妄想ジャンキー。202x

人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

高低差のある街

2014-01-01 00:00:00 | 長いひとりごと

西成に最初に行ったのは2年前の夏です。

18きっぷでの九州旅行、帰り道。
真夏に夜行バス&夜行列車と乗り継いでいました。
着替えるくらいはしていたけれど、汗臭さが体にしみついていて。
お風呂に入りたいなあと思い、ムーンライト九州の到着した大阪駅で銭湯を探しました。
携帯電話の充電も貴重なので、公衆電話のタウンページをフル活用。
まだ早朝とはいえ炎天下の電話ボックスは、ムッとした熱気が漂っていました。
大阪駅周辺にはないが、今宮のほうにいけばあるらしい。

大阪、西成区。

土地勘が全くないので何も知りませんでした。
新今宮の駅を降りて、電信柱を頼りに銭湯の住所を探す。
最初に気がついたのは鼻でした。
なんだろう、この街の臭い。
ああ、月曜日の臭いだ。
生ゴミ収集の日。
でも私がにおってるのかもしれない。
とにかく早くお風呂入りたいなあと思い、そのまま高架沿いの道を歩く。
ブルーシートに広げられた日用品。
朝早くから街に溢れてる人。
バンに乗り込むおじさんたち。
「姉ちゃん、朝早くから何しとる」
「ええカメラ持っとんな」
なんか違う。
それまで『散歩』していた門司の町や宮崎の町とは雰囲気が違う。
カメラを向けるのもはばかられ、目的の銭湯を探しました。
住所には、簡易宿泊施設の文字。
・・・なんか想像と違うなあ・・・
ていうか大丈夫かな、ここ。
立ち止まっていたら、おじさんから急に肩を組まれる。
思わずワッと声をあげてしまい、何故か私が謝る。
足早にそこを去り、違う路地へ。
犬?
わ、こっち向かってくる!


西成のことを知ったのは、数日後に埼玉の自宅に帰ってからです。
そのとき大阪在住のお母さんの知り合いがちょうど来ていて、旅の話をしました。
「大阪で銭湯探したんだけどさ、新今宮ってところ」
「え?西成で?」
『あいりん地区』といわれて、ピンときました。
前に廃墟にはまって調べたときに、日本のスラム街についての記事を読んだことがありました。
「あー・・・あれがそうだったんだ・・・」

一人旅3年目ということで若干の慣れも感じてましたが、あのとき初めて怖いと感じました。
なんで1人で来ちゃったんだろう!
こんなところ!
すぐに地下鉄の駅に飛び込み、大阪駅へ。
それからまたすぐ新快速に飛び乗って京都駅へ向かいました。

少しでも早く遠くへ離れたかった。
恐怖ももちろんあったけれど、こみあげる戸惑いが波のように押し寄せていた。
美しい景色、街並み、夜景、大都会の足元にある光景。
それは初めて見た景色でした。

日本にもスラム街がある。
スラムといえば語弊があるから、ドヤ街っていうほうが通称に近いかもしれない。
2年前、私が訪れた西成のあいりん地区は、日本最大のドヤ街です。
横浜の寿町にも少し経ってから行きましたが、やはりあいりん地区のほうがでかかった。
街の雰囲気があまりに強烈でした。
スラム街のようなものはウルムチで歩いたことがあったけど、それとは全然種類が違う。
これは、リアルだ。




その体験以来、日本のスラムとそこで暮らす人々に関心を持ち始めました。
大宮駅でも、ホームレスのおじさんと仲良くなりました。
って言っても、何度か会って一緒に煙草吸ったり話したりくらい。
「じゃあね」と言っていつも別れていたけれど。
冬が来て、とんと姿をみなくなりました。
いつもの場所で煙草吸っていない。
どこ行ったんだろう。
家帰ったのかな。
雪が降るたびに頭をよぎります。

絵は妙にリアルで。
それでもフワフワしていて。
別世界なのか、そうじゃないのか。
時々わからなくなる。
でも、こういう事件が確かに起きていて。
こういう人は確かに居て。
今はこういう社会で。

「格差社会」の単語を聞くたびに、ビクンとします。
ああ、本当に、格差だ。
これは、すごい、高低差だ。
あの夏に西成でみた風景。
人の群がるドヤ街の向こう、空を狭くしている高層ビル。

「世の中の7割は冷たくても、3割は優しい人なんだ」

秋に聞いた佐藤さんの言葉が染み付いて離れません。

エゴイズムの端っこで、そんなことを考える。



※現在のあいりん地区がドヤ街かっていうと、そうでもないみたいです。私が見た光景はもう広がっていない。行政のナントカで日雇い労働者は減少傾向にあり、簡易宿泊所は外国人バックパッカーなど一般向けになっているらしいです。
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