるとよいです。
入口 何かを見て、気がつく(知覚)。
経路 その内容を記憶する(記憶)。
どのように表現するかを考える(表現)。
出口 伝達する(叙述)。
刑事裁判では、
証人の証言において、この過程に誤りがないか
をチェックします。
このチェックの機会(反対尋問の機会)が与えられない証拠は、
伝聞証拠
といって、
原則として証拠能力が認められない
ことになります。
知覚 見間違いでは? あなたの視力は? 当時の状況は明るかったですか?
記憶 記憶力は? かなり時間が経っているのでは?
表現 見たことと異なる表現(嘘)では? お金をもらっていますね?
叙述 言い間違いでは?
入口 経路(思考) 出口
知覚 記憶 表現 叙述
A A A A ・・・Aを見て、Aと記憶し、Aと表現しようと思い、Aと証言(正しい証言)
A B B B ・・・Aを見て、間違ってBと記憶し、Bと表現しようと思い、Bと証言(記憶間違い)
A A B B ・・・Aを見て、Aと記憶したが、Bと表現しようと思い、Bと証言(嘘の証言)
A A A B ・・・Aを見て、Aと記憶し、Aと表現しようと思ったが、言い間違えてBと証言(単なる言い間違い)
この表現過程に従い、表現のスキルをまとめることができます。
入口 インプット 知覚 観察力・洞察力・読解力
経路 思考 記憶 記憶力
表現 思考力・構成力
出口 アウトプット 叙述 文章力・表現力
これを学者の例に当てはめて考察してみます。
学者として、論文が評価される場合、
観察力、洞察力、思考力(まとめる力)などで、優れている
ことが多い。
論文の文章力は、そこそこでも、
内容が斬新であったり
うまくまとめられていたり
すれば、
評価される
ことになります。
学生に教えるスキルは、
わかりやすく伝える
興味を持ってもらえるように工夫する
というように、
表現力が問われる
ことになります。
そのため、
地位と名誉のある学者でも、表現力がいまいちだと
授業はつまらない
ということになります。
地位と名誉がすでにあれば、
学生のために、教え方を工夫しよう
というモチベーションは生まれない。
そもそも、
学者は研究が重要である
という思考であったりすると、そんな発想すらない。
学生が、資格試験予備校に流れたのは、
合格に直結することが学べる
ということだけでなく、
授業がわかりやすい
ということも大きな理由です。
「世界標準の経営理論」は、
世界の経営理論をビジネスパーソンの「思考の軸」になる
ように、
まとめていく
というものなので、
著者の知覚
は、さほど多く記載されていません。
優れているのは、
どのように表現しようかという構成力(表現)
と
読みやすい文章(叙述)
です。
このような読みやすい本があるのと反対に、
本を読んでいて、頭に入ってこないことがあります。
その場合には、
入口・経路・出口
で、原因を探るとよいと思います。
著者の能力の不足。
著者の出口(文章力)が足りないため、読みにくい。
自分の能力の不足。
自分の入口(読解力)が足りないため、理解が難しい。
これら両方ということもあります。
大学の授業がつまらないのも、
実は、両方ということが多い
と思います。
大学は、中学・高校と異なり、高度な内容を教えるため、
予習は不可欠ですが、該当箇所のテキストを読まずに出席する学生も多い。
そのため、
自分の入口(読解力)が足りない。
加えて、
教える方も、親切丁寧な表現ではない。
両方の理由から、
講義がつまらないもの
となり、
大学の存在価値が減っている。
ビジネススクールの場合、
発言することを余儀なくされるため、予習していく
ことになるわけですが、
大学は大人数なので、予習しないと恥をかくという危機感はない。
これを防ぐには、
サンデル教授の授業のようにあてまくる
という講義スタイルがよいわけですが、
ソクラテスメソッドの授業は、高度な構成力・表現力が求められる
ので、
教授の負担(スキルの問題)が大きくなる。
そのため、
日本ではあまり行われてはいない
というわけです。
この入口・経路・出口によるそれぞれのスキルのまとめは、
上司から、話が分かりにくいと言われた場合
に、役に立つと思います。
入口 インプット 知覚 観察力・洞察力・読解力
経路 思考 記憶 記憶力
表現 思考力・構成力
出口 アウトプット 叙述 文章力・表現力
なぜ、自分の話が分かりにくいのかを、
入口・経路・出口で分析する
わけです。
その上で、その能力について書かれた本を買って、よく読んで理解します。
理解したら、本で学んだことを、繰り返し練習します。練習あるのみ。
上司に、話が分かりにくいと言われて、
「わかりやすく話す方法」という本を買ったとしても、
話の構成に問題があるのであれば、改善は期待できません。
三段論法や結論からまとめるなど、
「文章の書き方」などの構成力についての本
が必要だからです。
滑舌が悪いのであれば、表現力を高めるために、
「話し方」の本
が必要となります。
発声練習や「ういろう売り」でトレーニングしたりする。
自分の苦手なところを見つけ(入口)、
本を買って読んで、理解し(経路)、
繰り返し練習する(出口)。
弱点克服にも、
入口・経路・出口の型
は役立ちます。
今回のブログの記事も、
入口 導入
経路 入口・経路・出口と表現過程の説明
出口 まとめ
で構成しています。
このように、入口・経路・出口の型は色々なところで、使えるのでおすすめです。