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『あさが来た』11週その2.名探偵のご活躍のあとは、昔話でもしようか。

2015-12-12 21:03:46 | 朝ドラの感想
『あさが来た』11週、「九転び十起き」の長文ネタバレ感想まとめ、その2。





いろいろすごいとは思うんですが、一番すごいと思うのは「これ15分の朝ドラ」ってとこなんですよね。


【前半はこちら】
『あさが来た』11週その1.さっぱりぽん!生まれたぽん!




関連リンク

『あさが来た』10週その2.姉妹の最後の夜、はつの問いかけ、新次郎覚醒!

『あさが来た』10週その1.惣兵衛の和歌山プレゼン、五代さんの脳内祝言、NHKの本気お披露目会。

『あさが来た』9週その2.ペンギンのように胸を張って光を浴びて。

『あさが来た』9週その1.五代さんの憂鬱と菊さんの優しさ。

『まれ』、『あまちゃん』他、朝ドラ関係の記事はこちら。
朝ドラ感想記事のまとめ。



■現実に引き戻す


木曜日。あさの出産が無事に終わり、めでたい加野屋から所変わって九州、加野炭鉱。
なにやら炭坑から出てきた男衆を怪しむ治郎作親分は炭坑の中へ…

そして…

 

 

あ……。

効果音とBGM、あと山崎さんの表情。
それだけで現実(?)に引き戻すから、はつの蔵とじこめ回思い出した。

予告で出ていた爆発シーンとカズさんの涙。
いつか来るとわかっていつつ、忘れかけたタイミング(あさ出産の木曜のラスト1分)に持ってくるんだもんな。


あさの出産、めでたい日、笑いっぱなしで終わると思っていたら、予告の炭坑爆発シーン。
第3週とおんなじだ。
その残酷な展開が来ることはわかってて、でも少し忘れたタイミングで考える間もなくねじこんでくる。
これがもうね、うまい、としか言えないわ(褒めてます




■制作の配慮かな


亀助さんと雁助さん文通アバンに笑ってたら…

爆発音、カズさんと子供たちの泣き叫ぶ声。
いきなりショッキングなシーンから入らない製作の配慮なんだろう。


とはいえ数日前にあさを送り出す幸せそうな家族が描かれたばかりなだけに、胸に来るものがあるなあ。


「こらどげした?」
「それが…親分が穴の中におったと!」


サトシが加野屋と何らかの因縁があって(あの幼馴染)、
何らかの画策していたことは、これまでの展開で明らかなんだけど。


でもこの反応。
本当にサトシなんだろうか。





■ややこを抱いてする話じゃない


 

煙に覆われて真っ暗な炭坑の朝。
一転して、朝日を満遍なく浴びてる加野屋の朝が対照的。

けれども障子に映る「影」がどこか象徴的。

 
「旦那様にはお見通しだすなあ」
「ややこ抱いてする話やあれへん」


いつか銀行を作りたいと話すあさ。
もうずっと知っていたよ、と新次郎。

結婚してから色々とあったけれども、信頼しあってるふたりがとても素敵。

商いの話になるとつい暴走してしまうあさの口をつまんで、ちょっと待て、と。
暴走あさでも新次郎ブレーキが効いてるから気持ちいいなあ。



千代の抱っこを新次郎に渡すのが印象的。
きっと柔軟に子育てしてくんだろうな。




■何も分からんとたい。


そんな幸せな2人に届いた炭鉱事故の一報は、亀助の指令で大阪まで夜通し馬を走らせた福太郎でした。

 
「俺…俺、亀助さんに頼まれて姉御に早よ知らせないかん思ち…」

幸せそうな家族と思ったらまた一気に現実へ。
炭坑で泣き叫ぶカズさんと子供たちと、真逆の場所にいるあさたち。
タイムラグをうまいこと活かしてるなぁと。

何があったの?と聞かれても
「何も分からんとたい」

大きな音がした、煙が出てる、犠牲者がいる、早く知らせなきゃ、どうしたらいいのかわからない。
何か大きな災害や事故のときの心情ってこれなんだよね……


それにしても福太郎の中の人(元グレチキの北原さん)、うまいなあ。



■あさ、ちょっと待って。




事故を知り、九州に向かう準備をするあさに対して新次郎が
「何してますのや?」「そやけど千代は?」「アホか!」
と一喝。

落ち着いた口調で続けます。
「乳幼児に長旅は危険」

大股で暴走するあさの背中に『ちょっと落ち着け』と。



千代の「お母さん」をできるのは新次郎やよのさん、女中たち、みんながいる。
でも炭坑や坑夫たちの「姉御」になれるのは、あさしかいない。


『ちょっと落ち着け、頼れるものは頼っていい』と伝える新次郎、頼もしいなあ。


うめとふゆ、信頼できる女中ふたりに幼い娘のことを託して大股で歩いていくあさ。
ここから先は「お母さん」ではなく「姉御、炭坑経営者」という心持ちなんだろうか。


「まさか一人で行きはる気ぃだすか?」

いくらあさとはいえ、
女性が「今からひとりでもいいから九州にいく!」なんてことが通用する時代(慣習的にも交通手段的にも)ではない。
それをきちんと描いてくれるからこの脚本のここがいい。




■お馬にのって五代くん




でもどうしよう、ってタイミングで

五 代 く ん 登 場 。

普段みたいに笑えはしないけど、緊張しきってた中に少し息がつける一瞬。
えっ、まさか盗聴じゃないよね?(今日くらいそんなこと言わないの!

 



「お兄ちゃんよろしいのか?炭坑王呼ばれるお方とお姉さん二人きりにして。自分は子守なんかして…」
「何言うてますのや。親が自分のややこの世話して何が悪いんだす?」


子守なんか、と榮三郎。
今にしたら「てめえごら」になるんだろうけど、この時代だと榮三郎の考えのほうが自然だわな。

新次郎もまた時代の先駆者なのかな。
五代友厚があさや忠興らに未来を示し、そのあさが加野屋に働きかけて、新次郎も別の形で影響されて。



いつのまに新次郎がこんなに頼もしくなってんのかとか。
「四男坊じゃない」と気にしていたあさが大股で走るのとか。

千代が生まれたことは勿論、ここまではつ惣兵衛の姿を見てきたことも大きいんだと思う。
眉山一家はきちんといる。



■カズさんの涙



白く綺麗なあさの着物。
シワのついた宮部さんの着物。
汚れた裸でバケツリレーの坑夫。立ち上る煙。


衣装だけでもそれぞれの立ち位置というか、事故が起きてからの流れがなんとなくわかるから、衣装さんも大道具さんもGJ。


「若奥さん!よう来てくれはりました」

あさの到着に安堵の表情の亀助さん。
さっき「申し訳ありません」と第一声に謝った宮部さんとは対照的な反応で、ほんの些細なことでも人を丁寧に描いてる作品だなあって改めて実感。


「あん人は山の男ですたい。いつそげん事になってんおかしゅうないち、そげな覚悟で生きとりましたけん。そやけど…なしね…」

力強かったカズさん。
それでも泣き叫ばないのは、やはりもう時間的に絶望してるからなんだろうか。

 
「これからどげするつもりなんか?」
「大体加野屋がようけ掘ったものに報償与えるなんち決まり作ったけん、みんな欲張って競い合うように掘る様になったったい!」


石を掘る事ができない、働くところもなくなる、生活に困る。
やっぱり炭坑爆破で一番困るのは坑夫たち。

サトシの言う事も判らなくもない。
資本主義、お金の考えを持ち込んではいけない自然の世界だったか。


サトシは何らかの計画を立ててはいたんだろうけど、昨日の実行犯はまた別……かなあ?


「奥さんが山に来なって活気が出たっち一番喜んどったのはあん人やったとやけ」

カズさんの目尻の今にも落ちそうで落ちない涙がな……
語尾が過去形なのがな……

カズさん……

親分……



■名探偵・五代くん、開始



「これはただの落盤事故やない」
「これは火薬です」


あさがサトシに謝りシリアスな場面で五代くん再登場。

いつもなら「ええっそこ来ちゃう?」って五代くんが今日はありがたい。


■ニュース速報です。




【速報】親分生還
【速報】親分生還
【速報】親分生還





■名探偵・五代くん、終了



「You, one in a million.」

…( ゜д゜)??←ネイティブ過ぎて聞き取れなかった

日本語で言えばいいのに、英語を織り交ぜる五代くん。
あさちゃん聞き取れないのわかってるから、わざと英語を織り交ぜる五代くん。
「まったくあなたという人は…」となんだか意味深な言葉を、英語で言っちゃう五代くん。


ああ五代くん、五代くん。


「これは一つ貸しですわ。そのうち大阪で返してもらいます」
「ほなグッバイ」


『名探偵五代くん』、問題編終わった。




■痛み



「痛かったやろなあ。一人でよう我慢しましたなあ」

あさの乳房の痛みは千代の痛み。
それに応えられなかったあさの心の痛み。


よのさんがあさを責めることなくその辛さを労う姿にジーンときた。



■九転び十起き




「いいや『九転び十起き』思て負けしまへんで」
「やっぱりこないなお母ちゃんあかしまへんやろか」
「いいや、それでこそあさだす」


幼いあさに『ようよう考えて進んだ道には…』と声をかけた新次郎とあの頃のあさを思い出した。



■今、雁助さんを。



「あの山を守れるのは、立ち直せるのはあんただけだす」

幕末から明治。
加野屋の危機を乗り切ったのは、あさの能力だけではなかった。


今あさと加野炭坑を支えているのは新次郎や亀助だけじゃない。
正吉も、雁助さんもきっとこの先榮三郎も。

今、このときは、雁助さん。

大番頭としてのしっかりもの、現実を見据えてあさに意見もできる。
新次郎のことも、例の幼馴染のこともよく知っている。
そして何より、旦那様を信頼し、旦那様から信頼されている。

それを見極めて、雁助を抜擢した大旦那様。
大旦那さんが一番の名探偵


「私の…最後の頼みや」
「もしあんたが私の死に目にあわれへんかったとしても…それでも私はあんたに行ってほしいのや」


それは事実上、正吉さんから雁助さんに託された遺言。
直前雁助さんが「いくら大旦さんの言葉でもこの店を離れることは出来ない」と言った、そのうえでの正吉さんのこの言葉。

徳川の武家社会(商家の話なんだけど)を色濃く残すような主従関係。
この『あさが来た』が幕末期からスタートして、明治維新をむかえ、言葉も髪型もビジネスも変わってく中で、それでも変わらないもの。
それが人と人との絆なのかもしれません。
それをわかりやすく現した雁助さんと正吉さんの関係。





■うめは泣かない。




「うめさん、あんたに頼みがありますんや」

言葉少なく、ただ大旦那様に何かあったら連絡してほしい、と話して。

「そうや、頼んだで」

雁助さんの表情に決意があると共に、どこか悲壮感のようなものを感じてしまう。
雁助さんがたとえうめさんから手紙をもらったとしても、しっかりもののうめさんがどんなに迅速に対応しても。
もしかしたら雁助さんは間に合わないかもしれない。

でも、それを、知りたい。
榮三郎でもなく新次郎でもなく、うめの言葉で知りたい。


そんな雁助さんの想いを受け取ったうめさんは涙を見せない。
うめさんは雁助さんの思いがわかってしまうから。
大番頭として加野屋に仕える雁助さん。
女中として今井家、そしてあさ、加野屋に使えるうめさん。
ふたりは仕事仲間であり同じ志を持っている。

あさやはつがそうであるように、2人も「家を守っている」。

だからうめさんは泣かない。
今、「守っていきたい家と離れなければならない」辛い気持ちと闘ってるのは雁助さんなんだって知ってる。


ってのは妄想のしすぎなのかもしれないけれど、雁助とうめの関係の描き方が、それほど多くもなく少なくもなく。
あれこれ考える余地があって、そんな演出がもうにくいなこのやろう!と(褒めてる



■お早うお帰りやす。



「雁助」
「よう分かっとります。どうぞ任せとくんなはれ」


てっきり雁助さんが頼りになるからだと思ってたら。
このときの新次郎の目線でやっと気がついた。


そうだ、雁助さんも幼馴染のこと知ってるんだ。



「お早うお帰りやす」

いってらっしゃい、早く帰ってきてね、無事に帰ってきてね。待ってるからね。
万歳三唱は朝ドラでわりとよく見るけど、この見送り方も暖かいものなんだなって。

だからこそ余計にうめの表情が切ない。



■昔話をしよう。



何週ぶりだろう、番頭コンビ。

 
「わてや、あのころ手代だった雁助や」
「さあ、昔話でもしまひょか」


正吉さんの言葉、うめさんに頼んだこと。
そして、炭坑に到着してサトシへのこのひと言。
視聴者も見たことのなかった怯えるサトシの様子。

雁助さんの登場は第3週。
あさが加野屋に嫁いだとき、あの国芳の猫のところで注目をあびたのだけれど。
そこから大政奉還、大阪経済の危機、新次郎の秘密、炭坑事業のはじまり、襲名披露、うめとの交流……

様々な局面で雁助さんを育て上げて、今ここに輝かせる。

毎回毎回思うのですが、脚本のキャラクターのプロットを見てみたいと。



■仁先生いぃぃぃぃぃぃ。




弥七ぃぃ!!前橋から仁先生連れてこいよぉぉぉ!!!
(だから違うって)

正吉さん、亡くなるシーンは近々あるのだろうけど、きっと「ごちそうさん」の正蔵さんを思い出すんだろうな。
正蔵みたくどうか暖かい最期を迎えてほしい。
(正蔵さんの看取りについて詳しくはここ
『天皇の料理番』に『ごちそうさん』を思い出す。



■亀助さんもさっぱりぽん


さて、第12週「大阪一のおとうさま」は…

・亀助さん、大阪へ帰る
・新次郎の髪型がよりイケメンになってる
・あさと榮三郎…?
・新次郎とサトシ……(もうひとり誰?)
・正吉さん。



なんだろう。
亀助さんの

散切り頭の


ジワジワ来る感じ。


シリアスじゃ終わらせないBKの志、たーんと受け止めたよ!




■男たちの行間。









雁助株、高騰。






ほな、グッバイ。






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