この著者の本は、全体的におすすめ。
この本は、サブスクなど新たな収益モデルを中心に、
なぜ、日本の企業は品質の高い製品を作れるのに、世界的な地位を失っているのか
を論じています。
結論としては、
アップル、アマゾンなどネット企業が、
物を売るということのみならず、様々な方法で収益を上げている
のに対し、
日本企業は、その点への取組みが十分ではなかった
ということ。
この本の30の価値獲得での事業利益の生み方の表は、秀逸。
①プロダクト販売 トヨタ、ユニクロ
②サービス業の物販(サービス業が物販を行う) ANA
③プロダクトミックス(利益率の異なるプロダクトを組み合わせる) 流通業、リゾート業
④非メインプロダクト(併売するプロダクトの利益率を高める) 飲食店
⑤マルチコンポーネント(中身が同じプロダクトだが、状況により利益率を変える) コカ・コーラ(缶、店、スタジアム、映画館)
⑥事前付帯(保険・ファイナンス) AppleCare
⑦事後付帯(メンテナンス) ヤナセ
⑧サービス化(コンサル化) IBM
⑨非メインターゲット 子ども映画
⑩オークション Googleアドワーズ
⑪ダイナミックプライシング テーマパーク
⑫定額制サブスクリプション ソニー、セールスフォース
⑬前金制サブスクリプション 新聞、雑誌
⑭従量制サブスクリプション デアゴスティーニ、AWS
⑮リピーター ディズニーランド
⑯ロングテール アマゾン
⑰リース オリックス
⑱レーザープレイド(本体は利益率を低く設定し、時間をかけて利益を生む) 任天堂、キャノン
⑲メンバーシップ(会費) コストコ
⑳フリーミアム ガンホー
㉑バイプロダクト(副産物) テスラ
㉒コンテンツ(IP) ルーカスフィルム
㉓フィービジネス 楽天、マーケットプレイス
㉔プライオリティ(優先的に利用できる権利) 富士急ハイランド
㉕三者間市場(広告主からの広告料) リクルート
㉖マッチメイキング メルカリ
㉗アンバサダー(紹介者の料金を大幅減免して集客と顧客育成で利益を作る) MS Office バリスタ
㉘スノッププレミアム(同じプロダクトに高く支払う人を設定し利益を回収) アメックス・ブラック
㉙フランチャイズ セブン・イレブン
㉚データアクセス 紀伊國屋書店
ここまで緻密にまとめているのは、あまり見かけない。
日本企業は、
よい商品を作っていれば売れる
という考えにより、
世界で起こっているデジタル化という変化に積極的ではありませんでした。
世界企業は、
デジタル化はビジネスチャンスだ
とばかり、積極的な設備投資を行い、顧客価値を高めると共に、経費の削減を実現しました。
インターネット
データ化とその活用
動画
自動化
スマホ
アプリ
情報の発信がほぼ無料で行える
顧客とのつながりを強固なものとできる
ニッチ化
アップルやアマゾンは、顧客のデータを活用し、
顧客の利便性を高めている
というのが、強み。
アマゾンの利便性は、
速く届く、安く買える、豊富な品揃え。
データを活用したおすすめ、口コミ、商品の情報量。
アマゾンプライムの翌日配達、送料無料。
アップルの利便性は、
クールさ。
アップルストア、iTunes、iCloud、ラインナップ。
写真、動画、プレゼンなどクールに楽しめる。
スマホのブレイクのきっかけがiPhoneであったことは明らか。
日本の企業は、iモードで、
携帯電話でデータ通信を行う
ということに対し、
世界に先駆けていたのにもったいない。
ちなみに、iモードは新規受付を2019年9月30日で終了していて、
2026年3月31日のFOMA停波と共にサービスを終了するとのこと。
スマホでインターネットにアクセスできる以上、もはやいらない。
多くの企業のサブスクが失敗したのは、
収益モデルが上手く設定できていなかったため。
スーツのサブスクが例としてあげられていました。
企業として、
どうやって稼ぐか
について、
きちんと考えていない
と、損失ばかり出てしまう。
反対に、稼ぐことばかり考えると、
利用者を拘束するリースのようなサブスクになってしまい、
うまみがないので、加入者が増えない。
牛角の月1万1000円で
通常3480円の牛角コース(90分食べ放題)を1カ月間利用できるサービス
は、予約が取れない状態となり、終了。
うまみがありすぎても、リソースが足りないと失敗するという例。
採算性、リソース、顧客の利便性など、サブスクによる影響をきちんとテストする
ことが重要だが、なかなか対応できないのが難しい。
今後は、サブスクも含め、
企業には、こういった収益多様化を検討することが求められる
ということです。
ビジネスモデルを考える際に、役に立つ本。